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「よぉ、プレゼントを届けに来たぜ。」
これは《銀世界》という世界に住む子供達に魔法のプレゼントを配るヒーロー、 サンタヒーローの物語である。
ここは春と夏と秋のない世界、《銀世界》。
このお話の主人公サンタヒーローは町外れの
雪山にぽつんとあるレンガ造りの家に相棒のトナカイ娘の双子とともに暮らしておりました。
「ぐがー。ぐがー。」
このトランクス一丁でだらしない格好で寝ている細マッチョのだらしないオッサンがサンタヒーロー。
彼の部屋には大量の酒瓶、酒瓶、酒瓶の山があります。
サンタヒーローはとにかくだらしないオッサンでした。
そんなだらしないオッサンのサンタヒーローはもうすぐ仕事の時間だというのにめちゃくちゃ気持ち良さそうに寝ています。
「ふわぁ、もう仕事の時間かぁ。」
布団を被りながらサンタヒーローが言いました。
「いいや、二度寝しよ。」
そう言ってサンタヒーローは二度寝をかましました。
すると双子のトナカイ娘、アカハナとカイナがサンタヒーローを起こしに来ました。
「サンタヒーローサンタヒーロー、仕事の時間、仕事の時間。」
トナカイ娘の双子の妹のカイナは裸足でサンタヒーローの顔をふみふみしながらそう言いました。
「…..あーー。今日は風邪ひいたから仕事休むわーー。」
サンタヒーローはカイナの足を手で
ぺしっと払いながら言いました。
「真っ赤な嘘真っ赤な嘘。サンタヒーローは
馬鹿だから風邪をひかない。そして私たちに休みはない。」
ピコンピコンと真っ赤なお鼻を光らせながら
トナカイ娘の双子の姉、アカハナは無慈悲に言いました。
アカハナはかしこいので嘘を見抜くことが
できます。
「チッ、分かったようっせーな。行けばいいんだろいけばぁー。」
サンタヒーローは死ぬほどめんどくさそうに
言いながらムクリと起き上がりました。
「早く行こうすぐ行こう。」
「急がないとシキ様にお説教される。」
アカハナとナカイはお互い抱きしめ合いほっぺをくっつけ合いながらサンタヒーローに
言いました。
シキ様とは《銀世界》を管理する女神様であり《銀世界》で一番偉いお方です。
怒らせるとカチンコチンに凍らされます。
「へいへい。」
ふわぁ、とあくびをしてサンタヒーローは
ヒーロースーツに着替え、髭も剃らずにソリに乗りました。
ソリを引くのはトナカイ娘のカイナの役目です。
カイナは力強いのでサンタヒーローとアカハナをソリに乗せてものすごいスピードでソリを引きます。
「なぁ、アカハナ。」
「なにサンタヒーロー。」
「俺達の刑期ってあとどんくらい?」
サンタヒーローとアカハナは移動中暇なので
雑談をすることにしました。
「サンタヒーローはあと2万6000年と8ヶ月。私とナカイは7000年と2ヶ月。」
アカハナはかしこいので自分達の刑期を
しっかりと数えています。
サンタヒーローとトナカイ娘達は《銀世界》で罪を侵した罪人でした。
サンタヒーローの罪は《春と夏と秋を盗んだ罪》です。
サンタヒーローはシキ様を騙して春と夏と秋
をこの世界から盗んでしまいました。
サンタヒーローは盗んだ春と夏と秋をジャポニカ諸島とかいう見たことも聞いたことも
ない島の連中に売りさばいてしまったそうです。
こうしてこの世界は春と夏と秋を失い
《銀世界》となってしまったのです。
カンカンに怒ったシキ様はサンタヒーローの
元の名前を奪い《サンタヒーロー》として
約3万年のもの間強制労働の刑に処しました。
こうしてこの男はサンタヒーローとして働かされることとなったのです。
トナカイ娘の双子の罪は《生まれてきてしまったこと》。
トナカイ娘の双子達はトナカイのお母さんと
人間のお父さんがウコチャヌプコロしてできた子供でした。この世界では、種族の違う生き物がウコチャヌプコロすることはものすごく悪い罪でした。
故にトナカイ娘の両親達は双子を置いて心中し、残された双子達が両親の罪の肩代わりをすることとなったのです。
「ふぅん、そりゃがんばんないとな。」
サンタヒーローは呑気に言いました。
「着いた。手紙の住所はここ。」
カイナはそう言ってキキーッと急ブレーキをしました。
「じゃ、さっさとプレゼント渡すかぁ。」
サンタヒーローとトナカイ娘達は家の煙突
から家に入りました。
煙突がない家は屋根をぶち壊して入らないといけないので今回は手間が省けました。
「よぉ、プレゼントを届けに来たぜ。」
サンタヒーローはそう言ってニカッと笑いました。
小さな男の子が言いました。
「最近、パパとママがケンカしてりこん?
するらしいんだ。だからサンタヒーロー。
パパとママを仲直りさせるプレゼントを
頂戴。」
サンタヒーローはアカハナを見ました。
「この男の子は嘘をついていない。」
サンタヒーローは膝を曲げて小さな男の子と
目線を合わせて言いました。
「サンタヒーローからプレゼントを貰えるのは一生に一度だけ。本当にそんなチャチな
プレゼントでいいんだな?あとでもっと上等なモン欲しいっつってもあげねーぞ?」
男の子は真剣な顔で言いました。
「うん。パパとママに仲直りしてほしい。」
サンタヒーローはニカッと笑って
「分かった。ちょっと待ってろ。」
と言ってごそごそとプレゼントを入れた袋を
漁りました。
「ほい、《縁結びおむすび》だ。これ食わせりゃどんなにケンカしてるパパやママも翌日には仲直りして毎晩のようにウコチャヌプコロしだす優れモンだ。賞味期限はない。
寝てる間に口にぶちこんどけ。」
そう言ってサンタヒーローは男の子に縁結びおむすびを渡しました。
「ウコチャヌプコロってなぁに?」
小さな男の子は純粋な目でそう言いました。
「それはだなぁアイッタァ!!??何すんだよカイナ!!???」
「子供に変なこと吹き込むな。」
ナカイは頭の角を外してサンタヒーローの頭をぶちました。
サンタヒーローの頭にたんこぶが出来ました。
そしてナカイはスッと角を戻しました。
「いってぇなぁめちゃくちゃ暴力じゃねぇか…..。 そんじゃな、ボウズ。達者で暮らせよ。」
そう言ってサンタヒーローは男の子に手を振りました。
「うん!!ありがとうサンタヒーロー!!!」
そうしてサンタヒーロー達は男の子の家を
出ていきました。
サンタヒーローを乗せたソリがものすごい勢いで空を駆け抜けます。
「あーあ、ったく。ガキと話すのは疲れるぜぇ。」
サンタヒーローはうーんと背伸びをしました。
「真っ赤な嘘真っ赤な嘘。サンタヒーローは
子供が大好き。世界中の子供が幸せになればいいと思ってる。」
アカハナはピコンピコンと鼻を赤く光らせながらそう言いました。
「うっせぇ、余計なお世話だ。」
少し照れながらサンタヒーローがそう言いました。
「サンタヒーローサンタヒーロー、おなかがすいた。道草食っていい?」
ソリを引いていたカイナがサンタヒーローに言いました。
「いんじゃねぇの?」
サンタヒーローは適当に言いました。
カイナはキキーッと急ブレーキをし、
ブラックファミレスに止まりました。
ブラックファミレスは24時間365日営業してます。
きっとここの店員達もサンタヒーローとおんなじなにかしらの罪でシキ様に働かされてる連中なのです。
「すいません、草ください。」
「私も草。」
「じゃ俺はコーヒー。」
サンタヒーロー達は口々に注文しました。
「かしこまりましたー草草コーヒーですねー。少々お待ちくださいませー。」
ウエイトレスさんはメニューを復唱すると
ビュンッと 調理場に戻ってゆきました。
そしてビュンッとサンタヒーロー達のもとに
料理を届けに来ました。
「お待たせしましたー。草、草、コーヒー
でーす。ごゆっくりどうぞー。」
ウエイトレスさんはペコリとお辞儀をし、
またビュンッと他の客の注文を取りに行きました。
モッシャモッシャとトナカイ娘達は草を食べます。
「これはいい草。」
「まったりとしていてしつこくない。」
「草なんてどれもおんなじだろー?」
サンタヒーローは珈琲を飲みながらそう言いました。
「全然違う。」
「これだから素人は。」
トナカイ娘の双子達は草をモッシャモッシャしながら口々にそう言いました。
さて、腹ごしらえが済んだので仕事の時間
です。
ナカイはソリを爆速で引きました。
「着いた。手紙の住所はここ。」
サンタヒーロー達は煙突から中に入りました。
「お母さんが病気で治療費がいるんだ。おこづかいが増えるプレゼントをください。」
男の子は言いました。
サンタヒーローはアカハナを見ました。
「真っ赤な嘘真っ赤な嘘。そもそもこいつは
子供じゃない。子供を殺してその子の皮を被ったばけもの。」
そう言ってアカハナは目を赤く光らせました。
すると男の子の皮がはがれ醜くておぞましい
狼のばけものがあらわれました。
「ズルイ…..ズルイズルイズルイィィィ!!!!
コドモバッカリズルイ!!!!ボクモプレゼントホシイ!!!!オカネガホシイイイイイ!!!!」
醜いばけものはそうやってサンタヒーローの
袋を奪おうとしました。
するとカイナがサンタヒーローの前に現れてばけものを背負い投げしました。
こういう荒事はカイナの仕事です。
「あーあ、もう終わりだよお前。」
真っ赤だったサンタヒーローの服装が段々真っ黒になり、サンタヒーローはブラックサンタになりました。
「残念だがお前にはプレゼントになってもらう。」
そう言ってサンタヒーローは袋をばけものに
向けました。
するとサンタヒーローの袋はものすごい力で
ばけものを吸い込もうとしました。
ばけものは必死で抵抗しました。
「イヤダ!!!プレゼントダケハイヤダァァァ!!!!ハンセイシマス!!!モウニドトシマセン!!!!」
ばけものは必死にそう叫びました。
「真っ赤な嘘真っ赤な嘘、この男は反省なんてしていない。私達を殺そうとしている。」
淡々とアカハナが言いました。
「だってよ。悪いな、こっちも仕事なんだわ。」
そう言ってサンタヒーローは悪い顔で
笑いました。
「イヤダッ…..イヤダァァァァァ!!!!!」
こうしてばけものはふわふわのぬいぐるみになりました。
「んじゃ仕事も終わったし帰るか。」
サンタヒーロー達はソリで家路に着きました。
「なぁ、お前らはプレゼント貰えるなら何が欲しい?」
サンタヒーローは雑談がてらトナカイ娘達に聞きました。
トナカイ娘の双子は口々に言いました。
「私達はいらない。」
「もうプレゼントは貰っている。」
「へぇー、何を貰ったんだ?」
サンタヒーローはトナカイ娘達に聞きました。
「家族。」
そう言ってアカハナはサンタヒーローを指差しました。カイナはウンウンと頷きました。
サンタヒーローは目を閉じて笑いながら言いました。
「あっそ、じゃ帰ってメシにすっか。」
こうしてサンタヒーロー達は家に帰り食事をとり、あったかいお風呂に入った後ふかふかの布団で一緒に眠りました。
サンタヒーロー達のお仕事はまだまだ続きます。
(最後まで読んでくださりありがとうございました。)