ある百姓の夫婦に赤ちゃんが生まれた。働き者だった夫婦は、かわいい子が生まれて、ますます仕事に励むようになった。赤ちゃんは元気にすくすく育っていった。
ところがその村にはやきもちやきの黒い妖精が住んでいた。
🇩🇪「じゃ、行ってくるな。いい子にしてるん だぞ」
🇮🇹「行ってらっしゃい♪」
そう言って夫を見送り、妻は食器を片付け始めた。
すると、窓から妖精が入って来たのだ。
妖精「なんてかわいい子なんだ。俺の子よりもずっと元気そうじゃないか。ンン、悔しい!」
そう言ってジタバタと暴れた。赤ちゃんは、それを見てキャッキャと笑った。
妖精「あぁ。笑った顔もホントにかわいなぁ。
悔しい悔しい!!」
そう言ってまたジタバタした。だが突然ピタリと動きを止めた。
妖精「そうだ。へへへへへ」
🇮🇹「僕のかわいい赤ちゃーん、お腹すいたよねー」
妻は、優しく声をかけながらベビーベッドへと近づいた。
🇮🇹「えぇ!」
妻は、思わず後ずさった。
🇮🇹「ひ、髭ズラなんねーー!」
そう言って、家を飛び出していった。ベビーベッドには、あの妖精とよく似た、髭面の赤子がいた。
妻はおっとをよびいった。
🇩🇪「ど 、どうしたんだ一体。急にこんな大 人っぽくなって」
夫は面食らった顔をしていた。
偽赤ちゃん「うんぎゃーー」
🇩🇪「こ、声まで」
🇮🇹「いい子なんね。きっとお腹がすいているんね」
妻が慌ててミルクを飲ませようとした。
偽赤ちゃん「ケッ。ビールがいい。ビールもってこい」
赤子がしゃがれた大人の声で哺乳瓶を叩き落としながらいった。夫婦は、開いたくちが塞がらない。
🇩🇪「ビールってお前。いくらなんでも早いだろ」
偽赤ちゃん「あーぁ。早くしてくれよ。ビール」
偽赤ちゃん「あっ。つまみもいっしょにな」
そう言いながら赤子はふんぞりかえる。
🇮🇹「ただごとじゃないんよ」
🇩🇪「長老に相談しよう」
村人「こんな日が高いうちからビールなんて先が思いやられるぞ」
村人「ビールはやっぱり夕食の時だろ」
妻が泣きながら長老に尋ねた。
🇮🇹「うぅ。これって反抗期なんでしょうか」
🇩🇪「まだハイハイもしてないんだが」
長老「ゆりかごはいつもここに?」
🇮🇹「はい」
長老「やはり…黒い妖精の仕業か」
長老が床に落ちた髪を掴みながらきく。
🇮🇹「うぇ?」
🇩🇪「黒い妖精?」
長老「この辺りに住むやきもち焼きの妖精じゃよ。お前たちの子があまりにかわいいので、 自分の子と取り替えたんじゃ」
🇮🇹「そ、それじゃ僕たちの赤ちゃんは?」
妻が食い気味に聞く。
長老「心配なさんな。お前さんたちの子供は妖精たちが大事に育てているよ」
🇩🇪「赤ちゃんを元に戻すには、どうすればいいんですか?」
長老「昔からの言い伝えによれば、赤ちゃんの足の裏に油を塗って近くで火をたくのだ。そうすればじきにこの子の親が迎えにくるであろう」
おそるおそる夫が火をつけた。
偽赤ちゃん「ん?ギャーなんてことをしやがるんだこのヤロー!!」
すると、窓からあの暗い妖精が入って来た。そしてすぐにその子を抱いた。
妖精「うーよしよし。もう大丈夫だ。うぅ。人間って酷いことするよな。」
偽赤ちゃん「そもそもお前が俺を捨てるのがいけないんだよ」
妖精「ま、そんなかたいこというなよ。早く帰って冷たいビール飲も。なー」
偽赤ちゃん「ぃよーし!今日は朝まで飲むぞー!!」
妖精「だーはっは」
カラン。そうしてドアから慌ただしく出て行った。
🇮🇹「…あっ!」
赤ちゃん「あーあー」
🇮🇹「っ!僕の赤ちゃん!よかった」
赤ちゃんを震える手でギュッと抱きしめる。
🇮🇹「ありがとうございました」
🇩🇪「っありがとうございました」
長老「妖精は金物を嫌がるそうじゃ。 二度と来ないように赤ん坊のそばにスプーンを置くといい」
長老はそう言って微笑んだ。
それから妖精はこなかったそうな。
コメント
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こういう雰囲気のお話とっても好きです…🥰ヨーロッパでは金物を赤ちゃんに贈る風習があるのは知っていたのですが、足の裏に油の元ネタが分からなくて…もし良かったら教えてください🙇♂️