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目を覚ました私は、またしても気づけば朝が来ていた。今日は湊と一緒に登校することになるなんて、予想もしてなかったから、どうしても落ち着かない。
いつもなら、悠斗や紗菜と一緒に通学していたけれど、今日、湊が突然「一緒に行こう」と言い出したのだ。理由もなんかよくわからないままだったけれど、湊のことだから、何かしらの理由があるのだろう。
「おい、せりな、準備できたか?」朝、私の家の前で湊が待っていた。今日は少し早めに出たつもりだったけど、どうしても湊に声をかけられると、心のどこかでドキドキしてしまう。
「え、あ、うん。もう行くよ。」慌てて制服を整え、湊の方に歩み寄った。
湊は軽く肩をすくめ、「お前、早起きだったな。昨日、寝坊したんじゃなかったのか?」と、ちょっとした皮肉を交えて言ってきた。
「別に寝坊してたわけじゃないし、ちゃんと起きたから!」私は少しムッとしながら返事をしたが、湊の顔を見ていると、なぜか笑ってしまう自分がいた。
「そうか?まあ、今日はお前と一緒に行くって決めたから、気合い入れていけよ。」湊がからかうように言うと、私は思わず「気合い入れたからって、どんな意味?」と反応してしまった。
湊は少しだけ笑みを浮かべながら、「お前、面白いな。気合いって、なんでもないことだろ。」と言いながら歩き出した。彼の歩くスピードに合わせて歩く私は、なんとなく少しだけ緊張してしまった。
途中、普段通りの道を歩いていると、湊は不意に立ち止まり、私に振り向いた。「桜庭、昨日のこと、覚えてるか?」
「昨日って…?」私は思い出そうとした。
「クラスで俺が言ったこと、覚えてるだろ?」湊が挑戦的に言う。
ああ、そういえば、湊があんなことを言ってきたんだった。「あんた、調子に乗ってるなって言ってたよね。」
「覚えてるじゃん。あれ、本気で言ったわけじゃないんだけど、お前、反応してくれたから面白かった。」湊は微笑んで言った。
「別に、反応しなかったわけじゃないけど…」私は少しだけ恥ずかしくなった。あんなにムキになって言い返したのに、湊は全然気にしてなさそうだ。
湊は急に歩調を速め、私がちょっとついていけずにいると、少し振り返って言った。「おい、桜庭、走れよ。遅れるぞ。」湊の言葉に、私は慌てて追いかける。
「は、はい!待ってよ!」私は思わず追いかけながら答える。湊って、ほんとに予測できない。気を抜くとすぐにからかわれるし、でも、ちょっと優しそうなところもあって、どうしても気になる。
学校に近づくと、湊がまたふと振り返って、私の顔をじっと見つめてきた。「桜庭、別に俺、あんまり言いたくないけどさ…」と、湊が少し真剣な表情で言う。
「ん?何?」私は気になって思わず聞く。
「お前、みんなにどう思われてると思う?」湊の言葉に、思わずハッとした。
「え…?」私は一瞬何を言われたのか理解できなかった。
「別に、俺が言うことじゃないけど、お前、他のやつらにどう見られてるか気にしてる?」湊は少し不思議そうに言った。
その瞬間、なんだか胸がドキドキした。湊がそんなことを気にしてくれるわけないと思っていたけれど、どうしてもその言葉が気になって、私は少し戸惑ってしまった。
「別に気にしてないけど、そんなの関係ないよ。」私はどうにか冷静を保ちながら答える。
「そっか。」湊はただそう言って、歩き出した。その表情はまた、いつもの冷たくてクールな顔に戻っていた。
学校に着くと、湊が「あ、今日はお前のために、席を開けておいてやったから。」と、また何気ないことを言ってきた。湊は本当に気まぐれだ。
私は思わず目を見開く。「席を開けておいてって…、どういう意味?」
「ほら、隣席だからな。」湊はにやりと笑うと、私に突っ込むように言った。
「え、また隣席!?またこの席?!」私は心の中で叫びながら、湊の後を追った。なんでこんなにも一緒の席ばかりになるんだろう。隣席でこんなに意識し合うのは、ちょっとしんどい…。
でも、湊があんなにあっけらかんと言った理由も、なんだか気になる。どうして、あんなに堂々と言ってくるのか…。
朝の何気ない言葉一つでも、湊の態度にはどこか引っかかる部分があって、今日はその気持ちが頭から離れなかった。