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「……やっぱり、似てるよな……」
山田ひざし――ヒーロー名プレゼント・マイクは、いつものテンションとは裏腹に、少し落ち着かない様子で電車の中に立っていた。
彼の視線の先には――
「……!」
ドSな女王様役で人気を博していた、あの女優そっくりの女性が座っていた。
「……まさか……いや、そんなわけねぇよな。」
ひざしは自分に言い聞かせながらも、心臓が早鐘を打つのを止められなかった。
「でも……そっくりだ……」
肩まで伸びた黒髪に、妖艶な雰囲気――
何よりも、あの挑発的な視線に見覚えがあった。
《1週間後――》
「あ、あの……!」
ひざしは意を決して、彼女――いや、**香山睡(ミッドナイト)**に声をかけた。
彼女は振り返ると、少し驚いた様子だった。
「……山田? どうしたの?」
「あ、いや……その……」
ひざしは視線を泳がせながら、言葉を選んでいた。
「えっと、その……失礼かもしんねぇんだけどさ……」
「?」
「あの……もしかして、前に……その、ちょっと破廉恥なビデオに……」
「……っ!!」
睡の顔が一瞬で真っ赤に染まった。
「ちょっ……な、何を……っ!?」
「いや、その、違ったらごめんなんだけど……どう見ても……その……!」
「……あんた……気づいてたの?」
睡は頬を赤く染めながら、小さな声で呟いた。
「マジで!? 本当に!?」
ひざしは驚愕のあまり声を上げそうになったが、慌てて口を押さえた。
「……えぇ、そうよ。」
睡は観念したように溜め息をついた。
「昔、少しだけ……そういうお仕事をしてたことがあってね。」
「……じゃあ……やっぱり……あの女王様は……」
「……私。」
睡は視線を逸らしながら、耳まで赤く染めていた。
「……でも、もうそういうのは……引退したわ。」
「そ、そうだったのか……」
ひざしは複雑な表情を浮かべた。
「もう、調教される系は……出ないから。」
「……でも、あんたがファンだったなんてね。」
睡は恥ずかしそうに目を逸らしながら、苦笑した。
「まさか、私の正体に気づいて声をかけてくるなんて、あんたくらいよ。」
「いや、そりゃあ……あんなにハマってたら、気づくって……!」
「……で?」
睡は少しだけいたずらっぽく微笑んだ。
「これから、どうするの?」
「……どうするって?」
「私の“過去”を知っちゃったんでしょう?」
「……えっと、その……」
ひざしは目を泳がせながらも、
「……今の睡ちゃんの方が……ずっと魅力的だよ。」
不意にそう呟いた。
「っ……バカね……」
睡は思わず目を逸らしたが、耳まで真っ赤に染まっていた。
「……じゃあ、今度の休み……少しだけ、付き合ってくれる?」
「……え?」
「たまには……昔の私じゃなくて、今の私も見てほしいの。」
ひざしの胸が、再び高鳴る。
「もちろんだぜ、ベイビー!」
いつもの軽口を返しながらも、その笑顔はいつも以上に輝いていた――。