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千葉県の田舎。時間の気にしないバイクの音の雑音が、大きな目覚まし時計だ。 いつ溢したのか忘れた畳の染みが深く残り、数ヶ月前の模様替えで動かしたベッドの形がくっきりとまだ残っている。 散歩がてらコンビニによるため、1000円のカードを握り締めポケットに入れて外に出ることにした。 時間は4時、鳥の鳴き声を聴きながら遠ざかるバイクの音と鼻にツーンと来る寒さが、日常を感じる。
しばらく歩いて電話の音が鳴ると、私は近くの道端に寄り電話にでた。
「畑中さん早朝にすみません」
「大丈夫ですよ」
電話先は加地という男。20代ながら咄嗟の判断力がしっかりしていて、仕事を任せる一目置いている存在だ。
「渡したいものがあり、畑中さんの家の近くの公園にいるのですが」
「あーあれか、いま散歩してた所だからすぐ行けるから大丈夫」
私は電話を終え公園に向かった。
「畑中さんすみません来させてしまって」
「いいんです。例の件てあの」
「はい。こちらです」
加地はアタッシュケースから封筒を取り出し、私に渡した。封筒を開けて確認する。
「この写真が」
その写真は後ろに大きな家があり、父母姉妹がうつる何気ない家族写真。白黒で古く写真が劣化して薄汚れており、さっきまで汚れた埃の中に沈んでたような匂いがする。
「見えませんよね。仲睦まじい家族に見えますよ」
普通の家族写真に見えたとしても、軽く扱ってはならない圧を感じた。そう感じた気がしたのかもしれない。
「加地さんはそう見えますか」
「なんですか?なにかありますか」
「いや正直私にもなにも」
「プロじゃないので」
「またまた長いくせに」
「この写真にまつわる話とかは?」
「 実害があったとかで」
「それは面白いですね」
私は写真をしまい、自分のコートの中に入れた。ポケットに手を入れると、裏にある封筒の固さが左手によく分かる。
「これまでのブツは中々ありません。畑中さんの主催する怪談ライブで使う心霊写真としては、だいぶ危険ですよ」
確かに私は田舎の片隅で怪談ライブを企画して主催するもの。ある日届いたメールのあの内容が本当であれば、この写真は私が扱っていいものではない。そう分かっていた
「こういうものは恣意的に扱っていいものではないからね」
「怪談ライブに使おうとしてるのに」
「しっかり住職にお祓いしてもらうから」
どこか言いたげな様子で加地は封筒のある方をすっと指差す
「そのー写真の実害ってやつ。うけてんの有名な住職なんですよ」
「住職が?」