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「社長の話を、私は断った。そしたら社長は勿論、メンバーも大激怒。CANDY POPがどうなってもいいのかって。笑っちゃうよね。グループの為なら私は……私の気持ちはどうなってもいいのかって感じ。前々からメンバーとは色々あったし、元々孤立してたから、何かもう全てがどうでも良くなっちゃって……辞める事に決めたんだ」
辛い話なのに、斗和を心配させない為か明るく振る舞いながら話す恵那。
作り笑顔だと分かるくらい笑えていない彼女を前にした斗和は、
「――馬鹿。無理して笑うなよ。そういう時は怒れ、悲しけりゃ泣けばいい。ここでは、無理に笑顔なんて作る必要……ねぇんだよ」
恵那の身体を自分の胸に引き寄せて抱きしめながら、そう口にした。
「……と、わ……?」
突然の事に、目を丸くした恵那。
そんな彼女をよそに、斗和は言葉を続けていく。
「ま、辞めるとか辞めねぇとか、そういうのは俺がとやかく言える事じゃねぇけどよ、一応休養って形でこの町に来たんなら、ここに居る間くらいは普通にしてろよ。周りの目なんか気にするな。何か言う奴がいれば俺に言え。だから、そんな下手くそな笑顔作るのは止めとけよ。不細工になるぜ?」
「……不細工って……」
抱きしめられていた事で斗和から顔を見られない恵那の瞳からは薄ら涙が浮かんでいたのだけど、斗和の言葉に少しだけ可笑しさを感じた彼女はクスリと笑う。
「……ありがとう、斗和」
「別に、礼を言われるような事はしてねぇし?」
「それでも……ありがとう」
自分を分かってくれる人はいない、何処へ行っても何も変わらない。
そう思ってた恵那だけど、斗和の言葉に救われ、この町でなら、斗和が傍に居てくれるなら何かが変わるかもしれない。
そう思えると嬉しくなり、恵那の表情は自然と緩み、作り笑顔とは違う、心の底から嬉しさが滲み出ているような笑顔が斗和へと向けられた。
「そうそう、そういうヘラっとした阿呆っぽい顔してる方が全然良いって」
「なっ……阿呆っぽい顔って……」
そんなやり取りを続けていると、二人の耳にチャイムの音がきこえてくる。
「あー、もう一限始まる時間だ……今から言っても煩く言われて面倒だからサボるかぁ」
「ええ? 駄目だよ、今からでも行こうよ」
「いいんだよ、行きたきゃ一人で行けよ」
「えー……」
サボるという斗和を説得するも、彼に行く気は無いらしい。
それどころか大きな欠伸をしながら伸びをすると、そのまま大の字になって寝転んだ。
自分のせいでサボらせてしまうし、一人で途中から教室に入るのは目立って気が引けると思った恵那もまた、
「……私も、サボる」
斗和に倣って同じように寝転ぶと、青く澄んだ空を見上げながら、時折流れていく雲を見つめていた。