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ピッ、ピッと無機質な電子音が響く病室。
患者の御見舞いなのか一人の道化師の様な格好をした男が尋ねて来た
「ハーハハ!シグマ君は変わらないね!!羨ましい位に莫迦だよ!」
男は静かな病室を騒がしく染め、独り言を続けた。が
「まあ私を選ぶ程だから最初から大莫迦だったに違いない!うん、そうだ!」
其の一言を最後に彼は押し黙ってしまった。
そして何かのスイッチが入ったかの様に右目のアイパッチを取り、力無く床に落とした。
男は空気の抜けた風船の様に座り込み、
こんな顔を誰にもこんな姿を観られ無い様、手で覆う
「なんでさ、頼ってくれなかったの、?そんなに僕が頼り無い?」
声がより一層震える
「帰って来たら恋人が倒れてた此方の身にも成ってよ、床には大量の睡眠防止剤が転がってるし、、」
シンプルな白のフローリングに水溜まりが出来ては、雫が墜ちてゆく
「もう目が覺めないなんて、やだよ、」
神様何て信じて居なかったけど、今だけは、どうか、僕はいいから彼だけでも救って上げて下さい、
過度の睡眠不足と薬物乱用で目覚めるのは困難でしょう。医師から放たれた一言をまた思い出し、
今迄の思い出が断片的に、でも確実に男の心を壊して行く
夏も本番、ジリジリとした日光が暑く照らす昼とは対照的に少しそよ風が吹く花火大会の夜
屋台を転々と周る僕に手を繋ごうとして置いてかれてたよね。
僕がキスを待って眼を瞑るけど、君は恥ずかしくて出来なくて、2人で笑いあったよね
「大切にしたいからって真艫に口付けも恋人繋ぎも出来てない僕らだけど一つだけ約束してよ」
勿論返事をする者は居らず、只々男の声が響くだけだった。
もう一度一緒に居てくれるって離さないでくれるなら、
「深夜0時、キスしに来てよ」
男は力の抜けた足を奮い立たせて何処かへ行ってしまった。
そう、彼は今日中に引っ越すのだ。
再び病室には静寂が戻った
「それで、その男性はまだ恋人を待っているんですか?」
引っ越し先で出来た親友。ドス君が尋ねる
「うん。彼はまだ初めてを大切に大切に守ってるよ。
恋人に奉げるためにね」
だからさ、奪いに来てよ。僕の初恋を奪ったみたいに
あれから2年後
彼の好きだった桜の木の下で、未だに来るわけもないシグマ君を待っていた
碌に一睡も出来ないまま。
「もう、12時、か」
何だか今日は眠くて、眠くて仕方がない
後ろを向き歩き出そうとした
「待ってくれ!」
誰かから突然抱き着かれる
この温もり、この声。世界に一人しかいない
「シグマ、君、?」
嗚呼、何故だろう、数年前消し去った筈のこの感情がこんなにも愛おしいのは
目から何かが零れ落ちる。
「そうだ。
私だ、シグマだ」
僕は泣き崩れる
どう言えばいいのだろうか、
「シグマ君ッ、シグマ君!
何で、何で、僕を頼ってくれなかったの、?僕の事嫌いになった、?」
そんなことシグマ君に言ってもどうしようもないのは分かってる、けど溢れ出す2年間の激情が止まらない。
より一層強く抱きしめられたかと思えばシグマ君の方を向かされ口付けをされる
「そんなこと、在る訳無いじゃないか、」
分かっていた筈なのに、どうにも涙が止まらない
大莫迦はぼくだったのか、
「シグマ君、ごめんね」
今だけはこの温もりに甘える事を許してほしい
「愛してる」
只々、二年間の愛情を最愛の貴方へ