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!Attention!
・🥞が吸血鬼 (🎈も)
・☕が傷つく表現
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「それじゃあ勉強を始めるぞ」
ある夏の休日。WEEKEND GARAGEに集まる俺たちは練習…ではなく、勉強をしていた。定期テストが近くなると、練習の時間の前に勉強する。
「うぅ~……こはねぇ…」
「な、なぁ、今からでも歌の練習に…」
「だめだ。今日の分の勉強が終わるまで練習はしない」
「「えぇ~!?/はぁ!?」」
2人は嫌な顔をしたが、補習で練習時間がなくなるのは嫌なので、我慢してもらう。
「み、みんなで頑張ろうね!」
「これが終わったら練習…これが終わったら練習……。くそ、冬弥、数学の範囲ってどこからだ?」
「あぁ、教科書の……いた、」
教科書を開いたせいか、神が人差し指の腹をかすった。
「青柳くん大丈夫!?」
「あぁ、少し切れただけだ。白石、すまないが絆創膏もらってもいいか?」
「全然OKだよ!今持ってくる!」
静かだなと彰人の方を見ると口元を手で覆いながら指を凝視していた。
「彰人?どこか体調が悪いのか?」
「! いや、なんでもねぇよ」
俺が声をかけるとそっぽを向いた。
この違和感はきっと勘違いではないはずだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
オレは吸血鬼だ。
冬弥がケガをした時、いい匂いがした。まるでいつも食べているパンケーキみたいな。
(うまそう…)
食べてみたい。そう思った。面と向かって言うことも考えた。でも、それだと一線を越えるような気がして言い出せなかった。
(このままだと歌に支障がでる……どうすっかな…)
そんなことを考えていた時、後ろからあまり好ましくない人の声が聞こえた。
「おや?東雲くんじゃないか」
「げっ」
「今日は一人なのかい?」
「あー……まあ…」
今日は図書委員で冬弥はいない。
(ここから去りてぇ……)
これは絶対誘われるだろうな、と思う。しかしこの変人ツーとご飯を共にするのは気がひける。
「じゃあご一緒してもいいかい?」
「は???」
「ありがとう。今日は天気もいいし屋上で食べようじゃないか!」
「いやオレ許可してねぇんですけど!?」
いやいや屋上にいき、ため息をつきながら購買で買ったパンを食べようとするが、センパイの言葉によってそれは不可能になってしまった。
「君は吸血鬼なんだろう?」
は、なんで。
なんでわかったんだ。
「僕も同じなんだ。だから放っておけなくてね」
「あー…そうなんすね。初耳です」
「聞く気あるかい?」
「いえ全く」
「…💧。まあ、それは置いておいて。君は血をもらってないのかい?君が大好きで大好きでたまらない青柳くんに」
「んぐッ、ゲホッゴホッ…。…言い方に語弊がありますけどもらってませんね 💢」
語弊があると言ったが、実際オレは冬弥のことが大好きだ(恋愛的な意味で)。まさかこの人にバレていたとは。
「そうかい、早めに青柳くんに相談した方がいい。君もわかってるとは思うけど、僕たち吸血鬼は血を飲まないと寿命が縮むからね」
「冬弥の血を飲むなんて……そんなことできませんよ…」
大切な相棒で、好きな人の血を飲む。匂いだけでもキツかったのに、飲んだら一体どうなるのだろうか。そう思うと血をもらう気にはなれなかった。
「でも身近に頼めるのは青柳くんしかいないのだろう?それに、早めに解決しなければ歌えなくなってしまう」
「….っ…。……センパイはどうしてるんすか」
歌、と言われると反論ができなくなった。すべて図星だった。だから慌てて、センパイのことを聞いた。
「司くんから週一で血をもらっているよ。僕も話すのはためらったけどね。ショーを続けていたいから、とすぐに相談したね」
「そうなんすか…。…相談するようにはしてみます」
「解決したら教えて欲しいな」
「はい。…ありがとうございます」
「礼には及ばないよ」
神代センパイは意外といいセンパイなのかもしれない。……多分。
相談すると決めたものの、なかなか機会を作れず、1ヶ月が経った。今日はB組との合同体育で、サッカーだった。丁度出ていた試合が終わったので、一息つこうとした時。
「弟くーん!!いる!?」
「なんだよ暁山」
暁山が急いだ様子で走ってきた。
「あのさ、冬弥くんが転んでケガしちゃって。大丈夫だって言ってたんだけど、結構手を擦りむいちゃっててさ。保健室行くのに弟くんに付き添ってもらえないかな!?」
「っ…!…お前が行けばいいだろ」
(ケガをしてる冬弥に近づくのはまずい…!)
「ボク次出るんだよ!!とりあえず頼んだよ!あ、休憩所のところにいるから!」
「あ、おい!……って、行ったか…」
休憩所の方に目を向ければ、冬弥が大人しく座っていた。冬弥を呼び、保健室に向かう。
「付き添ってもらってすまない」
「気にすんな。それより大丈夫か?」
「あぁ」
「ついたぞ。後は1人でも平気か?」
「平気だ…といいたいところなんだが、片手では難しくて…。手当てしてもらえないだろうか」
「お、おう」
(クソッ、甘い匂いが…。耐えろオレ…。)
そう手当てするために傷口に近づいたその瞬間、匂いが強くなり、目の前が真っ暗になった。
あ、やばい、これ、むりだ
「……、…」
オレは無意識に傷口を舐めていた。
「っ、彰人、?どうしたんだ?傷口なんか舐めて…」
「…」
冬弥が何て言っているのかわからなかった。ただ口の中で広がる甘味を味わっていた。
「あき、彰人!!!」
「!!」
あれ、オレ、今…。
「……わりぃ、もう行くわ」
「え?あ、彰人!?」
怖い。それだけが頭の中に残る。舐めていた時、完全に無意識だった。まるで自我を忘れたような。このままだと冬弥を襲いかねない。
(こんなんで相談なんてできるわけねぇだろ……。)
その日からオレは冬弥を遠ざけるようになった。
『明日の3時にセカイに来てくれ』
遠ざけるようになってから数日がたったある日ある夜、冬弥から連絡が来た。
(話すしかねぇのか…)
彼にはもう、遠ざけてることがバレているのかもしれない。
次の日、セカイに行くと、冬弥がいた。
「悪い、遅くなった」
「いや、いい。…単刀直入に聞くが、何故俺を避けるようになったんだ?」
(やっぱり聞かれたか…)
もうこれは、腹を括るしかない。
「ずっと隠してて悪かった。オレは吸血鬼ってやつで、今まで血を飲まないでやってきた。だけどお前が教科書で指を切ったとき、すげぇいい匂いがして…食いたいなんて思ったこともあった。お前に相談できなくて、ずっと逃げてた」
「…それは、俺に本気で向き合っていないということか?」
「…そう、かもしれねぇ。いや、そうだな」
カッターを取り出した冬弥は、そのまま自分の腕を切った。白い腕に紅い花が咲く。
「…っ、」
「お前ッ!何してんだよ!!」
慌てて腕を掴むと前よりも匂いが濃くて酔いそうになった。
「俺はこれぐらい本気だ!!!」
セカイの路地裏にテノールが響く。
「神代先輩から聞いた。親しい人から血をもらわないと長く歌うことができないと…!俺は彰人と歌えなくなるのが嫌なんだ!一緒に歌えるのなら……一緒にいれるのなら…血を吸われても構わない!!」
「と、うや」
あのマッドサイエンティスト…!と一瞬思ったが今はどうでもいい。ここまで言われたのなら、もう正直になるしかない。
「……血、飲んでもいいか。」
「、あぁ」
やっとか、と言うように彼は微笑む。オレは冬弥の腕を掴み。傷口を舐めた。
「その…どうだ?」
「すげー甘い」
「そ、そうか…」
満足し、口を話して冬弥の目を真っ直ぐに見つめる。
「冬弥、好きだ」
「え?」
「お前は?」
「お、おれもすきだ……//」
冬弥は照れたのか、口元を隠しながら小さく呟いた。
「ふっ、かわいーやつw」
「~~ーーっ!!」
「悪かったって」
耳まで赤くなった顔で睨まれた。かわいい。
「ほら、手当てするためにMEIKOさんとこ行くぞ」
「あ、あぁ」
幸い傷はそこまで深くなく、数日で消えた。
そしてオレたちは相棒兼恋人になったのだ。
それからオレは、一週間に一回は血をもらうようにした。悩みが解決したからなのか調子がよく、冬弥を遠ざけることもなくなった。
逆に距離が近くなったので、クラスメイトには散々からかわれている。
その度にマウントをとるけどな。
こいつ___冬弥はオレの獲物だ、って。
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