1話
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1音1音、鳴らす度に君は嬉しそうな顔をする
私の痛みを全て吹き飛ばすような
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暖かい日差しが花や木々を照らす そんな季節になった
2年目の制服に袖を通す
シワがないことを確認して家を出ようとする
「亜優、今日もお迎えありますからね」
「え、でも…」
「なにか?」
「…はい 分かりました」
高校2年 葉桜 亜優
私はあと何年もこの生活を いや今までも、これからもこの生活をする
生まれた環境は運悪く少し有名な一家
やりたいこともずっと縛られている
家族に本当の気持ちを言えないまま16年目を迎えてしまった
「あーゆ!おはよ!」
「すずおはよう」
道宮すずか
同じ部活に所属している
幼なじみでお互いよく知る親友でもある
「亜優と同じクラスだといいなぁ 数学とか分かんないし」
「違うクラスでも勉強は教えにいくよ」
絶え間ない話をしてる時が1番私でいられる
もちろんすずかは私の事情を知っている
だからこそ私を少しでも救ってくれる
本人はそんな気ないだろうけど
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「えー、なんで亜優と違うクラスなのぉ!」
「す、すず 落ち着いて」
クラス替えの結果はこの通り
見事にクラスがバラバラになってしまった
「お昼絶対一緒だからね!部室で食べようね!」
「うん、分かってるよ」
すずかは私とは違って友達多い
その子たちで食べたらいいのにと何度か思ったことはある
気を使ってくれるのは嬉しいけど私だって誰かとお昼ご飯食べられる
…多分
自分のクラスに着くと元々同じクラスだった人たちで集まっている所が多くある
とりあえず席に着いて周りを見渡す
朝から騒いでいる男子やそれを見て笑っている女子
1人で本を読んでいる人もいれば初対面の人に話しかけている人もいる
「亜優ちゃん!同じクラスだったんだ!良かったぁ」
「雪ちゃんもこのクラスだったんだ」
野田 雪
同じ部活に所属している
けどすずかがいるから入ったみたいな感じではある
席順的に私の前の席で身体をこちらに向けて話を続ける
「もう友達できた?」
「できてたら苦労してないよ というか自分からできる気が…」
「あっ、なんかごめん」
家の都合上、友達付き合いが中々上手くいかず友達と言えるのは部活で一緒の子達だけ
早くこんな生活終わらないかな
考えていたら私の机が大きく揺れた
急な出来事でなにが起こったか分かってない
「ってぇ… ちょっと手加減しろよ!」
どうやら男子たちが遊んでいたところ私に机にぶつかったようだった
「ちょっと!ちゃんと謝りなさいよ!」
「雪ちゃん大丈夫だから」
ぶつかったのに謝りもしなかった男子に怒る雪ちゃん
その人は少し面倒くさそうにこちらを向き
「はいはい、すいませんで…」
その人は私の顔を見て急に止まってしまった
「すいません?」
「っ、すいませんでした!」
「まったくもう…亜優ちゃん大丈夫?」
「う、うん 大丈夫」
びっくりした
目と目が合ってあんな顔をされたのは初めてな気がする
私の自意識過剰かもしれないけれど
「はい、席着いてー」
賑やかだった教室が徐々に静まって先生が連絡事項を読み上げていく
今日の放課後は部活動禁止とか
新入生に良い先輩演じとけとか
「そして明日は新入生歓迎会あるからね 部活動入ってる人は頑張って」
あと体育館に各自移動という言葉を残して先生は去っていった
先生が来る前の騒がしさに教室は戻っていく
雪ちゃんに一緒に行こうと誘われ席を立ち上がると同時に周りを見渡す
「ん?どうかした?」
「え、いや なんでもない!行こ」
さっきぶつかってきた人を探していた
でも教室にいなかった
もう移動してしまったか、それとも別のクラスか
名前ぐらい知りたいなと思う自分がいたりいなかったり
どうしよう
少し見ただけなのに頭の中があの人でいっぱいだ
……To be continued
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