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陽介と立ち話をしていたせいで服が汗でベトベトになっていた。今すぐ帰って風呂に入りたいところだが、母親の命令には正直逆らえない。あとでお使い以上の額を請求しよう。
歩いて近くのスーパーに向かう。ここからすぐ近くだ。俺は暑さを我慢してスーパーに向かった。
歩いて数分。少しボロイスーパーに着く。このスーパーは町のみんなが通う場所だ。正直生命線と言っても過言ではない。しかも安いと来た。主婦は近くて安いからみんな来る。
スーパーに入ると冷たい空気が俺の身体を包み込む。しっかりと冷房が効いている。汗をかいているせいで寒いくらいだ。母親から送られたメールに目を通す。食材とか大量に買って来いと言われるかと思ったが、メールに書かれていたのは調味料ばかりだった。
(そういえば昼食ってなかったな)
時間は十二時。昼飯を食べずに来たからおなかがすいてきた。さっさと買い物を済ませて早く帰ろう。
カートは使わずカゴを持って調味料売り場を回る。必要なものをカゴに放り込んでいく。必要なものは少ないしすぐに見つかったから買い物はすぐに終わりそうだ。
「裕也?」
その時後ろから俺の名前を誰かが呼んだ。どこかで聞き覚えがある声。俺は反射的に後ろを向いた。
「瑞樹! お前瑞樹か!」
「ああ! 久しぶりだな裕也!」
中学の時から容姿が変わってなかったからすぐにわかった。整った容姿に特徴的な長い黒髪。小学中学ともに成績はトップ。噂に聞く完璧超人の天野瑞樹だ。
「いつ帰ってきてたんだ? みんな寂しがってたんだぞ!」
「ついさっきだよ。母さんにお使い頼まれてここまで来たんだ」
「奇遇だな。私も一緒だ。今日は夕飯の買い出しに来たんだ」
「お前料理も出来たもんな。中学の時の家庭科で作った料理がめっちゃ美味かったの覚えてるぜ」
「昔の話だろ。恥ずかしいからやめろよ」
そう言って俺たちは他愛のない話をする。こいつと話すのも一年ぶり。瑞樹と俺とでは住む世界がまるで違う。中学の奴らは俺たちが仲が良いのをみんなが疑問に思っていた。しかし俺たちの仲のいいメンバーの中で最初に知り合ったのは俺と瑞樹なのだ。俺とこいつは最古の幼馴染だ。
「でも本当に久しぶりだな。一年近く会ってないもんな」
「ああ。まあ一年じゃあんまり変わらないってことが証明されたわけだが」
「それもそうだ。そういえばお前どこの高校行ったんだよ」
「T高校だ。言ってなかったっけ?」
「T高! めちゃくちゃ偏差値高いとこじゃねぇか! さすが元生徒会長」
「やめろよその言い方。そのいじりしてくるのお前らだけだぞ」
「本当に懐かしいな。そういえばほかの奴らはどうしてるんだ? みんな元気なんだろ?」
話の流れでふと疑問に思ってさっき陽介に聞いたことと同じことを聞いてみる。さっきの陽介の反応はかなりおかしかった。仲間の話をしているだけなのにだ。瑞樹ならもしかしたらまともな反応が返ってくるかもしれない。少し期待をした。しかし俺の予想は簡単に覆された。だんだん青ざめる顔。すぐに俺から視線をそらした彼女は口早に言い放った。
「さ、さあ。元気なんじゃないか?」
「なんか様子がおかしいぞ。陽介もそうだったけど……。何かあったのか?」
「な、なにもあるわけないだろ! そうだ! 私買い物の途中だった。また今度話そうな」
そういって瑞樹は小走りに俺から離れていった。
「お、おい!」
声をかけても止まる気配はない。逃げるように彼女は俺の視界から姿を消した。