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今日は疲れていて、家に帰っても何をする気にも慣れなかった。
服だけ着替えて、ぽすんとベッドの上に横になった。
…探偵社にずっと居ても何も出来ないし、家に居ても辛くなるし。
ほんと、
敦「嫌になっちゃうよ」
死にたい。
…死にたい?
嫌、死にたくないから苦しいんだ。
でも、苦しいのも嫌だよ。
敦「…院長せんせ、僕、どうしたらいい?」
最悪な人なのに、どうしてもまたあの人の温もりを、愛情を知りたいと思う僕が居る。
貴方はどうして、死んでしまったんですか。
未だ苦しみの中で藻掻く僕を置いて、答えなんて自ら提示せず、どうして消えてしまったんですか…?
僕を苦しめた理由を、それでも愛してくれていた理由を、…教えてくださいよ。
自分を助けるためにした、“あの行為”のせいで、より一層あの人の事を考えてしまうようになった。
止めたい、でも辞められない。
大嫌い、でも、嫌いになれない。
そんな矛盾に脳みそが押しつぶされるような気持ち。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
敦「う、ぁ……ッ、おえっ」
口からは当分何も食べてなかったため、胃液しか出てこない。
喉が焼けるように痛い。鼻をつく酸っぱい匂い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
……、お願い、誰か…助けて
敦「…助けてよ…」
敦「…、だざい、さん」
?「、…呼んだ?」
そこにはさっきまで無意識に名前を口に出していた恩師がいた。
切羽詰まっていたせいでドアが開いた音にも気づかなかったのか…、
敦「…、だざ、いさん、……」
喉はさっき吐いたせいでかすれた声しか出せない。
太「苦しいね、…いいよ、吐いて」
太宰さんがベッドに座っている僕の横に来て背中をさすってくれる。
その優しさのせいか涙ながら嘔吐することしか出来ない、
喉から声もなく胃液が流れてくる。見ないで欲しいのに、太宰さんが優しく背中をさすってくれるので心を少しづつ落ち着かせることが出来た。
敦「はぁ、っ、はぁ」
ゆっくりと息を整えて太宰さんに向き直る。
敦「…、太宰…さん、ごめんなさい」
太「どうして謝るの」
敦「…汚いものを見せてしまって。」
太「…汚くなんかないよ、其れは敦くんが苦しんだ証拠じゃないか。むしろ私は美しいと思うよ」
敦「…、太宰さんはおかしな事を言いますね」
敦「…何故僕の跡をつけてきたんですか」
太「……跡をつけた訳じゃないよ。盗聴器だ。」
そう言われて自身のポケットを探すと小さな盗聴器が入っていた。
なるほど、と納得するもそれにも疑問が浮かぶ。
すると、その問に答えるように太宰さんが声を出した。
太「…院長先生が死んでから、敦くんの様子がおかしいとは思ってたけど、今日は特に切羽詰まってたからね。単純に心配しただけだよ」
…心配の仕方が可笑しいんですよ、と普段なら返していたけれど、今は少しだけ嬉しくて、そうですか、としか返せなかった。
…切羽詰まっていた理由までは勘づかれなかった用で心からほっとする。
太「まだ、敦くんから暗い過去は消えないかい?」
その質問には答えられず視線を下に落とした。
…消える…?あの過去が僕の全てなんだ。消えることなんてありえない。寧ろ今の僕を侵食し始めている。
太「院長先生が、それ程憎いかい?」
…憎いです。でも、憎めないから、辛いんですよ。僕の父親はあの人だけだから、あの行為に愛情があるのを確かめたくて、仕方ないんです。でも、あの人はもう、死んでしまったから、確かめる術なんてないんです。
それがどうしようもなく苦しい。
あの人が死んで、嬉しいのに、悲しい。
また、矛盾。
気持ち、悪い。
また逆流してくる胃液を次は必死に抑えて、それでも苦しいのは変わらないから生理的な涙だけがポたりと床に落ちた。
太「…ごめんね、今の君に昔の話をするのはよそうか。」
頭をくしゃりと撫でられてまた下を向いてしまった。
…こんな風に僕は一生前を向けないんだろうな。