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◇
仕事に手がつかない。
もっと具体的に言うのならば、眠すぎて仕事に手がつかない。
「コンちゃーん…眠気を吹っ飛ばす薬とかないのー……」
ちょうど部屋にやって来たコンちゃんに無茶な質問をすると、さっきより幾分元気を取り戻したコンちゃんが困ったように笑った。
「えぇ〜?そんなの…あ!みっどぉのとこなら何かしら眠気に効くものがあるかもよ?」
それだ!みどりにあって元気もらって、眠気覚ましの薬があるかも聞いておいて…あ、資料も回収しに行かないと。
「ね、らっだぁ?」
「んー?なぁに、コンちゃん」
「みっどぉにいつ王様だよって言うの?」
んー?…俺は王様じゃないよ〜、と返事をうやむやにして部屋を出る。
コンちゃんのことだから、みどりの扱いに少なからず否定的な考えを持っているんだろうと思う。
俺はみどりがよくわかっていないことを良いことに、軟禁状態と変わらない生活を強制させている。
「…コンちゃんはアレを知らないからなぁ」
思い出すのは、ほんの少し昔のこと。
あの日、みどりが人間でも人外でもない事を知った。
いや、人間からすると人の通りを外れたものは同じように“人外”として括るのかもしれないけど、あれは人外じゃ無い。
「少なくとも、俺達と同じ括りでは無いんたよなぁ…」
だからこそ、対応を考えあぐねているのだ。
下手な事をすれば、大切な国民が死んでしまうほどの大事故を引き起こす可能性がある。
「はぁ…寝不足……」
コンコン
「失礼〜………みどり?」
いない……みどりが、いない…!?
部屋全体を見渡して、何事かを予測する。
ガラス窓の割れた薬品棚と、接続部分が歪んで大破している天窓。
部屋の中央に赤い液体…血液だ。
「…人狼……アイツか…!」
確かヤバめの薬を製造しているって噂のある国を調べてもらってたはずなんだけど…
アイツのことだ。
予想外事態に仲間の安全を優先して我が身を傷付ける結果になったに違いない。
「まったく…じゃあそろそろ“限界”が帰ってくるのか」
……って…そうじゃ無い!
みどりが狼状態のアイツを連れて何処かに行ったのか、はたまた狼状態でフラフラ歩くアイツの後を追いかけて行ったのか…
「外…何か起きる前に……」
あれほど己を悩ませていた眠気はもう少しも残らずに無くなっていた。
◇