――翌日、食堂は異様な静けさに包まれていた。
吉田武史はトレーを持ったまま立ち尽くしていた。食堂の隅、窓際の席に座る男の姿を見つけたからだ。
雨宮京介。冷たい視線のまま、吉田に手招きする。
「吉田ァ。座れよ。」
吉田は動揺を隠しながら、ゆっくりとその前に腰を下ろした。
「昨日は背後から失礼。……でもね、まだ終わりじゃない。」
雨宮の言葉が重く響く。だが、次の瞬間、さらに不吉な気配が背後から近づいた。
「やっほー♪ 吉田さ~ん。」
幼さの残る声。それなのに、吉田の背筋は氷のように冷たくなる。
振り向くと、そこには15歳くらいの少年が立っていた。柔和な笑顔に、明るい雰囲気。だが、その目だけは何かが壊れていた。
「俺、ライア。よろしくねぇ?」
吉田は血の気が引くのを感じた。少年の気配は、刃物のように鋭い。
「おいおい、吉田さん。そんな顔しないで?」ライアはくるくるとナイフを指で回しながら、無邪気に笑う。「俺さぁ、壊れたおもちゃ集めるのが趣味なんだ。……だからさ、君も早く壊れなよ?」
「……っ。」
吉田は冷や汗を拭いながら、椅子を引いた。だが、ライアはその動きを見逃さない。
「逃げんの? つまんな~い。でもまぁ、焦らなくていいよ。」ライアはくすくす笑いながら言った。「ねぇ、吉田さん。お前を壊すの、俺の生きがいなんだよ?」
吉田は震える手で傘を握る。次の瞬間、食堂の窓を激しい雨が打ちつけた。まるで嵐の始まりを告げるように――。
――つづく――
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