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彼はとても良い人だった。付き合っている間、色々な話しをした。常に重い物を持ってくれるというタイプだった。

彼女が自分の異変に気が付いたのは、結婚する少し前だ。「この人は確かに良い人だ。でもこれから先、彼がキレた時に手に負えなくなった時にどうすれば良いんだろう?」彼は常時、自分の行動は正しいと思っている。故に考えの違う人間を受け入れない。少し意見を言っただけで、部屋中、泥棒が入った様に荒らされる。しかし翌日には収まっている。しかし誰かに相談をしてみたところで、当事者では無いので「そんなヤクザみたいな人やめなよ」と言われるだけなのはわかっている。何も彼の様な人に始めて当たった訳では無い。彼女は極端にケチか、現在の夫の様な人にしか縁が無かった。ケチは、金儲けが上手い、又は貯蓄が上手いというほうでは無く、単にケチ臭い事を言い出す。スーパーで最安値迄ウロウロしたり、「幾らで買ったんだ?もっと安い店が有るだろう」といつも言われた。それよりもマシだと現在の夫と結婚した。しかし突然怒り狂われる原因が解らない。彼女はもう何も欲しく無く、食欲も無い。夫との外出等数年来無い。外出先で夫はよく私がキレると言う。「人のせいにするな」と言って見ても、彼の正当性はただ行動を示して来るだけで、論破する訳でも無い。たまに彼と同一の性格らしき人物がワイドショーに出て、問題を起こしている。彼は「変な奴も居るもんだなあ」と感心しており、自分の身に置き換えたりは決してしない。ストレスから来る身体の節々の痛みに、彼女はもう何も言わない。「唖になれないだろうか?」と彼女は思った。