3.潔世一は恋している。
「おはよう、才能の原石共。今から3人組を作れ。期限は明後日の午後16時。レベルや部屋は関係ない、好きな奴と組め。」
朝7時頃、モニターに映る絵心の声で目が覚めた。
(…3人ね。蜂楽は多分俺と組んでくれるからあと1人…千切か國神が欲しい。)
俺が起き上がった際の振動か、同じく絵心の声か分からないが蜂楽も横で目を細めている。
「…おはよぉ、潔。」
「おはよう、食堂行こーぜ。取り敢えず着替えてくる。お前は髪も直さないとな。」
寝ているからあまり大したものではないと思っていたが蜂楽は今日に限ってすっと体を起こす。
「ん〜、お腹すいた。」
「ちょ、お前…それ…ww」
「何々??何が面白いの、潔。」
起き上がった蜂楽の髪はいつもの癖はもちろんあるが全体的に上に伸びている。
馬狼を見ている気分だ。
「待て動くな…w髪を揺らすなぁ!ww」
完全にツボにハマった俺を蜂楽は追い討ちをかけるように首を揺らしている。
「は〜…腹痛。お腹空いたのどっかいったし」
「俺は朝から運動してお腹空いたよ〜! 」
「運動って首振っただけだろ。」
「朝から頭動かすと気分悪いや」
食堂につくと人は居らず、今来たばかりの凛と目があった。
「凛!これから朝飯か?それなら一緒に…」
「食べたしもし今からだとしても一緒になんか食わねぇよ。水取りに来ただけ。」
相変わらず素っ気なくて口が悪いが今日はいつもの威圧感はなく大人しい。
「なんかお前、可愛いな。」
心の中の声が思わず口から出てしまった。
慌てて手で口を塞ぐが遅かったみたいだ。
「潔終わっちゃったね〜…笑」
苦笑いを浮かべる蜂楽に抱きついて「何とかしてよ!」と懇願する。
すると蜂楽は「凛ちゃん…?」と俺ではなく凛を見つめていた。
その不自然な蜂楽の表情の答えを確かめる為に恐る恐る凛の方を向く。
「…なんだよッ…」
「凛ちゃん、もしかして照れて…、、」
「うるせぇ…気持ち悪い。帰る…ッ。」
凛は右手で顔を覆うようにして耳まで真っ赤にしていた。
隠しきれていない左目は斜め下を向いており頑なにこちらを向こうとしない。
そのまま俺が何かを発する前に凛は水を取って食堂を出て行ってしまった。
「凛ちゃんの照れ顔とかレアじゃない?」
「…うん。多分二度と見れないかもな。」
「やっぱ潔、お前ら両思いってやつだよ!」
「両って何で俺が好きな定で話してんだよ 」
俺の言葉に蜂楽は不思議そうな顔をしたあとすぐに顰めっ面になった。
「めんどくさいな!好きなんでしょ?」
蜂楽はそういって俺に顔を近づけてくる。
「でもまだ結論は出せてなかっただろ?蜂楽も好きだし凛ももちろん好きだよ。」
「そのうち分かるよ、夜寝る前に凛ちゃんのこと考えちゃったり目で追ったり!」
「それは今も…だけど…。」
蜂楽は人差し指をこちらに向けて「それだよ!」と驚いたような大声をあげる。
「それだけで凛のこと好きだって分かんのか?」
「好きな人ってのはいつでも特別なんだよ!」
「俺って凛のこと好きなんだ…へぇ〜…」
「え、潔の想い人ってまさかの凛?」
深く言葉に出して凛が好きなんだと言う気持ちが確信に変わった瞬間後ろから玲王の声がした。
「…なんで居るんだよ…タイミングッ💢」
「完璧なタイミングだったね…笑」
流石の蜂楽も隠せずに困っている。
「どーする凪?やっぱお前の勘当たってたよ」
「いいね、攻略難しそうで楽しみ」
「待てお前らなんで協力する話になってんだよ?」
「潔、1人だったら無理だよ。あんなの。」
蜂楽の顔を見て何か言い返そうと頑張るもぐうの音も出ずに困る。
食堂で向かいに座ってゲームをしている凪の表情はたしかにいつもより明るかった。
玲王と蜂楽は真剣な顔つきで何かを話している。凛は頑固な性格だとかサッカーの話になるとワンチャンあるかもとか。
俺は2人の空気感に耐えきれず凪に顔を近づける。
「なぁ、凪。俺まだ分かんないよ?」
「なにが?」
「凛のこと好きなのか…いや、好きなんだけどその自信がないっていうか…」
上手く言葉がまとまらずあやふやな説明になってしまう。
するといつもの無表情のまま凪の口が開く。
「やってみればいいよ。違ったらやめればいいし、何事も挑戦的な。」
「お前そんなキャラだっけ?」
「キャラってめんどくさいね〜。」
「んなこと言われても違ったら申し訳ないだろ…いくら凛とはいえ大事だし。」
「そんなに悩むなら伝えてみたら?」
凪の突然の提案に横の2人が口を止めて急に目線が俺に向けられた。
「そうだよ、伝えなきゃ分かんないじゃん!」
「ナイス凪!!やっぱお前天才だよ!」
そういいながら蜂楽は俺に抱きつき、玲王は凪の頭を撫でる。
(部屋に帰りたい…笑)
なんだか凛を変な宗教に巻き込んだ気がした。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!