戦場から離れた仮設の医療拠点。
夜の帳が降りる中、淡い呪力の灯りだけが周囲を照らしている。
乙骨憂太はベッドに横たわっていた。
心肺停止から蘇生したものの、下半身欠損、小脳破損、内臓の大半が消失 という瀕死の状態。
その傍らに座るのは、山本。
山本:「……バカが……何もかも背負いすぎだろ、お前はよ。」
乱雑にまとめられた包帯。点滴。
そして、微弱ながらも彼の身体を覆う呪力。
山本は 乙骨の治療のために呪力を流し込み続けている。
本来、医療専門の術式を持たない山本にとって、これはただの延命措置に過ぎない。
しかし、それでも彼に 乙骨を見捨てることはできなかった。
山本:「……お前がいねぇと、誰がアイツを殺すんだよ……。」
彼の視線の先には、破れた天幕の隙間から覗く戦場の光――宿儺との死闘が続く気配。
乙骨:「……ん……」
僅かに乙骨の指が動いた。
山本は驚きつつも、安堵の息を漏らす。
山本:「……チッ、しょうがねぇな……生きてんなら、生きろよ。」
そう言いながら、彼は再び乙骨に呪力を流し込む。
そこへ、一人の人物が足早に駆け込んできた。
婆:「山本、おぬしに伝言じゃ。」
山本:「……なんだよ。」
婆:「”アリシアが動いた”。宿儺を足止めしている。」
山本は眉をひそめる。
山本:「……マジかよ。」
アリシアの実力は知っている。だが、宿儺相手にどこまで持つのか。
婆:「お主もそろそろ決断せねばならんぞ。このまま乙骨の看護を続けるか、戦場に戻るか……。」
山本は唇を噛む。
今すぐ戦場に行けば、アリシアと共に宿儺を討つための 最後の一手 に加われるかもしれない。
だが、乙骨を放って行けば……最悪、彼はこのまま命を落とすかもしれない。
彼は静かに拳を握りしめた。
山本:「……クソッ……選ばせんじゃねぇよ。」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!