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原神やってないから詳しい内容は分からないけど神作って言うのはわかる!
双星の旅人
ボロボロとヒルチャールが灰となって崩れていく。一人の旅人は剣先を振るい、剣を手放す。すると剣は消えて彼の背中に納まり、見えなくなった。
「こう、何匹も同時にかかってこられたら、大変だな…。空、怪我は無いか?」
白い髪をした小さな妖精のような女の子はそう旅人の体調を案ずる。
「大丈夫だ、パイモン」
「なら良かったぜ!」
パイモン、とそう旅人に呼ばれた妖精のような女の子はニコッと微笑む。
旅人の名前は空。七神が護る国、テイワットで片割れの妹を探している。だが、まだ何も手掛かりは掴めていない。
「何処かで休憩しようぜ!モンドは風が気持ちいいしな!!それか、鹿狩レストランに言って人参とお肉のハニーソテーなんかも…」
「それはパイモンがお腹すいているだけだろう?」
「ち、違うぞ!!」
涎を垂らさんばかりにモンドの名物料理を口にするパイモンに空は溜息を吐きながら言う。
「でも、お腹が空いているのは確かだし…行こうか」
「ほんとか!!やったぁ!!」
パタパタと浮かんでいる足を揺らして嬉しそうに微笑む。
モンド城に入り、鹿狩レストランの前まで来ると馴染みのある人物が居た。
「あ!パイモンちゃん!!それに空も!君達もご飯を食べに来たの?」
「おう!空がどうしてもって言うからな!!」
「ち、違うよ…。言ったのはパイモンだろ…」
相変わらずの事で戯れる二人に席に座っていた女性はくすりと微笑む。
「とにかく!空達には風魔龍の件でも助かったし、お礼も出来てないからここは西風騎士団偵察騎士アンバーの奢りにさせて貰うわ!」
「アンバーの奢りか!!うわぁーい!!やったぜ!!」
自分の事をアンバーと名乗った女性はどんと胸を張る。それにパイモンは喜ぶ。パイモンのその様子に空は少し呆れる。
「パイモン…少しはしたないよ」
「だけど、折角の奢りだぞ!!断るなんて選択肢はオイラには無いぜ!!」
ドヤ顔で言われた…。ドヤ顔で言う所なんて何処にもないと思うんだが…。
空は諦め、アンバーとパイモンと共に卓上を囲む。卓上の上には、人参とお肉のハニーソテーやテイワット風目玉焼き、満足サラダなど色々な料理が並べられた。時折、旅について話をしたりもした。
「どれもこれも大満足だぜ!!」
パイモンに置かれた料理はもう空になっていた。満腹になった自身の腹を撫でる。
「パイモンちゃんは食べるの早いね」
アンバーはくすっと微笑みながら言う。空は苦笑する。
「そうだ!空とパイモンちゃんはもう少ししたらモンドを出るのよね?次の旅の目的は決まってたりするの?」
「それがまだ決まってなくて…」
アンバーの質問に空はうーんと考え込む。アンバーは頷き、「それなら…」と続ける。
「璃月に行くことを私は進めるわ!私もそんなに詳しくないんだけど…。璃月はここよりももっと大きな街だって。行商人も沢山居るし、仙人っていう人達も居るから、もしかしたら空の妹さんの事も分かるかもしれないよ」
「!」
断定は出来ないけどね、とアンバーは付け加える。そして、立ち上がる。
「よっと。私はそろそろ仕事があるから!モンドを出る前にジン団長に一言声掛けてね!!」
じゃあね!と手を振りながら門を出る。空とパイモンはアンバーの姿が見えなくなるまで手を振り返した。
「オイラ達もそろそろ行くか!ジン団長はきっと城に居るはずだぞ!!」
「うん」
空は頷き、席を立つ。料理はアンバーの奢りという事なので、料理人にお礼を言ってモンド城へ向かう。
ジン団長が居るであろう扉の前で空は立ち止まる。そして、三回ノックする。
「どうぞ。入って」
中から厳しくも優しい声が聞こえてきた。空は部屋に入る。
ジン団長はペンをサラサラと動かして何やら書類をまとめているところだった。
「空か。どうした?」
「そろそろ、モンドを出てまた旅をしようかと」
ジン団長はペンを止めて、「そうか」と頷く。
「空には沢山世話になった。また時間に余裕があればいつでもモンドに来ると良い。西風騎士団が歓迎しよう」
「ありがとうございます」
空はぺこりとお辞儀する。
「ジン?失礼するわよ、あら」
扉を開けて入ってきた者は魔法使いのような格好をした西風騎士団の図書館司書であるリサだった。
「リサ?どうした?」
「いえ。大したことでは無いわ。それにしても、空がここに居るということはそろそろモンドを出るから挨拶をしに来たってところかしら」
「な、なんで分かるんだよ!!」
見事に内容を当ててパイモンは驚く。勿論、空も驚いていた。
「ふふっ。魔法使いを舐めないでちょうだい」
リサはくすりと微笑む。
「まぁ、暇な時にでも来てちょうだい。その時には面白い本も仕入れておくから」
あまり空と立ち話をする時間は無いので、失礼するわ、と言ってリサは外に出て行った。
「そういう事だ。では、門の前まで見送ろう」
ジンは椅子を引いて立ち上がる。城の外は気持ちの良い風が吹いていた。ジンの金色の髪が風に靡く。
「見送ってくれてありがとな!!」
門の前まで来れば、パイモンはそう言う。ジンは頷き、小さく手を振る。
「空、行こうぜ!!」
「うん」
双星の旅人は、次なる目的地、璃月へ歩き出す。