「やっと目覚めたんか」
「ラダオクンおはよ」
「んん…体は大丈夫なの?」
「大人をからかえるくらいには回復してるらしいから大丈夫なんじゃない?」
先程とは違う満面の笑みを向けられ、何故か視線を逸らしてしまう。
転生時はいつもそうだが、何故か子供の体で毎度違う世界に送られる為、今じゃ彼らが大きく恐怖すら覚える。
彼らの足に勝ることなど出来はしないのに、逃げる選択を選んだあの時の自分は懸命すぎて泣ける。
少しの沈黙の中、疑問に思ったのだろう総隊長様が口を開く。
「で?正体聞き出せたん?」
「いいや、まだ。けど初対面で僕をからかうことが出来る人間なんて早々いないし、なにより彼には能力が通じなかった」
「なら一旦確定か…」
いい大人が罠に嵌めるとは…なんとも情けない。
一応彼らの言っていることに補足を加えると、生前の俺はほとんどの能力が効かなかった。
一般人には確実に効く能力である外交官の彼の能力でも効かなかった為、見分け方が特徴的なのだと能力を使ったのだろう。
結果、俺はその存在に気がつくことすら無く正体がバレた、ということになる。
今下手に動くわけにもいかないので、大人しく柔らかい布団を握りしめ話を聞いた。
赤毛の彼が口を開く。
「でも子供って成長段階によっては能力が効かないこともあるって…前に誰か言ってなかったっけ?」
「効かないんじゃなくて弾いちゃうやつね。うん、確かに僕が言った」
紫色の彼が肯定し、顎に手を当てる。
「でも、ここまで成長の進んだ子供が能力を弾くことなんて…」
他人から見れば、今の僕は大体7〜9歳ぐらいの子供だ。
皆の視線が僕に集中する中、『ありえない』と回答が出るのに時間はかからなかったのだろう。
大人しく座っていた白く綺麗なシートを蹴り上げ、左でそよ風を取り込んでいた窓に向かって走る。
突如逃げ出そうとした自分に、即座に手錠をかけ足や手を封じ、ドヤ顔マウンテンで見下した緑色のアイツを一発ぶん殴ってやりたくなった。
綺麗な焦げ茶色に塗られたフローリングに顔を着く直前、誰かの手によって抱き上げられる。
運営の中には一人だけ、どの能力にも長けた存在が、2人、いた。
一人は『僕』。それともうひとりは…
「総隊長」様。
「”本当のことを話せ”」
特に彼は、”催眠”の能力で右に出る者はいなかった。
「しまッ」
催眠をかけるにあたって、条件は一つだけ。
【魂の名前の名前を知っていること】
「”らっだぁ”」
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