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「グオオオオオオ!!」
牢獄に響き渡る 獣じみた咆哮。
青白い肌、血走った瞳、異様に伸びた爪。
目の前の吸血鬼は完全に理性を失い、ただ血を求める狂犬と化していた。
「おいおい、助けに来たのに、いきなり ‘戦闘開始’ とはな。」
エゼルは鉄格子の中で余裕の笑みを浮かべる。
「クソが……!」
ヴァルドはメイド服のスカートを翻し、腰のナイフを構えた。
「リリス、作戦変更だ! こいつを ‘大人しくさせる’!」
「了解! でも ‘殺さないで’ ね!」
「……できるかどうかは ‘相手次第’ だな!」
狂犬は 瞬時に消えた。
「ッ!? 速い――!」
次の瞬間、ヴァルドの背後に現れ、鋭い爪が襲いかかる!
ガキィン!!
「甘ぇよ!」
ヴァルドはナイフで爪を弾き、飛び退る。
しかし、狂犬は止まらない。
「血を……血をよこせェェェェ!!」
目をギラつかせ、ヴァルドへ猛突進。
ズバァァァ!!
ヴァルドは咄嗟に体をひねるが、メイド服の袖が裂かれる。
「チッ……こいつ ‘本能のまま’ すぎる!」
「まさに ‘狂犬’ ねぇ……。」
リリスが呆れたように腕を組む。
「ヴァルド、そろそろ ‘やっちゃいなさい’。」
「言われなくてもやるさ……!」
ヴァルドはニヤリと笑うと、ナイフを逆手に構えた。
「いいぜ、 ‘血が欲しい’ なら――」
ナイフの刃先を 自分の指にスッと押し当てる。
「――俺のをくれてやるよ!」
血の匂いが 牢獄全体に広がった。
「グオオオオオオ!!!」
狂犬は理性を失ったまま、ヴァルドに飛びかかる。
「――そこだッ!!」
ヴァルドは 瞬時に懐へ潜り込み、ナイフの柄で顎を打ち上げる!
ガンッ!!
「グッ……!!」
狂犬の動きが一瞬止まる。
「終わりだ――!」
ヴァルドはそのまま肘を叩き込み、狂犬を 牢の奥へ吹き飛ばした!
ドシャアアッ!!
狂犬は壁に叩きつけられ、ズルリと崩れ落ちる。
牢獄に 静寂が訪れた。
「……終わった?」
リリスが顔を覗かせる。
「いや、まだだ。」
ヴァルドは狂犬の身体をじっと見つめた。
すると――
「う……ぐっ……。」
狂犬は ゆっくりと立ち上がった。
「おいおい、まだ ‘やる気’ かよ……。」
しかし、狂犬の瞳は 先ほどまでの ‘狂気’ を失っていた。
「……血、じゃなくて…… ‘水’ を……。」
「水……?」
リリスが持っていた水筒を差し出すと、狂犬はむさぼるように飲み干した。
「……はぁ……はぁ……。」
狂犬は、まるで悪夢から覚めたかのように 深く息をついた。
「おい、お前……。」
ヴァルドがゆっくりと近づく。
狂犬は ゆっくりと顔を上げた。
「――俺は ‘フェン’。お前たち吸血鬼か……?」
「は?」
ヴァルドとリリスは顔を見合わせた。
「……俺も吸血鬼なんだと ‘思っていた’。」
フェンの声は、どこか ‘虚ろ’ だった。
「だが違った。俺は血じゃなく水を求める ‘吸血鬼もどき’ らしい。」
「吸血鬼もどき……?」
ヴァルドは怪訝そうに眉をひそめた。
フェンは苦笑しながら、手の甲を見せる。
そこには、かすかに刻まれた ‘紋章’ があった。
「これは ‘神の呪い’ だ。」
「神の呪い……?」
「この世界に 吸血鬼は ‘13の血族’ しか存在しない。だが俺は どの血族にも属していない……。」
フェンは静かに言った。
「俺は 神が造り損ねた ‘失敗作’ だ。」
牢獄は、再び静寂に包まれた。