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えー…、っと、
事の始まりは、中国 軽慶市。 発光する赤子が生まれたというニュースだった。 以降、各地で超常は発見され
って、え? なに、長い? いらない? 知ってる?
あぁ、そう。 じゃあ、かるーい説明だけ。
総人口の約8割が何らかの超常能力”個性”を持ち、その”個性”によって社会を守る”ヒーロー”という存在が確立された世界。 これが、「媒架 例」、後に「 正しかった 間違い」 と呼ばれる少女が生まれ堕ちた世界。
「えー、お前らも3年ということで、本格的に将来を考えていく時期だ。 今から進路希望のプリントを配るが、皆…! 」
バッと効果音が聞こえる速さで先生が動く。
アリーナ席の子が個性を使って、手を岩にしたり、アホ毛を伸ばしたりするのが目に入る。
「大体、ヒーロー科志望だよねぇ!!!」
「はーーい!!!!」
先生が勢い良くプリントをばら撒く。
片付けが大変になるだけだろ、馬鹿だな。
クラスメイトが個性を出す。 隣の奴が光りだした。
個性使うなって校則があるだろ、つくづく馬鹿だな。
緑谷が小さく手を上げてるのが目に入る。 お前はもっとビシッとしろよ。 そういうなよなよした奴、嫌いなんだよ。
「うんうん、皆、いい個性だ!! でも、校内で個性発動は、原則禁止な?」
じゃあ注意しろよ。
「せんせー、みんなとか一緒くたにすんなよ! 俺はこんな没個性共と仲良く底辺なんざ行かねぇよ。」
足を机に乗っけるんじゃねぇ。 シンプルに汚れる。 テメェの足はそんなに清潔なんか? え? そんな場所で飯食ったら腹壊すわ。
なんて他人の一挙手一投足にイライラして文句つけてたら、かっちゃんこと爆豪勝己が雄英高校志望なんだのどうだのでクラスがざわざわし始めた。 うっせ。
「そのざわざわがモブたる所以だ」
口を閉じたと思ったら、足で反動をつけて机の上に飛び乗った。 内申響くぞ。
緑谷は…
あはは、頭抱えちゃってるよウケる。笑
「模試じゃA判定!! 俺はうち唯一の雄英圏内!!」
うっさ、自慢かよ。 そういうの、別に聞いたところで得がないから辞めてほしい。
はああ…こんなんじゃ気が滅入っちまうぜ。 退院して間もないんだ。 ちっとは休ませてくれてもいいだろ。 身体の傷は癒えたけど、心の傷が癒えてませんので…。 とか言って休ませてくれてもいいのにこんのくそやろー。
あーあー。 やめだやめ。 寝よう。 無駄なことに頭を働かせる必要がない。 朝学活は起きてる意味がない。 先生の話や調子に乗ったクラスメイトには価値がない。
そう思って机に伏せた瞬間。
「ぶはははは!!!!WWWWW」
クラスが沸いた。
「緑谷? 無理っしょ!!」
「勉強できるだけじゃヒーロー科は入れねえんだぞ!!」
あー雄英志望のこと、先生が話したんだと予想ができる。 そういうのやめてあげろよ。 先生知ってんだろ、爆豪が緑谷を虐めてんの。
ただでさえその事を無視してるんだから、火に油を注ぐ事くらいやめてあげりゃいいのに。
とかなんとか思いながら見てたら緑谷の机が爆破されて、本人は吹っ飛んだ。
おお、すげえ飛距離。笑
「こらデク!!
没個性どころか無個性のテメェが、何で俺と同じ土俵に立てるんだァ?!!」
「ま…ッ違う、!待って、かっちゃん!!
別に…張り合おうとか全然…!、本当だよ?!」
とかなんとか教室の中で喧嘩を始めた二人を遠目で見る。 雄英志望で、ヒーロー志望の人間とは思えないねェ? ばかだねェ? 喧嘩しちゃいけない、暴力をしちゃいけないなんて、ここまで教わってこなかったのかにゃ?
緑谷のぼそぼそと喋る声が聞こえる気もするが、そんな声よりも、
「雄英志望でいえば、媒架もだな!普通科だがな!!」
という先生の声が耳を貫いた。
「ア?」
は? 私? なんで? 気ぃ抜いてて変な声出ちゃったじゃん。
てかやめろって、爆豪がイラつく原因増やすな。 空気読めねえなこのせんせ…クソだくそ。
「テメェもか、こんの……焦げクズがァ!!!」
右手を大きく振りかぶって、私を爆破しようと突進してくる。
うぅん…。 避けられなくはないんだけど、かっちゃんは負けず嫌いだからなぁ…。
負けてた奴に越されるのは屈辱だろうからなぁ…
受けてあげよう♡
ドガァン!!!
「いったーい」
左腕で爆破を受けてあげた。
あぁ、優しいね今回のは。 場所が場所だからなのかな??
「無個性のテメェが……! 焦げクズが…!! 半端もんがァ…!!! なんなんだ?!!記念受験か?!!!」
両手でばかすかと小さな爆破を繰り返しながら、顔は伏せてる。 そのため顔はよく見えないけど体が震えてるね、そんなに怒ってるのかにゃ?? 何に対してだろうね?? 私が雄英受けるから?? それとも、私が爆破をわざと受け止めたと理解してるから??笑
爆豪はバッと顔を上げて、私と緑谷をキッと睨んでからこう言った。
「テメェら無個性が!! ヒーロー科にしろ、普通科にしろ、雄英に進学して、一体何がやれるってんだァ??!! あァん??!!」
「ひッ…!!」
うぅん、緑谷完全に萎縮してんなぁ…雑魚め。 あそこまで雑魚だと可哀想になってくるよねぇ。
…お、緑谷と目が合った。 私に助けを求めてるねぇ
ふふん、しょうがないなぁ。 緑谷が好きな私で助けてあげようじゃあないか。
ガタッと椅子から立ち上がり、私より少し大きいかっちゃんを見る。
うーん、言い切った顔してるね。 自分は正しいんだって、正当化しようとしてる顔だ。 とってもムカつくよ。
自分の道の障害物は徹底的に排除していくその姿勢、生まれ持った才能、個性。 うん、アンタは選ばれた人間だよね。 やっぱり。
「かっちゃん、その言葉遣いは良くないなぁ。 ヒーロー志望だとは思えない!!
それに、私達はただ、やりたい事を、自分の正しさを貫いているだけなんだ! 別に、かっちゃんが私達に干渉することはないんじゃないかな??」
「あァん??」
言い返せる言葉も見つからないってか? あァん?以外にうんとかすんとか言ってみろよ。 はは笑
「前から思ってたんだけどさァ…私達に突っかかって勝手にイライラしてんの、本当に無意味だと思うよ!! どうしたのさ、かっちゃん! 自分に不必要なものは切り捨ててきたじゃんか。 なんで? なんで私達にはずぅーっと関わり続けてんの??」
「…ッ!!」
あーあー、一歩引いたね。 自分でも理由がわからない範囲に私が踏み込んじゃったかな? 自分でも分かってること、思ってること、私に言われちゃったかな??
……あぁ。 違う。 違うよね??
「もしかして……私達の方がヒーロー向きだってこと、自覚してr
ドガァン!!!
「うっせェ!!!! 黙れや!!!!」
また爆破してきた。 右の大振り。 さっきと変わんないねぇ。 イライラすると行動パターンが一緒だねぇ。 ま、避けてあげなぁい♡
「いったぁい、、」
二度の爆破によって同じ所に傷を作ってあげた。 火傷で赤くなっている左腕を抑えて、自分の顔をしかめさせる。 そうすれば…
「グ、……」
うんうん。 そうだよね、そうなるよね♡ ヒーローを目指すたる者、ヴィランでもない人間に手を上げて怪我させるなんてね?? あるまじき行為だよね。 まさにヒーローになるための受験を控えてるのにね??
「れ、例ちゃん!! 大丈夫??!」
緑谷が立ち上がって、私の横まで駆けてくる。 ひょろひょろしてんなぁ…。 頼りないなぁ…。 情けないなぁ……。
無個性でもヒーローになりたいんなら、体鍛えるくらいすればいいのになぁ……。 馬鹿だなぁ……。
自分で最初から諦めてるんじゃんね。 自分は無個性だからヒーローになれない。 ヒーローは無個性じゃなれない。 ってさ。 全部無個性っていうのを理由にして逃げてるだけじゃんね。
私だって無個性でもヒーローになりたくて努力してるのに。 ほんと、頭の中空っぽだね。
「…うん、大丈夫だよ、ありがと出久。」
はい、にこっと笑ってあげる。
緑谷の憧れの、理想のヒーロー像で居てあげる。
「馴れ合いしてんじゃねぇ!! 失せろ!!」
今度は緑谷に向けて左手で爆破しようと振りかぶった。
また緑谷を庇うように左腕で爆破を受けてあげる。 緑谷がぎゅっと目を瞑ってんのが見える。 はは、ださ。
ドガァン
「…? ッ! 例ちゃん!!!」
「っテメェ!!」
「…いたーい」
「媒架!!」
「例!!」
「れーちゃん!!!」
今の今まで横で事の顛末をお客さんとして見ていたクラスメイトが私を囲むようにかけてくる。
うーん。 いいね、この感覚!! みんな、私のこと「身近な良きヒーロー像」として見てくれてるでしょ? そうでなくても、「友達を庇うカッコいい人」に見えてるでしょ? 「無個性でも、最もヒーローに近しい人」に見えてるんでしょ!! この先、絶対に忘れられないでしょ???!!!
あぁ、笑っちゃ駄目だ。♡ 口角を上げちゃ駄目だ。♡ 痛みに顔を歪めてないと駄目だ!!♡ 駄目なのに……。 ん、ふふ、笑。 無理だ!!♡♡♡
表情の管理が無理だと思ったから下を向き、左腕を抱えるようにすると、皆が更に近寄って、背中に手を置くなり、擦るなり、保健室へ行こうと手を引いてくれたりした。
危ない危ない。 これで皆には顔が見えない。 今見られたらせっかくの印象操作がぶっ壊れだ。 「痛みで喜ぶ子」って変な子だったで終わっちゃうからね。 そんなこと、私が許すわけないよね。
んふふ♡
みーんな、私のこと、忘れないでね♡♡♡
教室を出ていくときにかっちゃんを横目で見た。
「くッ……」
はは、いいね。 爆豪。 その歪んだ顔。 好きだよ。