……止めるといっても何をしよう。
4時間目の数学は終わり、お昼ご飯の時間になった。私の席は奪われるので、校庭の隅っこで食べる事にする。
神崎さん、そう、現在のいじめの対象。
1ヶ月前まではクラスの中心で、よく皆とお昼ご飯を食べていた。陰キャの私とは正反対な性格をしていた。
……なのに。
神崎さんがついてきている、だと!?
遠回りをしても、何しても着いてくる。どうこうしている間に校庭の端へ着き、神崎さんに気付いていないふりをして食べる事にした。
…なのに。
「春野…さん?」
…こいつ、話しかけてきやがった!!
「な、なんでしょうか…?」
「良かったら、一緒にご飯食べない?」
「あ…良い、ですよ……!」
そう来たか……。
中身までは陰キャじゃない私は、お前に興味ねぇから雰囲気を出して聞いた。
「な、なんで私なんかと…?」
「えぇっと……俺、実はいじめられちゃって…笑」
「そ、そうなんですね……」
「まぁ、人に避けられたりしてたけど……春野さんは数学の時、俺に答え教えてくれたからさ。」
答えを少し教えただけで、この人はこんなにも行動力があるのか。…私は感心した。
「い、居眠りするのが悪いんですよ…!?」
「あっはは……いや、でもしょうがないじゃん?眠いし。」
流石陽キャだ。……神崎さんも、いじめれたら、陰キャになるのかな。
「眠いって……夜遅くまでゲームでもしてるんですか?」
「……いやー…友達、にさ。課題頼まれちゃって……。」
…絶対友達じゃないやつ。私はそんな事思いながら、お弁当の野菜を食べ始めた。
「断らないんですか?」
「断れないよ……。友達だもん。」
……友達。友達が居なくなるのを、怖がってるのかな?……それとも、友達じゃなくなる事を怖がってる……?
「私なら、すぐに縁切りますけどね。」
「わ、一瞬自分の名前言ったのかと思ったじゃん…。」
……そうだった。こいつの名前は神崎縁……。名前覚えにくい私には、ずっと認知しているのは難しい。
「でも、春野さんってそんな…えと、ズバッて言える…の?」
「うーん…そうですね……」
実は私は受験してここに来た身。私が小学生の事は知らないはず……。私は、小学生の頃、何でもズバッと言っちゃう……さばさばけいじょし?…だっけ?まぁ、多分それだった。
この中学校に来てから陰キャを装っていたので、傍からみるとただのモブ。確かにズバッと言えるイメージは全く無い。
「言おうと思ったら言えるんじゃないですか?私、神崎さんと同じ立場になった事無いんで、分かりませんけど……。」
「……そっか。」
お弁当の野菜を食べ終えた所で、ご飯とお肉を交互に食べていく。神崎さんは手作りっぽいサンドイッチを食べていた。陽キャにしては珍しい、寂しそうな顔で、サンドイッチは食べられてゆく。
「俺、絶縁してみよっかな……!」
「へ…?」
…おっとこれは予想外。何か良く分からないけれど、吹っ切れたっぽい。……ほんとに良く分からないのだけれど。陽キャが……絶縁……???
「それ…えと……困る事とか無いんですか…?」
「メリットありまくりだから大丈夫!……それに、話し相手なら、春野さんがなってくれるでしょ?」
……なんと言う事だ。こやつ、上目遣いを利用してきやがった。わざとなのか無意識なのか……。
「……さぁね、気分による」
「えぇー?」
お昼ご飯を食べ終えた私達は、教室へ戻る。
……それを、誰かに見られているとも知らずに。
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