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大和と別れてからは、友達に誘われて合コンに行ったり、知り合いを紹介してもらったりして異性との交流は何度となくあったものの、
大和以上に好きになれる人に出逢えなかった。
大和に比べたら、みんな誠実そうだったし、浮気なんてしなさそうな人ばかりだったのに、惹かれるものが無かった。
大学を卒業して、
それなりの企業に就職をして、
仕事にもようやく慣れた頃、
会社で女子に人気の先輩社員から飲みに誘われた。
先輩だし、断るのもどうかと思って誘いを受けたけど、
私はその選択を心底後悔することになる。
先輩に連れて来られたのはお洒落なバー。
そこで軽くお酒を飲みながら会話を楽しんでいた矢先――
「――和葉?」
名前を呼ばれて振り返ると、そこに居たのは、
「……大和」
あの日、約二年前に別れた大和だった。
何ていうか、ちょっと変わった。
あの頃の大和は、
髪は金髪だったし、
髪も少し伸ばしてたり、パーマをかけたり、毛先を遊ばせたり色々していたけど、
今は落ち着いた焦げ茶色にビジネスカジュアルって感じのショートヘア。
全体的にこうチャラついていたけど、今はそういう要素が一切無い。
見た目だけなら、
すごく誠実そう。
「和葉ちゃん、誰?」
先輩が大和を見ながら小声で聞いてくる。
「あ……、えっと……」
この場合何て答えるべきか私が言い淀んでいると、
「もしかして、元カレ……とか?」
何となく察したらしい先輩が核心を突いてきたので、答える代わりにコクリと頷いた。
一方、そんな私と先輩のやり取りを見ていた大和は、
「すいませんけど、少しだけ和葉借りてもいいっすか?」
先輩に向かってそんなことを聞いてきた。
って言うか、何を勝手に? 私、別に大和と話すことなんて無いんですけど?
先輩は私と大和を交互に見ると、
「……和葉ちゃんが良いなら、俺に止める権利は無いから。和葉ちゃん、どうする?」
私にどうするか意見を聞いてきた。
正直、話したく無い。
そう頭では思っているのに、私の口から出てきた言葉は――
「……すみません、少しだけ、話して来ます」
大和と話をするという答えだった。
「分かった。それじゃあ俺はここで待ってるから」
「すみません、少しだけ、行ってきます」
先輩に一言断った私は大和と共に一旦店を出る。
「……それで、何?」
外へ出た私たちは、人の邪魔にならないよう端に寄ると、私の方から何の用があるのかと問い掛ける。
「アイツ、何なの? もしかして、彼氏?」
すると返ってきたのは先輩との関係を尋ねる質問。
「何でそんなこと、大和に話さなきゃいけないの? 関係無くない?」
「あるよ。俺は、あの日から和葉のこと、忘れたことなんてねぇよ。あれから誰と付き合っても、お前以上に好きになれる奴なんていなかった。満たされねぇんだよ……心も、身体も。お前は、そうじゃないのかよ? アイツのこと、本気なのかよ?」
「……っちょ、……近いよ……っ」
ビルの壁を背に話していた私に大和が迫って来て、彼と壁に挟まれる形になった私は不覚にもときめいてしまう。