side大森
最近、涼ちゃんが何かに怯えている感じがする。やけに挙動不審だし、外に出る時なんて意味わからないほど厚着をして、ニット帽に髪を隠してマスクにサングラスだ。めんどくさがり屋の涼ちゃんがこんなに変装をする事は今まで無かったから、周りの皆もビックリしていたが、その反応に涼ちゃんは寒いだけだから、と笑って誤魔化す。絶対に何かあるよな。今日もまた、さっき言ったような格好の涼ちゃんが車に乗り込んできた。
そういえば、最近の涼ちゃんは車に乗り込む前、凄く険しい顔で車に向かってくる。いつもならへにゃへにゃの笑顔で手を振ってくるのに、最近はやっぱり何かが変だ。
しかも、涼ちゃんは1人で我慢したり、何かを溜め込むことが多いから心配だ。涼ちゃんに何があったか聞こうとしても大丈夫、大丈夫だから、と促してはキーボードの練習に戻っていく。やっぱり心配すぎる。
俺は前からよく涼ちゃんにボディタッチなどベタベタする事が多いから分かるが、前までぽよっとしていた腹が2週間前くらいから筋肉もない細々しい腹になっていた。単なるダイエットだと思ったが、最近になっては顔がやつれてきている。…何回も言うけど心配だ。多分、俺だけじゃないはず。若井も、周りのマネージャーやスタッフも思っているはず、涼ちゃんの変化に。
だから、今日聞いてみることにする。
直接本人に
レコーディングが終え、そろそろ帰る頃に俺が座っていた隣に涼ちゃんが腰を掛けた。
よし、今だ。
「…涼ちゃん、聞きたいことがあるんだけど」
「ん、?どうしたの?」
涼ちゃんが俺の顔を覗いて涼ちゃん特有の作り笑いを作る。作ってるのバレてるよ。
「最近さ、やつれてきてない…?いや、ダイエットとかだったら申し訳ないけど無理して欲しくな… 」
「大丈夫、ダイエットだよ!!」
また否定された。流石にもうちゃんと聞いて欲しいと思って俺は涼ちゃんの肩を掴み、俺と目が合うように座り直させる。
「ダイエットじゃないでしょ。正直にちゃんと言って欲しい。俺は涼ちゃんに信頼されてないの?なんか言ったら俺が涼ちゃんから離れてくとでも?とりあえず、涼ちゃんが話すまで俺とここに居てもらうから。絶対離さないから」
「ッ…」
涼ちゃんは下唇を噛み締めて涙目にさせながら俺にこう言った。
「もとき….、」
今すぐにでも消え入りそうなくらいの声で俺の名前を呼んだ。俺がなに?と優しく問いかけると、涼ちゃんは俺に抱きついて話した。
「おれ、、しぬかもッ…」
「は?」
突然の事に頭が追いついていけない。
どういう事?涼ちゃんが死ぬって。
とりあえず事情を聞くために泣いた涼ちゃんをひっぺがして近くにあったティッシュで涙を拭き取る。数分後、涼ちゃんの嗚咽が収まったあと、涼ちゃんがすぅっと息を吸って話し始めた。
「殺害予告が…来てて、住所もバレてて…ッ、」
「うん」
また泣きそうになる涼ちゃんを俺は力強く抱き締めた。というか、涼ちゃんに殺害予告とか神経どうなってるんだろうか。
「それッ、で…ッ、怖くて..ッ、外に出るのも怖くッ..て、!」
「ありがとう、もう大丈夫だよ
がんばったよ。もう俺達がいるからね」
優しく頭を撫でて、背中をトントンと叩く。
このことは若井にも伝えると涼ちゃんに言ってギターの練習をしていた若井に涼ちゃんが言ってた事を話した。
「は?どういうこと?」
「そういうこと。」
若井がギターを放り投げる勢いで椅子に置いて、涼ちゃんがいる部屋に全力疾走して行った。…楽器は大切にしろ。
そのまま俺も若井の後をついていくと、ソファの端で蹲っている涼ちゃんが居た。
若井は涼ちゃんの隣に腰をかけて、無言で涼ちゃんの背中を摩った。
涼ちゃんは無言で蹲っていた
さっき涼ちゃんが言った言をスタッフやマネージャーに言うと、皆顔を青くして声にならない叫びを出していた。
家の前で犯人が待ち伏せしていても嫌だから俺の家に泊まって、と言っても涼ちゃんは迷惑だから…と遠慮している。いやいや、部屋とか家とかどーでもいい。涼ちゃんが最優先。若井と俺が念を押しても頑なに来ようとしないので、じゃあせめて部屋の中まで送っていく、と言うとそれならまぁ、と言って車に乗り込んだ。
涼ちゃんのマンションに着いた。
若井と俺が車を先に降りて、涼ちゃんをエスコートする。そんなにしなくても、と涼ちゃんがふふっと笑った。そういえば、涼ちゃんの素の笑顔は久しぶりに見た。やっぱり涼ちゃんは素で笑っている方が100倍可愛いし美しい。そんなことを思っている内にエレベーターは涼ちゃんの部屋がある階を指していて、目の前にズラっと並んだ部屋のドアが目に入る。
…涼ちゃんの部屋の前に怪しい人物がいる。
若井に話すと、本当だ、と驚いたように小言を言った。涼ちゃんが危ないから、と俺と若井が前を歩いて、涼ちゃんの盾になる。
そのままゆっくり歩いて涼ちゃんの部屋の前で立っている人物がこちらを向いた。男だ
俺と若井は一瞬止まったが、涼ちゃんを守る一心で俺は声をかけた。
「…何か御用が?」
男はビクッとして慌ただしく話そうとしている。それを見る間もなく若井が話し出した。
「ここ、貴方の部屋じゃないですよね?」
若井は怒り混じりの声でその立っている人に近づいた。流石に刃物を持っていたらやばいから、俺は若井の肩を押さえて引き戻した。
なんだよ、と言わんばかりの若井の顔にまだダメ、みたいなアイコンタクトを送るとムスッとした顔でまた話し続けた。
「何も答えてなかったら意味無いんですよ、なんでここに居るのか、誰に用なのか言ってもらわないと…」
「…」
「黙ってちゃ、、」
突然走り出してくる男の右手にはナイフ。
そのまま若井の肩を掴んで、若井を吹っ飛ばした。
「い…っ、」
若井が壁に強く衝突して、 痛そうに蹲っているが、今はそんな事じゃない。涼ちゃんの方に向かっている男を止めなければ。涼ちゃんは結構後ろの方で歩いていたから、足の速さ的には止めれる。早く行かないと。俺は全力疾走で涼ちゃんのところに走っていった。涼ちゃんは怯えて後退りすることしか出来てなくて、多分体が動かないんだろう。だから、早く__
涼ちゃんの前に覆いかぶさったと同時に、腰からグサッと音がした。
男が俺の腰に刺さったナイフをさらにグリッと押し込んでは引っこ抜いてナイフを放り投げた。白い長袖に赤い血がどんどん滲んでいく。俺はその場に倒れ込んで、腰を抑えた。
男はハッとした顔をして、蹲った俺を踏みつけて涼ちゃんを押し飛ばしてエレベーターに駆け込んだ。
「もときッ!!」
涼ちゃんと若井が俺の方に駆けつけてきて、若井は救急車を呼んで、涼ちゃんは俺の応急処置しようとしてくれている。
涼ちゃんは来ていたジャンバーを脱ぎ捨ててその中に着ていた長袖を脱いで引きちぎった。俺がえ、と声を出すと喋らないで、と泣きそうな声で俺に言った。
その引きちぎった長袖の一部を俺の腰に強く巻きつけた。
目を覚ますと、薬の匂いがする白い部屋に居た。病院?
横を向くと、俺の名前を呼んで泣いている涼ちゃんと、走って病室を抜け出す若井が居た。
しばらくすると、医者らしき人が目を覚ましたんですね、と落ち着いた声で言った。
「えっ…と、はい」
しどもどろに俺が答えると、涼ちゃんが
「1週間目覚まさなかったんだよ、ごめんね….俺のせいで…….」
「涼ちゃんのせいじゃないよ」
涼ちゃんの頬を撫でると若井も意識があって良かったとホッとしていた。
しばらくはMrs. GREEN APPLE休止かな、と俺がボソッと言うとそうだねと涼ちゃんが頷いた。
改めてごめん、と涼ちゃんが俺を力強く抱き締めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
思いついて勢いで書いてあるので色々とゴチャゴチャかもしれません。すみません
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!