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魔法の小瓶

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魔法の小瓶

5 - 第5話 「誰の言葉」

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2024年11月16日

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初めて見た街並みや、甘い匂いのする店に気を取られながらも何とか本邸にまでやって来れた。本邸は昔に一度だけ来たことがあるから、そこまで迷うことなく辿り着けた。


「王様ガイル、本邸……ン?本館、ダッケ…?」


どっちでもいいや、それよりもコンちゃんを探さないと…


「…あ!ぐっち、いた……!」


パタパタと足音が聞こえて振り返ると、ラダオクンと同じように赤いマフラーを巻いた焦茶の髪の男がいた。


「……」


ぐっち…?

あ…この犬の飼い主、かな……?


「天窓カラ…落チテキタ…」

「あ、そうなの?ごめんなさい、ありが…」


ありがとう、と言いかけてから、俺の背後…台車の上で力無く横たわる“ぐっち”こと犬を見て、男は言葉を無くしていた。


「医務室…コンチャン ノ所、連レテク…」

「ぼ、ぼくも、一緒に行く……!」

「…」


返事をしなかったのは、好きにすればいいと思ったから。

そもそも、この犬の飼い主は彼なのだから。


…天窓って屋根の上にあるものだよね。

……犬がどうやって屋根の上まで来たんだろ。


「あ、ぼくは焼きパンだよ、好きに呼んで」

「…………ミドリイロ」


渋々名前を教えると、焼きパンはまだ少し強張った顔でふにゃりと目尻を下げて笑った。


ペンギンみたいな人だなと思った。


コンコン


「コンチャン……犬、怪我シテル…」

「え!?みっど…ん?いぬ?」

「怪我……」

「あー……うん!今治療するね」


ここで待ってて、と別室に案内されて暇を弄んでいたらコンコンと扉がノックされた。


「……誰?」

「あ、こんにちは…えっと、お菓子を届けに来たんだ…!」


少し開けた扉の隙間から覗き見ると、相手は困ったように笑いながら、オドオドとした動きで手元のバスケットを少し持ち上げた。


「……ダカラ…誰?」

「あ!俺はレウクラウド…長いからレウでもいいよ!らっだぁの友達だよ!」


ラダオクンのお友達…?

あの人から大切な仲間がいるって話はよく聞くけど、友達がいるなんて話は聞いたことがない。


コレは…まさか……


「……不審者…?」

「なんで!?違う違う!」


大袈裟なリアクションが面白くて口元を抑えながらくすくす笑うと、レウさんが元から丸い瞳をさらに丸くして驚いていた。


「……ナニ?」

「いや…みどりくんって、笑ったら思ってたよりあどけないなぁ〜って……」

「…ハ?馬鹿ニシテンノカ!」


違うって〜!!とワタワタしだしたレウさんをまたケラケラと笑って見ていたら、部屋の窓からカンッと音がした。


「…?」

「あ…み、みどりくん?入るよ?」


バスケット片手に部屋に入って来たレウさんは部屋を見回して埃っぽくない?とぼやいている。


カン、カン


「アァ、モウ…誰ェ?」


さっきからうるさい窓に近付くと、突然バン!!と扉に誰かの手のひらが打ち付けられた。


「……!?」


慌てて後ずさると、今度はバンバンと激しく窓を叩き始めた。


「え!?え!?なになになに!?!?」

「レ、レウサッ…窓……!」


レウさんの後ろまで避難して窓を指さすと、ガチガチに固まっていたレウさんの体からスッと力が抜けた。


「レウサン…?」

「みどりくん、タンスの陰に隠れてて」

「…ウン」


少しだけ頭を出してレウさんの様子を確認する。

黒いパーカーの裏から短剣を取り出したレウさんは、極々自然な動作で窓を開けた。


「馬鹿めッ!!」


その瞬間飛び出してきた人影が突き出した針のような武器を最小限の動きで躱すと、短剣の柄の部分で相手を殴り昏倒させた。


「カッコイイ……」

「みどりくん大丈夫……って!顔出してたら隠れてた意味ないでしょ!?」

「ア……」


プンスカ怒るレウさんのお説教を聞きながらまた部屋を移動する。

襲撃があったからあの部屋は危ないと判断したらしい。


もう疲れたから元の部屋に帰ってもいいんだけどなぁ……


「はい、ここにいてね」

「レウサンハ?」

「俺はこの非常識なやつを……その、ア、アレコレしないといけないから」


それじゃあっ!と走って行ってしまったレウさんの背中を見送る。


そういえば、すっごい誤魔化された……!!

アレコレ……事情聴取とか、拷問かな?

あ、もしかしたら処刑かもしれない…


「…………フフッ、カワイソ〜………エッ!?」


パッと慌てて口を押さえる。

そんなこと思ってないし、こんな酷いこと言うつもりだってなかったのに。

自然と溢れた言葉に自分が少し怖くなった。


今の言葉は…誰の言葉……?



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