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春夏との約束を果たすため、颯汰は次の日、放課後に彼女を本屋へ連れて行くことになった。普段の颯汰なら、こんな大きな機会を得るなんて信じられないことだったが、今の彼は少しでも春夏と過ごす時間を増やしたい一心だった。
放課後、春夏はいつものように明るい笑顔で颯汰を迎えた。彼女はカジュアルな服装で、白いシャツにデニムのジーンズ、そして柔らかなピンク色のカーディガンを羽織っていた。颯汰はその姿を見て、心の中で少しドキドキした。
「颯汰くん、もうおけ?」春夏が元気よく声をかける。
「うん、おけ」颯汰はそう言うと、少し照れくさそうに微笑んだ。
二人は街の書店へ向かう途中、春夏がいろいろな話をしてくれた。彼女はいつも明るく、周りの誰とでも自然に会話ができる。それを見て、颯汰は彼女の魅力にますます引き寄せられていった。
書店に着くと、春夏は目を輝かせながら本棚を眺めた。
「この本、面白いかな?」春夏が一冊の本を手に取って颯汰に見せる。
颯汰はそれをじっと見つめ、少し考えてから答えた。
「うーん、ちょっと分からないけど、春夏が気に入る本ならきっと面白いよ。」
春夏は笑ってその本をカゴに入れた。
「ありがとう、颯汰くん。」
その後、二人はお互いの好みの本を選びながら、時間を忘れて本屋を楽しんだ。颯汰はその時間が本当に幸せだと感じたが、心の中で少しだけ不安も感じていた。彼女が他の男子ともこうやって楽しんでいるのではないか、という焦りが少しだけあったからだ。
だが、春夏が颯汰の方を振り返り、にっこりと笑った時、その不安はすぐに消えていった。
「颯汰くん、一緒に本を選ぶの楽しいね。ありがとう。」春夏が言った。
颯汰はその笑顔を見て、心から嬉しさがこみ上げてきた。
「そうかな?僕こそ、嬉しいよ」
その言葉が、颯汰の本音だった。今、この瞬間がすべてだと感じた。
本を選び終わった後、二人はカフェでお茶をしながらさらに会話を楽しんだ。春夏は時折、颯汰の目を見て話し、颯汰はそのたびに胸が高鳴るのを感じた。
そして、春夏がふと真剣な表情を浮かべて言った。
「颯汰くん、私、実は…少し悩んでることがあるんだ。」
颯汰は驚いて、彼女に顔を向けた。
「悩んでること…?」
春夏は少し戸惑ったように目を伏せ、ため息をついた。
「う〜ん、最近皆に話しかけられて、勉強する習慣がないの。本を読む時間も縮んじゃったぁ。」
颯汰はその言葉に驚いた。彼女がそんなに悩んでいるとは思わなかった。彼は少し考え、優しく言った。
「春夏は人気だからしかないよ。僕も春夏さんに話しかけたくて仕方ないよ。」
春夏はその言葉に目を見開き、少し驚き笑った。
「木村さんってそんなこと思ってたんだね」
その瞬間、颯汰の心臓は激しく動いた。彼女の笑顔を近くから見ると、こんなにも美しい。まるで、天使のような笑顔が、笑顔だった。