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バンバンッ。
その音はどこから聞こえているかわからなかった。
右京も7人のミナコたちも驚いて音楽室内を見回す。
ドアではない。
倒れて動かない8人の男たちでもない。
窓―――?
しかし暗幕でよく見えない。
バン。
ドガッ。
バリン。
その音とともに、閉め切られていた音楽室にヒュウと風が吹いた。
ブチブチという音とともに暗幕が一枚引き千切られる。
「―――たく。2階を選ぶんじゃねえよ。手こずったろうが」
暗幕の向こう側に見えたその姿は―――。
蜂谷だった。
「な、んだ、お前は!!」
男たちが慌ててベルトを締めながら、窓枠にしゃがんでいる蜂谷を見下ろす。
「こっちのセリフなんだけど。何そのお面。どこで売ってんの?」
蜂谷は薄ら笑いを浮かべながら、ガラスを割る衝撃で壊れたらしいイケメンカフェの看板を使ってミナコちゃんたちを数え始めた。
「1、2、3、4、5、6……げ。7人も残ってる。会長さん、もうちょっと頑張ってほしかったなー」
言いながらとんと床に降りると、だるそうに首を回した。
「なんでここが……!」
ミナコの一人が蜂谷を睨む。
「外から見てカーテンが閉まってたのはこの教室だけだったんだよ。学園祭じゃなかったら不思議じゃなかったかもしんないけどなー」
言いながら笑った。
「さて―――」
言いながらプラカードを振り上げる。
「そろそろ星屑にしてやんよ?」
◇◇◇◇◇
「お前って―――」
拘束バンドで机に縛り付けられたまま、右京は7人をノックアウトした蜂谷を見上げた。
「実は案外意外と結構、強いんだな…」
「どんだけ俺に信頼ないの」
蜂谷は笑いながら、今の戦いでボロボロになったプラカードを最後に倒したミナコちゃんの身体に投げ捨てた。
「はいはい。次なんかしようとしたら、顔ネットに晒すからねー」
言いながら端から順に面をとり、写真に収め終わると、
「……にしてもいい格好だな。会長さん」
目を細めてまだうつぶせの体勢から動けない右京を見下ろす。
「ぎりぎりセーフ?それともアウト?」
言いながらむき出しの尻を撫でる。
「――――っ」
右京は軽く蜂谷を睨むと、自分の足を見下ろした。
「ケツはセーフだけど、足はアウトかもしんない」
「―――は?」
慌てて蜂谷は右京の脚を見下ろした。
「おい、これ……」
「なんか初めから知ってたみたいで、執拗に狙われた。蹴られて捻られたから、もしかしたら、いくとこまでいったかも……」
「……それを早く言えよ…!」
蜂谷はたちまち右京の3本の拘束バンドをとくと、彼を背負った。
「あ、おい……!」
「救急車……は目立つか。タクシー代持ってるか?」
「財布、教室……」
「あー、もういいや。あとで倍にして返せよ!ほら行くぞ…!」
蜂谷はやけに軽い右京を背負ったまま廊下に飛び出した。
階段を降り、1階の廊下を走る。
「蜂谷……右京!!」
正面から諏訪が走ってきた。
「階段から落ちたらしい」
蜂谷は思い付きの言葉を口にした。
「病院連れてってくる」
「え、あ、おい…!」
風のようにすれ違う蜂谷を諏訪が見つめる。
「はは。諏訪ごめん…!大丈夫だからさ!あとよろしく!」
右京は唖然としてこちらを眺めている諏訪を振り返り、苦笑いしながらヒラヒラと手を振った。
「信じたかな……」
「知るか」
息を上げた蜂谷が短く答える。
「……隠してくれて、サンキュな…」
右京はふっと力を抜くと、蜂谷の首に顔を凭れた。
「お前……!すごい熱じゃねえか……!」
慌てて振り返るが、右京は顔を蜂谷のうなじに埋めたまま目を閉じている。
「ああもう……くそが!」
蜂谷は舌打ちをすると、上履きのまま昇降口から外に飛び出した。