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▷ main:紫
▶ sab∶赤
▷ 若干軍パロ
紫さんの美しい秘密がバレてしまうお話。
初めて見た。
こんなに引き込まれるくらい美しく、その名に相応しい楽しそうな輝く笑顔の君。
「 まるで別人……。 」
窓から暖かく眩しい光が差し込む。
まだ起きたくないと主張している目を擦って、ゆっくりと起き上がる。まだ意識はぼんやりしている。
無理やり体を動かして、ベッドを降り、いつも着ているスーツに着替え、食堂に向かう。
「 お、おはようスマイル 」
「 おはよ、きりやん 」
キッチンでテキパキと料理を作っていくきりやん。基本の料理担当はきりやんだから、ほとんど食堂に一番乗りで来る。
「スマイルー、テーブルにできたの並べてくんね?」
「 おう 」
「 他にはなんかあるか? 」
「 あー…ない、かな。これで終わりだし 」
「 おけ 」
テーブルに並んだ料理はとても美味しそうだ。まぁ、幹部一だもんな。
「 おはよー 2人とも」
「 おはよ… 」
きんときとシャークんが来た。シャークんはまだ眠そうだ。
さて、残りは2人……。
「 …起こしに行くか 」
「 そうだね…w 」
苦笑いをするきんときとあの2人を起こしに行く。
俺はBroooockを、きんときはNakamuを。
「 おい、ぶるーく…起きろ 」
「 ん〜……… 」
コイツはほんとに起きない。声をかけても揺さぶっても起きない。
ならば……
「 はぁ……今日の飯、ぶるーくのだけ無しにしてもらおっk 「 すみません起きます!!!飯抜きはヤダ!!!!!! 」
ほら起きた。
「 おはよ〜ぅ 」
「 おはよ! 」
「 おはよー、2人とも 」
「 まったく…もう飯できてんぞ 」
「 それじゃ、手を合わせて 」
「 いただきます 」
「「「「「 いただきまーす 」」」」」
いつも通り、他愛のない話をしながらみんなで食べる。この軍マジで平和だな。
「 あ、そういえば今日2人って任務だよね? 」
「 うわ、そうじゃん 」
「 え〜やだぁぁ…… 」
「 俺らは街で買い物に行ってくるね 」
「 じゃあスマイルだけか 」
「 え、そうなの 」
「 お留守番よろしくねスマイル 」
「 あぁ… 」
どうやらBroooock / シャークんの2人は任務で、Nakamu / きんとき / きりやんは街へ買い物に行くらしい。
俺は1人で何をしようか…。
食べ終わり、俺以外はもう出かけてしまった。
暇だな……。
本でも読もうと思ったけど、たまには違うことをしてみたい、そう思った。誰もいないんだし、久しぶりにやってみるか…。
俺は部屋から出て、階段を上り、長い廊下を一番端の部屋まで歩き続ける。
扉を開いて俺が向かうものは、部屋の真ん中に置かれ、太陽の光に反射して輝く大きな黒いグランドピアノ。ピアノをやろうと思ったのはいつぶりだろうか。
近くに行くとその黒い胴体に自分の姿が映る。こんなにも綺麗なピアノがなぜ軍に置かれているのか…。
椅子に座り、蓋を開け、ペダルに足を乗せる。
深呼吸をし、指を鍵盤に添える。
指を下ろすと、記憶の底にあった懐かしい音がなる。その美しい音がこの部屋と心を包み込む。
自分が奏でる音色に夢中になる。
この音が、音色が、旋律が、感覚が、音楽の世界へ引きずり込んでいく。
この部屋や俺の脳に響き渡る音が全てを忘れさせてくれる。
嗚呼、今この瞬間がとても楽しい…。
次々に鳴る音が、最ッ高に楽しい……!!!!
「 あぁ〜、疲れた………。 」
体がとても重い。疲れきった足を引きずって道を歩いていく。今日の任務はいろいろ大変だったし、お腹は空いたし……。自然とため息が出る。
「 はぁ〜…… 」
「 おいおい、大丈夫かよ… 」
「 だいじょばないよぉ、早く帰ってお肉食べたぁ〜い…… 」
「 お前ほんと肉好きだな…w 」
シャークんと並んで、紫色と橙色のグラデーションのかかった空の下で弱まった太陽の光に照らされ歩く。
やっと基地に着いた……
そう思い歩み続けていると、シャークんが足を止めた。
「 、ん?どしたのシャークん 」
「 いや……なんか聞こえない、? 」
「 え?うっそぉーん 」
黙って耳を澄ましてみる。
確かに聞こえる、微かな音。聞き覚えのある綺麗な音。
これは……“ピアノ”だ。
「 ピアノの音、だね 」
「 だな…でも、誰が弾いてるんだ……? 」
音は微かでも、美しく綺麗だった。
一体どこの誰が弾いているのかが気になって仕方なかった。
「 ね、早く行こ!僕気になってきちゃった! 」
「 分かったから、そんなに急ぐなよ 」
だんだん音が大きくなっていく。近づいている。
この基地の三階の一番端の部屋は、何故か音楽室だった。しかもめっちゃ広い。
僕やシャークんはピアノを弾きに、Nakamuはギターを弾きに、きんさんは歌を歌いに来たり、なんだかんだよく行っていた部屋だ。
「 あの3人帰って来てたのかな? 」
「 だとしても、俺ら以外にピアノ弾ける奴いたか…? 」
たしかにその通りだなぁ…。きりやんピアノ弾けたっけ?ズッ友の2人ならワンチャンできそうだけど…。
そう考えているうちに三階まで来た。
僕らは気配を消して近づく……。
「 お二人さーん?なにしてんの? 」
「 うわぁッッ?! 」
「 びっくりさせんなよ… 」
「 ごめんてww 」
「 んで、コソコソ移動して何やってたの? 」
「 あぁ…耳を澄ませば分かる 」
「 え?…… 」
3人も耳を澄ませる。こうして話している間にも流れ続けている演奏。
「 ピアノ、だな… 」
「 すごいうまいね…! 」
「 だよね!それで僕ら、誰か弾いてるのか気になっちゃって音楽室まで向かってたんだけど… 」
「 ここに3人がいる時点でどこの誰かはもう分かるなw 」
「 え、待って待って…あいつピアノ弾けたっけ? 」
「 いつも僕らの演奏を黙って聞いてるくらいだよね〜 」
「 弾いてるイメージねぇな… 」
「 ま、気になるから早く行こ! 」
「 せっかくなら驚かせようぜw 」
というわけで3人も加わり、5人で気配を消しながら歩いていく。
もう扉は目の前。運良くこの扉には窓があるから廊下からでも見えるんだよね〜。
一斉に扉の窓から覗く。
そこには、
今まで、僕達が見たことがない君がいた。
初めて見た。彼がピアノを弾けただなんて。
誰も声が出なかった。ピアノが弾けたことに驚いた。
だけど、それもあるけど、なにより美しかった。
大きな部屋の窓から差し込む夕日の光に照らされ、彼の細く白い指が奏でる音、共に動くくせ毛だらけの髪、そして、心から楽しそうな君からは考えられないくらいの眩しい笑顔。あんな笑顔をしていたのはとても珍しかった。まるで別人のようだった。
別人のような美しさ、笑っている横顔。
この部屋の全てが、彼によって塗り替えられていく。
演奏に夢中な彼は、まだこちらに気づいていないようだ。
彼の手が止まる。それと同時に、響き渡っていた音も止まる。僕らは自然と拍手をしていた。とても大きな拍手を。
誰もいないはずなのに拍手が送られたことにとても驚く君。見ていてやはり、とても面白い。
「 ぇッ、?は… 」
「 すごいスマイル!!俺感動した!!! 」
「 お前めっちゃ上手いじゃん! 」
「 なんで言ってくれなかったの〜!!! 」
「 誰もいない時に1人でだなんて…w 」
「 今度一緒に連弾でもしようぜ 」
みんなが次々と発していくのは褒め言葉。
君の顔はずっと間抜けズラ。
「 はぁ、?…最悪……… 」
「 そんなにか?ww 」
「 てか、今までなんで隠してたの? 」
「 それは…ピアノ弾いてるとき、別人別人ってよく言われるのが、なんか…イヤだった、?から…… 」
「 あとふつーに恥ずかしいし、お前ら笑ってきそうだし… 」
「 え〜?!そんなことぉ?! 」
「 別に恥ずかしがることじゃないと思うよ 」
「 俺ら笑わないし! 」
「 確かにまるで別人って思ったけど、俺らが思った別人はいい意味でだよ 」
「 そ!演奏も美しい、素敵、素晴らしいって感じだったけど、スマイル自体もそうだったよ 」
「 正直弾いてるスマイル、すっごく綺麗だった。 」
「 めっちゃかっこよかったぞ。 」
言い終わる頃には顔を真っ赤にして俯いてプルプル震えている。
「 ねぇねぇ!俺もっとスマイルの演奏が聞きたい!! 」
「 僕も!スマイルの演奏好きになっちゃった! 」
「 俺らも聞きたいな〜?w 」
「 スマイルピアノ演奏会する?ww 」
「 は?!?!やだよ、恥ずかしい!! 」
「 おっしゃ〜ソファーど真ん中独占しまーすw 」
「 は?!ちょっとズルい!!! 」
「 じゃあ俺その横で 」
「 いやなんで決定してんの??? 」
「 いいじゃん!たまにはこーゆーのも! 」
「 ほらスマイル、観客たちが待ってるよ! 」
俯いていた彼が顔を上げる。
「 ま、まぁ…そんなに言うなら仕方ない…か、?いいか、特別だからな? 」
ソファーに座るたった5人の観客が真ん中にいる君を見つめる。
彼は僕たちをチラッと見て、鍵盤に指を添える。そして、小さく息を吸う。
1つの音が鳴るとまた次へ次へと音が重なっていく。その音一つ一つが、僕らの全てを包み込む。
ステージの上でもないのに、スポットライトがあるわけでもないのに、真ん中で美しい音色を奏でる彼が照らされているように見える。
彼は小さく微笑む。
その名はやはり、君が1番似合っているようだ。