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4.届けこの想い。
凛と潔が見つめあって何かを話すのを後ろにして冴の横を歩く。
今日潔が嬉しそうに準備をしていたのは久しぶりに初恋の人に会うからだと知った。
「…いいのか。お前は。」
「なんでそんなこと聞くんだよ。」
「別に、興味はない。けど…泣かれると無視するわけにもいかねぇだろ。 」
泣いてるつもりはなかった。
たださっきから心のどこかでモヤモヤする気持ちがあって空っぽになった気分だ。
「…ほんとに、全部お見通しかよ。」
たしかに泣いていた。
今潔が凛とどうなったかなんて分からない。
でも潔が幸せになってくれないと意味がない。
俺は潔の信頼できる友達。それ以上はない。
「泣くくらいなら初めっから連絡すんな」
怒っているのかと思いきや案外落ち着いた顔でしゃがみ込む俺の前にたった。
目線を合わせるように冴もしゃがむと頭をぐしゃぐしゃと撫でられる。
その余裕に腹が立ちながらも優しさについ甘えてしまいそうになる。
これが、この人が潔の初恋なんだ。
この人の…糸師冴の弟が潔の好きな人なんだ。
自分に足りない何かが分かった気がする。
絶対言葉にしてやんないけど。
「俺は、黒名蘭世だ…糸師じゃないッ…」
「何言ってんだ、当たり前だろ」
「……凛の真似をして好きになってもらうなんか嫌だ。俺を、俺を好きになってほしかったから…諦める為に凛を呼んだ。冴に頼んだ。」
頭に置かれていた手を冴は引っ込めると立ち上がる。
そしてまだ下を向く俺に手を差し伸べた。
「本気で忘れてぇなら見届けろ。俺はお前のことなんか好きじゃねぇって見せつけやれ。 」
冴は至って冷静だった。
その手を握ってしまう。冴を信じてしまう。
「…分かってるよ。」
このイルミネーションの向こう側で潔は真剣に思いを伝えてる。
俺にできることは一つしかないだろ。
頑張れ、潔。応援…応援。
自然と笑いが溢れる。
冴の手を両手で包むように握ると自分の額に当てる。
意外なことに抵抗しない冴が面白くて笑いが止まらない。
急に開放感に包まれる。
急に笑い出した俺を気味悪そうに頭を叩く冴。
冴もきっと潔が好きなんだと思う。
だってさっきから向こうを意地でも見ないように俺ばかりと目が合うから。
ほんと、不器用なやつだよね。
現在時計は午後0時を回った。
「……ッ凪…おい…おいって!…ッ」
目の前に倒れる凪を目の前にただ叫ぶ。