「先生ー、まだ拗ねてるんですか?」
この男は甘えるのが嫌というほど上手い。数時間前までスマホのメッセージ相手に妬いていた自分を忘れてしまいそうなほどに。酒で酔っているからか距離が近く、動揺と期待とでつい顔を背けてしまう。生徒の前ではそんなことすら感じさせない猫被りはどうかと思うが。
「ねえ何とか言ってくださいよ」
低い声が脳へと響き渡ってゆく。危機感から、逃げようと少しずつ後ろに下がるがその度に距離をつめられる。逃亡は諦めるしかなさそうだ。
ふと顔を上げると俺を見下ろす顔と目が合いゾクゾクと体を伝った。妬いてばかりで息がつまりそうなほど苦しいのに、こういう時ばかり好きでいっぱいいっぱいになる。他の人の所へなんて行かないでほしい。この先もずっと側に居てくれないとおかしくなる。俺以上に田中先生を好きな人なんて存在しないのに。
「嫉妬した」
「わざとですから」
勇気を振り絞って言葉にした気持ちをさらっと返されてしまった。次の言葉を考えなければいけないはずなのに頭は何も動かない。待ち構えていましたと言わんばかりに田中先生の口角がわずかに上がっていたのは気のせいだろうか。
「かわいいですね」
すると手首を激しく捕まれ壁に追い詰められる。いきなりでされるがままになってしまった俺も悪いが田中先生が何を考えているのかわからない。こんな男の嫉妬なんぞ気色が悪いだけだろうに。
今日は家に帰れそうにないな。
コメント
2件
私の為に書け
かわよーーーーーーー 作文の才能ありすぎ 私の打ち切りにしよかな笑