関西の方にある保科家に鳴海と保科は来ていた。付き合っていることを一応言っておいた方が良いということで、挨拶をしに来たのだ。
「せや、うちの家族みんな保科やから名前で呼んでな?」
「///わかった、宗四郎」
「ふふ、かわええなぁ」
じゃれあいながら歩く。鳴海の手には羊羹を詰め合わせた箱菓子。宗四郎と鳴海で選んだもの。どうせ渡すことになるけど、2人で選んだだけであげるものにも特別な感情を抱いてしまう。2人とも重症だな、と微笑む。
「着いたで、ここや」
目の前には大きなお屋敷。さすが保科家、これではまるで文化財とかになっているだろうと鳴海は考える。
「さ、中に入りましょ」
「お、お邪魔、、、します」
門をくぐった先には、武士が通りそうな道。鳴海は初めてそのような道を歩く。少し歩いてついた玄関の中は鳴海の今住んでいるマンションの部屋くらいの大きさだった。
そして、家に上がりまず両親へ挨拶に行こうとしたが生憎両親は出掛けてたらしいので、そのまま保科の部屋へと直行した。
部屋に着くまでに数人の召使いにあった。懐かしい顔を見て少し談笑し、また進む。これを数回繰り返しやっと保科の部屋に辿り着く。扉の向こうにはまるで旅館のような作りをした上品な部屋が広がっていた。保科は懐かしむように部屋に入る。
「なんだっけこれ、書院造?」
「せや」
「違棚もあるなんて、、、」
「まあ、古くからある家やもん」
「緊張してきた」
「なんでやねん」
だって、、、と不安になっている鳴海を保科は抱きしめる。
「大丈夫や、受け入れてくれんくても僕たちはずっと一緒や、約束したやろ?」
「、、、うん」
そして、軽くリップ音をたててキスをかわす。
「とりあえず、座敷行こか」
鳴海の手を握り連れて行く。
「待っとってな、お茶持ってくる」
そういって保科は台所へと向かった。それにしても一つ一つの部屋が大きすぎる。狭いところが好きな自分にとっては落ち着かない。今回は明るい印象づけのためにゲームを置いてきたから気を紛らすものがない。仕方ないから保科から借りた本を読むか。確か内容はある1人の特攻隊員の話。死ぬと決まっている人生をどのような気持ちで生きるかが鮮明に書かれていて、常日頃戦っている自分にとって勉強になるんやと保科が言ってたっけ。
本を開いて文を読み始めたと同時に勢いよく座敷の襖が開けられる。あまりのことにびっくりして鳴海は本を投げ出す。
「あの靴があるってことは宗四郎帰ったんやろ〜!!??どこや?!」
襖を勢いよく開けたのは第六部隊隊長で保科の兄、保科宗一郎。会議でたまに顔を合わせるがいけすかないやつで正直嫌い。
「ってなんで鳴海がおんねん!!!!!!」
「ドーモ」
適当に返す。めんどくさいから。
「待ってもしかして宗四郎が連れてきたんか?!犬猿の仲ちゃうんか?!仲ええんかそんな?!」
あれ、こいつこんなうるさかったっけと鳴海は耳を塞ぎそうになる。
そこへ宗四郎がやってくる。
「げっ、兄貴、、、」
宗四郎の姿を見た瞬間宗一郎は辺り一面に花が咲き誇りそうなほどの笑顔を見せた。
「宗四郎〜〜〜!!!久しぶりやな!元気しとった?!」
お茶を持った宗四郎に駆け寄る宗一郎を難なくかわし、お茶をちゃぶ台に置いて鳴海の隣に座る。温度差とはこのことだ。
「はぁ?!ちょっ無視すんなや!!てゆうか!!!!なんで鳴海がおんねん?!」
「まあ、いろいろあってな」
と宗四郎は冷たく喋る。
「聞きたいか?」と言いながら鳴海は勝ち誇った笑みを宗一郎に見せる。
「詳しく聞かせろ」
宗一郎は先ほどとは違う獲物を狙う目で鳴海を睨んだ。
「、、、だからボクたちは付き合っているんだ」
宗四郎は兄と話したくなさそうだから代わって鳴海が説明をする。なるべく相手を怒らせないように言葉を慎重に選びつつ、はっきりと伝える。
「ほ〜〜ん。つまり、俺の弟に手、出したってことはそれなりの覚悟あるんやろな??」
そういってどこから取り出したのか木刀を手に持つ。あれ、これ死んだ?と鳴海は座ったまま半歩下がる。
「待て待て!!!確かに手を出したし挿れもした!けれど同意の上だ!!」
ピキッと宗一郎のこめかみに筋が入る。
「鳴海、、、あんたのこと討ち取ったるわ!!!!!」
宗一郎は立ち上がり鳴海に木刀を振り下ろす。間一髪のところで鳴海は回避する。
そして宗四郎を担いで逃げる。それに宗一郎は木刀を持ちながら着いてくる。
「オイ待てや鳴海ゴラァア!!宗四郎を誘拐すな!!!」
「こっちに来るな!」
「鳴海さん、降ろして」
とても日本を守っている上位層の人達とは思えないこの低レベルなおにごっこ。
走っているうちになんと行き止まりに辿り着いてしまった。鳴海は腰が抜け、宗四郎に抱きつく。
「歯ぁ食いしばりや??」
木刀を振り上げたその時、
「やめんか、馬鹿者」
宗一郎の頭に竹刀が降ってくる。
「おとん!!」
おとん?!それはそれでマズイ。こころの準備が、、、
「いったぁ!おとんは宗四郎が手出されてもええんか?」
「別に宗四郎が幸せならええやろこのブラコン」
「はぁ?ブラコンで何が悪いねん!!」
「おとん、久しぶり」
「あぁ、宗四郎。あと鳴海くん初めまして」
急に呼ばれてつい正座をしてしまう。
「あ、初めてまして!!鳴海弦と申します」
「宗四郎から話は聞いているよ」
「さようですか」
おとんは普通の人だった。よかった。
「鳴海くん、うちの宗四郎を幸せにできるんか??」
「はい!絶対幸せにして見せます」
「捨てたら保科家を敵にまわすと思っとき」
いや、全然みんなおかしかった。
「、、、はい、、、」
その後、鳴海は兄とも犬猿の仲になった。
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