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ピルボックス病院に向かうとそこには見知ったあの男がいた。私をトイレで治療した神崎治だ。
正直私の方がこの男よりも医者として優秀だと自負している。だが、もしかしたら新種のウイルスやこの街でいう歪みとやらに詳しいかもしれない。
どちらにせよ背に腹はかえられない。
早く音鳴さんを治療しなくてはならないのだから。
「お久しぶりです」
「あっお前は!ぐち逸じゃないか」
「その節はお世話になりました。聞きたいことがあるんですが」
「なんだ?」
そうして音鳴さんの症状を彼に全て話した。
途中から神崎さんの表情が強ばっていたがどうしたのだろうか?体調が悪いのだろうか?だとすれば彼は医者失格だ
「それでなにかご存知でしょうか」
「えっと…だな…ぐち逸は恋って知ってるか?」
「馬鹿にしてますか?男女が互いに好意を向けあうことでしょう」
「すーっ…ぐち逸今から言うことは俺の仮説だ。それを踏まえた上で聞いてくれ」
「勿体ぶらないでさっさと言ってくれませんか?患者が待っているので」
「はぁっ〜…恐らく音鳴ミックスはお前に恋をしている!」
「…あなたに聞いた私が馬鹿でした。失礼します」
「あっ、おい!!」
時間を無駄にしてしまった。
有り得ない、私を好きになる人間がいるなんて。そうだ、有り得…
こんなことを考えるのは辞めよう。
時間の無駄だ。
早く帰ろう。もしかしたら音鳴さんの症状が回復しているかもしれない。
彼らのアジトに着くと扉の前にレーダーさんが立っていた。
「おかえり。どこ行ってたの?」
「病院に…」
「あ、もしかして音鳴の病気について聞きに行った?」
なんで知っているんだ?
レーダーさんは私を見てニマニマと笑っている。そして、何故かロケットランチャーを手渡してきた。
「ミックスはね恋の病に蝕まれているわけ」
「それとこれに何の関係が…」
「ぐち逸、恋って戦争なんだよ。ミックスはぐち逸のことを諦めないよ。ぐち逸って負けず嫌いだよね〜なら先手をとるべきじゃない?」
この男の言いたいことはわかった。
どうやら私は覚悟を決めるしか無さそうだ。
アジトの中に入れば音鳴さんがいる。
「ぐっさん!!好きで…」
彼に向かってロケットランチャーを発射した。
音鳴さんの体が綺麗な放物線を描いて吹き飛んだ。
今日ばかりはこの狂気に満ちた街に感謝しかない。ロケットランチャーで吹き飛ばされても彼は死なないのだから。
「ぐっさん…!?俺っなにか」
「喋らないでください。傷に触ります」
除細動器を使い彼の心臓を動かす。
「では後5分は安静にしていてください」
「それとレーダーさんが教えてくれました。恋は戦争なんだそうです。この勝負1勝0敗ですね」
恋は戦争なのだ。
そして、私は負けず嫌いだ。
この男からの告白に答えるのは負けを意味する。私は恋愛はよく分からない。
だが、負けを認めることだけはしたくないのだ。
「臨むところや!絶対俺が勝ってぐっさんのこと落としたる!!!!」
正直、この男に好かれるのは気分がいい。
-空架ぐち逸の戦績-
1勝0敗