今回は14×12で書かせて頂きました!
(ほんのり匂わせる程度なのでどちらでも読めはするかもしれません)
sideR
祐希さんが、おかしい。いつからかはっきりは分からないけれど、ここ最近はずっと何か違うっていうか。
たとえば、練習の休憩中。
祐希のところにいちばんに話しかけに行き、その後でほかのメンバーとも話すというのが自分の中のいつもの行動パターンだった。大抵は小川のもとへとちょっかいを出しに行く。いつもなら、祐希は遠くから見ていたり、彼もまたほかのメンバーと話していたりという感じなのだが、今はどうかと言うと。
「…藍、また祐希さん連れてきたんだ?」
「えっと、いや、まぁ…はい」
「…」
苦笑いをする小川、戸惑う俺、そして無言のひっつき虫な祐希。これが最近の休憩中の不思議な構図である。
祐希の元を離れ小川のところへ行くと、後ろからついてきてピッタリとくっつかれたり、ユニフォームをグイグイと引っ張られたり、背中合わせで体重をかけられたり、あとは、手をにぎにぎとされたりと、とにかくかまちょみたいなことをされる。正直言って凄く可愛い。なんだこのツンデレ猫は。
初めてのときはびっくりしすぎて身動きがとれなかった。
「ゆ、ゆうきさん?!」
「…ん」
「俺いま汗臭いから離れてください!」
「…やだ」
「やだって、」
「別に俺のこと気にしなくていいから」
なんて言われてしまい言葉に詰まってしまった。しかし、嬉しいのはたしかだったので、こちらから構おうとすると
「小川と話すんでしょ?俺に構わなくていいよ」
なんて言って、ぷいっとされ、離れて言ってしまう。まるで、本物の気まぐれな猫のようだった。だから、少しでも一緒にいたくて、というかくっつかれていたくてわざと構わないようにしていた。
「…藍おまえ顔ニヤニヤしすぎ。きもい」
「ひっど!…そんなゆるんでます?」
「おん。口角上がりまくり」
ぺち、と自分の顔を両手で挟み気を引きしめる。すると後ろのひっつき猫がグリグリと頭を背中に押し付けてきた。おそらく俺の身長的に小川からはその姿は見えていないはずだ。
「ぉ、わ…」
「またきもい顔してるし」
満足したのか、祐希はスっと離れていく。
「…藍さ、祐希さんとなんかあったわけ?」
「いやいやいや、なんもないっすよ。俺も訳がわかんなくて…」
「ふーん…ま、今回は藍が悪いな」
「え、おれ?!なんでわかるんですか?」
「気づかないお前が馬鹿ヤローなんだわ」
「えぇ…」
こんなことが続いていた。
あとは、練習が終わったあと部屋に戻ってからの時間。
今回は祐希と同部屋なことが嬉しすぎて、シャワー上がりのあの色気溢れる祐希を前に自制できないと思い、わざとほかのメンバーの部屋を訪れていた。今までは消灯時間に部屋に戻って一緒に寝る、という感じだったのだが、今は、こんなメッセージが届くのだ。
『いま、誰の部屋いるの』
『小川さんとこです!』
『俺と同部屋嫌なの?』
『え?!そんなことないですよ?!』
『じゃあ帰ってきてよ』
祐希からの珍しい連絡と、わがままに驚く。
しかし、次の
『さみしい』
というメッセージで俺は突っ伏した。
祐希さんが俺がいなくて寂しいって言ってる?!?!
衝撃すぎて5度見した。本当に。
『はーい、今からもどります』
でもあえて、普通を装って返信をする。
ガチャリ、と部屋のドアを開けると祐希がこちらにふらりと歩み寄ってきた。かと思えばギュッと抱きしめられる。首元にグリグリと頭を押し付けられるので、ぽんぽんと背中を叩きもう片方の手で頭を撫でる。
「ん、祐希さん?…寂しかったってほんと?」
「…うん」
腰に腕を回され強く抱き寄せられる。
あ、これ。と雰囲気を察して目をつぶったのだが。
「じゃ、一緒寝よ?」
と一言。
「ぇ、あ…はい、歯磨きしてきます」
いつもならキスされて抱かれる流れだったのに、と違和感が胸に残る。
こんな風にモヤモヤとしながら眠る日が続いた。
SideY
そろそろかな、と祐希は考えていた。ここ数日はかまちょ作戦とでも名付けるべきか、小川のツンデレに対抗してデレを強調した行動をとっていた。
小川と話すときは藍にくっついてちょっかいをかけること。
他部屋に行っているようなら「寂しい」と正直に伝えること。
ヤる雰囲気を出しつつ手は出さないこと。
今までの意趣返しにしては可愛いものだと祐希は考えていた。藍はきっと普段ツンツンしてる人から甘えられると弱いんだと思う。小川と一緒にいる姿を観察して、そう結論づけた。
これは祐希にとって嬉しい勝算だった。なぜなら自分はいつも甘えているタイプではなかったからだ。俺が藍を甘やかしてるし。
そこでこの作戦を思いつき、実行に移した。そしてそれも最終段階に移す時だ。
「おがわさーん」
「うげ、また来た…ってあれ?祐希さんは?」
「今日はついてきてくれなかったです」
若干しょんぼりとして答える。
「へぇ?ついに藍も飽きられたわけ?」
「え、…そういうことなんですかこれ、?」
「いや知らんわ。俺に聞くな」
「ぅー、」
珍しく小川がその毒舌をしまって、慰めに転じる。
「大丈夫だって、おまえなら。祐希さんも藍のこと嫌いになるわけないじゃん?」
「…目移りされたのかも、」
「だーいじょうぶだって。今からでも祐希さんにちゃんと気持ち伝えれば」
よしよし、とその己より上の頭を撫でてやろうとすると、突然ガシッと腕を掴まれた。
「っえ、ぁ」
「…?祐希さん?!」
「…」
無言のままじっと2人を見つめる。
「…何話してたの」
ピリッとした空気が漂い始める。これはもしかしなくても祐希は怒っているようだった。
「いや、えっと…」
「悪いけど、」
ひと呼吸置き、スっと小川やその周りでソワソワとしている他のメンバーに目を向ける。そして、藍の腰に手を回してグッと抱き寄せる。
「藍は、俺のだから。小川でもやれない」
体育館に祐希の「藍はおれのもの」宣言が響いた。一瞬、静寂が落ち、次の瞬間には囃し立てる声がひびき始める。
「ひゅー!言うじゃん祐希?」
いつの間にか後ろに来ていた山内がそう声をかける。
「ダスティンびびりすぎ笑」
「いやいやいやまじで祐希さん怖かったって!!!俺被害者なのに!!!」
「ごめんって、とも笑
牽制したかったから、つい笑」
「もぉー!!まじびびった!」
と周りが騒ぐ中、関田がこちらに向かってくる。
「おアツいのは結構なんだけど、藍、生きてる?」
そういえば、と思い隣の藍に目を向ければ。
「え?!藍?!?!ゆでダコなんだけど!!頭沸騰してない?!大丈夫?!」
「おちつけ祐希。」
「藍死んでね?」
「あれで死ねるなら本望だろ。お幸せにー」
「だれか救急車ー」
「祐希が王子様のキスしてやったら?」
だれかの一言にみんなが便乗し始め、キース!キース!と煽られる。
ーーーまぁ、牽制するには丁度いいか。
チュ、と優しくキスしてやれば皆いっそう盛り上がり、藍はというといよいよ倒れてしまったのだった。
fin.
次回は12×14を書く予定ですが、題名だけ記すので内容を予測して、どれが良いか、コメントで教えていただけると嬉しいです!
①おくすり注意報
②雨宿り、のち
③俺を、選んでよ(これだけ2×14と12×14の三角関係です)
ではまた次の作品でお会いしましょう!
コメント
4件
最高でした…!!🤭💕 悩みますが、②見たいです〜♡
14×12最高です🥹👍🏻👍🏻②見たいです!!
今回も最高でした~‼️😭✨️ ③見てみたいです✊🏻⭐️