「……馬鹿な掃除屋に何を期待してるんです?」
暗い部屋に響く声。
喋っているのは、護井会の《灰階評議官(グレイ・コンシリエ)》の一人、ミルゼ・ラウト。
細長い指先でカップを持ち上げ、まるで“毒”でも啜るように紅茶を口に運ぶ。
「期待しているわけではない。ただ、見たいだけだ。井戸が“彼”をどう選ぶのかを。」
そう呟いたのは、対面に座る黒衣の老人。名をガラ・スーグ。
護井会の設立当初から関わる古株で、現在は《黒帯役(くろおびやく)》として、危険区域の隔離と情報統制を担当している。
「……まさか、“あの層”に送り込むつもりじゃないでしょうね?」
ミルゼが目を細める。
「“まさか”だよ。ただし……もし彼が、あの魔物を退けたのが偶然ではなかったとすれば――」
「――“起動する”ということですね。例の、“コードAQUA”が。」
二人の視線が、部屋の奥に鎮座する“冷却カプセル”に向けられる。
中には、半分腐敗した井戸機関のコアが眠っていた。
《イド=カタコンベ》建設当初の水制御ユニット――通称「神の蛇口」。
すでに機能は失われて久しいが、“再起動”の鍵となるのが、都市に一人だけ存在するとされる“親和性保持者”。
「まさか……あの男が?」
「さあね。だが、一度モップで魔物を吸い込んだ男が、どこまで井戸に触れられるか――」
「……見せてもらいましょう、“掃除伝説”の始まりを。」
二人はニヤリと笑った。
笑顔の裏にあるのは、希望ではなく実験。
そして、次の犠牲者を選ぶ冷たい手だった。
コメント
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続きめっちゃ楽しみです!!
今回も神ってましたぁぁぁぁぁぁあ!!!!! うわーお...なんだか不穏な空気...(?) でもあの子なら無事に魔物退治みたいなの(?)できると信じたいですわ! いや、信じよう!信じましょう!うん!!あの子ならね、きっとできるよ!多分(((ゑ 次回もめっっっさ楽しみぃぃぃ!!!