「…あっつ…」
首筋に、だらーっと汗が垂れる。
7月に入ったばかりなのに、すごく暑い。
セミの声も鬱陶しい。
明るい茶髪に染めた巻き髪をいじりながら、鏡で前髪をチェックする。
(暑いせいで、前髪がくっつくんだよなー…)
今日もアタシのバッグには、大量のぬいぐるみが付いている。
たまにウザいと思うけど、可愛いから仕方ないのだ。
(それにしても、今日のネイル上手く塗れた!)
爪先だけでも涼しく感じられるように、水色と白のネイルの上に、貝殻のチップを乗せた。
(いおりに自慢しよーっと)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(やっと学校に着く…)
汗をハンカチで拭いながら、校門へ向かう。
(今日はアイツがいませんように)
期待しながら向かったのに、案の定”アイツ”がいた。
今日も腕組みをしながら、周りを見渡している。
アイツ_北村の腕には、『風紀委員』という腕章がはまっている。
アイツに気づかれないように、早足で校門を通り過ぎたのに…。
「鈴田さん」
(……げっ)
よく通る大きい声で名前を呼ばれた。
アイツは涼しい顔でこっちに来た。
「髪は黒に染め直してくださいと言いましたよね?バッグのキーホルダーも2つまでです。そして、化粧。濃すぎです」
(はぁー、また始まったよ。お説教タイム)
先生でもないのに偉そうに。風紀委員長だから何だって言うの?
「はいはい、すみませーん」
アイツを無視して行こうとしたら、アイツに腕を掴まれた。
「ちょ、何!?掴まないでよ!」
「ネイル、禁止です。今すぐ落としてください」
「………は? 」
朝から時間かけて頑張って塗ったのに。
その時間が無駄だって言ってるの?アタシの気持ち、知らないくせに。
そう思うと、怒りが湧いてきた。
「アタシの努力を無駄にする気?せっかく上手く塗れたのに!!」
アタシはアイツの腕を振り払って、走って校舎に向かった。
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