高校三年生の川上晴(カワカミ ハル)と日志崎洋(ひしざき ヨウ)と八鹿愛(ヨウカ アイ)
ハルは母子家庭に生まれ、ヨウは父子家庭たったそれだけの、普通の友達だったハルとヨウの話
本編スタート!
ヨウ「ハル~!」
ヨウ「お前テストどうだったよ」
ハル「ヨウ…まぁまぁかな」
ヨウ「んな事言って、どうせまた90点台だろ?」
ハル「まぁな」
ヨウ「俺40点だったんだよ~」
ヨウ「やばくね?」
ハル「ちゃんと勉強しろよ」
ヨウ「だり~もん!」
ヨウ「最後の高校生活堪能して~し」
ハル「…ま、そうだな」
ヨウ「そーいや、今日お前誕生日だろ?」
ハル「そうだっけ?」
ヨウ「自分の誕生日ぐらい覚えとけっつ~の!」
ごめんごめん、とハルは笑う
ヨウ「今日俺ん家来いよ!」
そう提案し、ヨウはニコッっとする
ハル「分かった」
ヨウ「おばさんも連れてな」
ハル「うん」
ヨウ「アイも呼んだんだけど」
ハル ピクッ
ハルの顔が強ばる
え、アイとなんかあった?と戸惑ってるヨウに気を使う余裕もなさそうに席を立つ
ハル「ヨウ、ごめんけどアイが居るなら行けない」
ハル「また今度遊ぼうな」
ヨウ「ちょ、待って」
ガラガラ
ヨウ「…何があったんだよ」ボソッ
カッカッカ
ハルがスマホの画面を叩く音が鳴る
LI〇E内での会話↓
ハル「ヨウごめん」
ヨウ「なになにどーした笑」
ハル「夕方のこと」
ヨウ「いーよ別に気にしてないし」
ハル「ごめん」
ヨウ「じゃあ、お詫びとして1つ聞いていい?」
ハル「なんでも」
ヨウ「アイと何かあった?」
聞かれたくない事を聞かれ、ハルは思わず「それだけは言えない、ヨウには関係無い話」と返してしまった
ヨウ「なんだよそれ…」
ポスッ
軽く力を入れ、スマホを投げる
スマホは画面をヨウに向けて枕の上に着地し、LI〇Eの会話を映し出す
ピロンッ
ヨウ「…」チラッ
来たばかりの通知を少し見る
ハル「信用してないわけではないからな」
ハル「ただ言いたくないだけだから」
ハル「ごめん」
ヨウ「…バカみてぇ」
ヨウ「ハルが困るだろ…」
翌日
ヨウ「ハル!」
ハル「あ…ヨウ」
ハル「おはよう…じゃ、また」タッタッタ
ヨウ「え…おい、ハル!」
アイ「え~?」
アイ「ハルに避けられてる気がする?」
ヨウ「あぁ…」
アイ「私、正直今のハルの事よく知らないんだよね~」
ヨウ「なんでだよ」
ヨウ「2人とも仲良かったじゃねぇか」
アイ「いや~、流石にあんなことがあったのに合わせる顔なんかないよ」
ヨウ「…何があったんだよ」
アイ「え~?」
アイ「私達が小学生の頃…まだ私がハルと仲が良かった頃ね」
アイ「ハルのお父さんが小学生だった私を襲ったの」
ヨウ「……は?」
ヨウ「なんだよそれ…」
アイ「ハルは悪くないけど…親は隠したかったみたい」
アイ「大きくなって、”信頼できる友達”が出来たらその子だけには話していいよって」
アイ「隠したい割には意外と適当だよね~」笑
ヨウ「信頼できる友達…だけ」
アイ「私はヨウを信頼してるからね~!」
なんて言いながらヨウの様子を見る。
アイ 「っっ…!?」
温厚なヨウの怒ったような顔は普段とは違い、かなりの迫力があった
アイ「ヨウ…?」
ヨウ「なぁ…アイ?」
アイ「何?」ビク
ヨウ「ハルさ、俺にその話してくれなかったんだよ」
ヨウ「俺の事信頼してねぇのかな」
ヨウ「なぁ?」
アイ「わっ…わかんない…」
顔を向けるヨウと顔を背けるアイ
気まずい雰囲気になったまま、2人は解散してしまった。
ヨウ「ただいま…」
ヨウ「はぁ…何やってんだろ…俺」
ふと、目に付いたカッターを手に取る
ヨウ「迷惑ばっかかける俺なんか…!」
シュッ
紅色の血が腕をつたる
ヨウ「ははっ…血の色だけは綺麗なんだなぁ…」
バシュッ
1本、また1本と腕に傷跡を付ける
冷静になると、先程まで感じなかった痛みが一斉に襲いかかってきた
ヨウ「…絆創膏でも貼って寝るか」
ヨウは痛みに耐えながら眠りについた
次の日、 今日こそはハルを捕まえる!と意気込みながらヨウが教室に入ると同時に、ペットボトルを回し器用にキャッチしているハルが目に入る
ヨウ「おはよ!」
ハル「!」
ハル「おはよ…」
ペットボトルを回していた手を止め、席を立ち上がろうとするハルの手を掴む
ガシッ
ヨウ「ハル…逃げんなよ」
ハル「え…?」
ヨウ「アイから話聞いたよ?」
ヨウ「俺の事信頼してなかったんだ~」
ハル「ち、ちがッ!」
ヨウ「言い訳なんか聞きたくねぇ」
ハル「本当に違ぇんだって…話聞いてくれよ」
思わず泣き出しそうなハル
ヨウは予想外の反応に戸惑う
ヨウ「ご、ごめんって」
ヨウ「ちゃんと話し聞いてやっから」
ハル「俺…ヨウに嫌われたくなかったから言わなかっただけなんだよ」
ヨウ「……はぁ?」
ハル「だって、幼女を襲う男の子供なんて嫌だろ?」
ハル「それで、ヨウに嫌われるかもって」
ヨウ「なんだ…そんな事だったのかよ」
ハル「そ、そんなことって!」
ヨウ「はぁ…良かったぁ」
ハル「ごめん、ヨウ」
ヨウ「いや、いいよ」
ヨウ「これで俺を避けることも無くなるな!」
ハル「あ、その事なんだけど」
ヨウ「え?」
ハル「俺がお前を避けてたのは、兄弟になるからなんだ」
ヨウ「………は?」
ハル「…つまり、お前のとこのおじさんと俺んとこの母さんが再婚するんだよ」
ヨウ「は…嘘だろ?」
ヨウ「だって、俺ら友達だろ?」
ヨウ「友達から急に兄弟なんか、切り替えれねぇし」
ハル「…本当」
ヨウ「なん…で」
ハル「明日引っ越すことも決まった」
ヨウ「は?」
ヨウ「んな事聞いてねぇよ、勝手すぎんだろ!?」
ハル「…仕方がないだろ」
ハル「俺だって…」
ヨウ「…んでだよッ」
ハル「俺も日志崎になるんだよな…」
ヨウ「ははッ…お前とは兄弟みたいなモンだったけど、本当に兄弟になるとかありえねぇよ」
ハル「ごめんな、ヨウ」
ヨウ「なんでお前が謝んだよ…」
ヨウ「謝んなよ…」
ハル「…ごめん」