桜の花の甘い香りが、あたしの鼻に広がってく。
本当はこの匂いが嫌いだった。嫌いだったのに、何時しか好きになってしまって。
桜の花と同じ香りがする貴方は、あたしを虜にした人。
でも、もう居ない。あたしが好きだった彼女は、もう彼女では無いんだ___
「…は?」
そんな声を放つ。それもそうだ。
「みこちが…記憶喪失?」
ビジネスパートナーであり、あたしの彼女でもある さくらみこ。
その彼女が、記憶喪失になったと言うのだ。
「落ち着いてください、すいせいさん」
落ち着ける訳ないじゃん、何言ってんのこの医者。と内心ツッコミながらも冷静を装う。
「え…あ、は…だ、大丈夫です…」
うん。無理だわ。
だって愛する人が記憶喪失なんだよ?落ち着ける訳ないじゃん。
「…みこさんについて、なんですが」
医者が口を開く。
「記憶喪失で、誰の事も覚えていないらしく…自分の事も覚えてない様です」
「はぁ…?」
「それで、すいせいさんに言っておきたいことがあるんですが…御時間大丈夫でしょうか?」
「ど、どうぞ…」
「…すいせいさんは、みこさんと付き合っているんですよね?」
「あ、はい…そうですけど」
「その事についてなんですが…みこさんに、付き合っていると言う事を控えて欲しいんです」
「…へ?」
「な、何でですか?」
「説明しますと…」
医者はあたしの事をじっと、真剣な表情で見つめる。
「みこさんは、今記憶が無い状態です。そして、余りにも強い、と言うか、記憶が濃いものを
思い出させる事を辞めて欲しいんです。すいせいさんを認識させるなと言う事じゃないのですが、
付き合っていると言う事実を思い出させるのは少し…」
「……わかりました」
「ちなみに、言ってしまった場合はどうなるんですか…?」
「それは…」
「……最悪の場合、死に至ります」
「っ…!」
「分かって頂けましたか?」
「…はい」
「では…みこさんの記憶喪失について、詳細を話したいのですが…」
「かなり時間が掛かってしまうと思いますので…もう一度確認致しますが、御時間の程は
大丈夫でしょうか?」
「大丈夫です。今日は何も予定が無いので…」
「…では」
医者は又、此方を見つめて話し始めた___
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「ふぅ…」
病院内の廊下の自販機で、コーヒーを1本買う。
そして、自販機の向かいにあるベンチに腰を掛ける。
「…本当に長かった」
かれこれ説明だけで、2~3時間は続いだろう。体のあちこちが痛い…
「さて…」
…みこちに負担が掛かってしまう事はなるべく避けないようにしないと…
そう思いながら、あたしはみこち居る病室へと向かった。
コメント
8件
記憶喪失...!!✨️ 記憶喪失って素晴らしいよね... 続きが気になって夜も寝れない(((?
続きがめっちゃ気になりすぎる...🫶記憶喪失、!すこ🫶🫶🌸
途中消えたので全然書いてないです。すいません、()