第2話
「大丈夫だよ!」
「何があっても、こうしてれば大丈夫、!」
「大丈夫のおまじないだからっ、!!」
ぼんやりともやがかかった、でも見慣れている場所を背景に、誰かの声が響く。
ああ、あったかいな。
大丈夫のおまじない。
そう言って手を握ってくれている子。それから、正面から抱きしめてくれている子。
もうずっとこうしていたい。
ああ、そうだ、ありがとうって、言うんだ。
…あれ、?
お礼が、言いたいのに。
声を出そうとすれば、何故か喉の奥で突っかかる。それどころか、体すら自由に動かせない。
もやがかかった背景。それはこのふたりの顔にもついていて。
これじゃ、顔、見えないよ。
顔を見せてよ。名前を、教えて、?
黒 「っ、..は、っ、」
…夢、だったんだ。
さっきのは嘘?それとも本当?
もう全部わかんないよ。
もう1回、俺を助けてよ。
・・・
「おい、お前、916!!」
..あれ、さっき起きたはず、
「起きろ、おい!!!」
あぁ、また寝てたのか、起きなきゃ。
あれ、今日はみんな殴ってこないや。
久しぶりに食べた、普通の量。
看守も、殴ってこない。
そっか、出荷か。
現実を突きつけられれば、人は案外なんとも思わないんだな。
まあそっか。出荷、何度もしてるし。
あ、いつものステージだ、お辞儀しなきゃ。
じゅーまん、ひゃくまん、せんまん、にせんまん、
お金の数え方なんてわかんないけど、俺にどんな価値が着いても関係ないよね。
…ごおく、
あれ、声がやんだ。
戻んなきゃ。
そっからはとんとん拍子。
目の前に知らない背が高い人が来て、首輪に着いた鎖はその人の手の元へ。
そしたらなんだか難しいような、俺には読めない資料みたいなので手続きをしていって、そして車に乗り込む。
首輪は、車に乗ったら外された。
なにか前にいる人は喋ってるけど、あれ、声が聞こえない、なんて、言ってるの?
あれ、なんか、さっきの人が視界から消えちゃった。
あれ、今、抱きしめられてるの、?
「__大丈夫やで、辛かったんやな、」
なに、この人
なんで俺の心配なんかするの。
俺は至って元気そうに見えていたでしょ、?
「震えてる、怖いんやね、ごめんね、」
大丈夫だよ、大丈夫。なんもされてないもん。
震えてなんか、ない、
大丈夫のおまじない、あるもん
大丈夫、大丈夫、大丈夫…
あれ、ねむ、い___
青視点
俺の手の中、寝息を立ててすやすやと眠るこの子を見てひとまず安堵する。
いや、安堵できるほどこの子の今の現状は良くないけれど。
ずっと、震えていて。それに本人は気づいていなかった。
怖かったんだろうな、それを隠すくらいにこの子の状況は深刻だったんだろうな。
とっくに外した鎖、もう一度手に取る。
この子を縛っている鎖なんて、俺が全部焼き払うから。
ひとりで抱え込まずとも生きていけるように、育てるから。
さて、もうそろそろ屋敷が見えてくる頃。
大丈夫、もう、安心してね。
いまだ眠るその子の額を、そっと撫でた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!