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体温が火傷しそうなほど熱くて

体調を崩してしまったかのように辛い。


「はぁー……ッ、はぁー…ッ……!」


空き教室に駆け込み、急いで抑制剤を飲む。

飲んで数秒しか立たないが、少しだけ

身体がマシになった気がする。


鞄の中から黄色のチョーカーを取り出し

首につける。

少し首元が苦しくなったが

自分の身を守るためなら、それも我慢する。


「ふー…………行くか」


呼吸を整え、校庭で待っているであろう

オレの大好きな仲間の元へと

足を踏み出した。


オレは、オメガバース性のオメガ。

だが、オレは絶対に番を作りたくない。


番を作ったとて

オレの苦しみが救える訳じゃない。

ならば、作ってもオレだけが

損するだけだろう?


「司く〜んっ!!」


だから、信用できるのは

オレと同じオメガ。もしくはベータだけ。


「どわっ!!

えむ、急に飛びついてくるな!」


鳳えむ。性はベータ。

えむはオメガバース性にはとことん疎く

オメガの匂いがどれほど強くても感じない

正に、オレの欲しかった人材だ。


「司くん。少し遅かったけど、また何か

あったのかい?」


神代類。性はオレと同じくオメガ。

同種だからか分からないが、類はとても

こういうことに敏感で、オレに少しでも

異変を感じたら、こうして心配をしてくれる

少し変わった所もあるが、優しいのだ。


「あぁ。少しな、でももう大丈夫だ!

心配かけて悪かったな」


ワンダーランズ×ショウタイムは暖かいし

性での差別もないから、居心地もいい。


みんな大好きだし、ずっと一緒に居たいと

心の底から思えるメンバー……だが。


「え、やめてよ。またあんたに

ぶっ倒られても困るし、匂い強いから

休むなら休んでよ」

草薙寧々。寧々は唯一のアルファであり

オレが最も苦手意識を持つ人物だった。


「……寧々」


アルファは嫌いだ。

オレたちオメガのことも気にせず

匂いに惑わされて番になろうと

首を噛んでくる。自分勝手な存在。


こっちの気もしらず、本当に呆れる。


「寧々、そこまで言わなくても

いいんじゃないかい?」


「うるさい。あんたはオメガの中でも

匂いが薄いからいいけど、ずっと隣に

いられても困る。オメガなんて、面倒で

大っ嫌いだから」


言いたいことだけ言い残し

寧々はそのまま去っていった。


「……何、あいつ」


これだから嫌なんだ。

逆の性を嫌う理由は分かるが

あそこまで本性を剥き出しにして

語らなくてもいいじゃないか。と

心の中で文句を言っておく。


オレは、あいつみたいに子供じゃないから。


「ごめんね。僕、寧々の所行ってくるよ」

「はーい、行ってらっしゃい!」


類が寧々の後を追い

そのまま姿が見えなくなった。

えむは不安そうにオレを見つめるが

何も話しかけては来なかった。


多分、オレの表情が

あまりにも醜かったからだろう。


「…オレだって、アルファなんて

大嫌いだ」


とうとう抑えきれなくなった感情を

そのまま口に出し

今はここにいない寧々に文句を

言ってやった。







「はぁ〜…」


司の元を去り、わたしは校舎裏に来て

その場でしゃがみこんだ。


悪いとは思っている。でも

どうしても強がってしまうのだ。


「わたし、なんでいつもこうなんだろ…」


オメガが嫌いなのは事実。

けれど、わたしは司を嫌ってなんていない。

むしろ好きだ。恋愛的な意味で。


でも、今まで嫌いだったオメガを

好きになったという事実を認めたくなくて

つい強がった発言をしてしまう。


こんなんでは、司に好かれるどころか

どんどん嫌いになっていく一方だというのに


「寧々」


「……類」


幼馴染であり、司と同じ性を持つ類が

わたしの後を追ってきたのか

後ろからわたしの肩を叩いて

名前を呼んできた。


そんな優しい気遣い、今はほしくないのに。


「司くんのこと好きなのに

どうしてそんな思ってもないことを

吐くんだい?」


今の発言はグサッ。ときた


そんなの、わたしだって分かってる。

本当は素直にアタックしたいし

司に好きになってもらって

あわよくば番になってもらいたい。


でも、それは無理だと

分かっているから だろうか

それを思うと、より一層

本音が言えなくなる。


「……類には関係ないでしょ」


「でもっ、寧々…!!」


「うるさい、もう黙って!」


八つ当たりに、わざと類にぶつかり

わたしはその場から去った。


「……ほっといてよ」


どうせ、この恋は叶いやしない。

ならもう、限界まで嫌われてやろう。


涙で滲む視界を腕で拭い

わたしは今日も“悪役”を演じた。


きっとそれが、一番いい生き方で

司にとっても、これが一番いいと思うから。




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不器用寧々さん永遠に愛してる😄💥

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