監獄塔の中は冷たく湿っていた。壁には古びた松明が灯り、低く唸るような風の音が聞こえる。
「……おい、リリス。」
「なぁに?」
「なんで ‘メイド’ の仕事が ‘牢の掃除’ なんだ?」
ヴァルドは、手に持ったモップを見つめながら問い詰める。
「だって掃除係なら牢屋の近くまで行けるでしょ?」
「まぁ……そうだけどよ。」
「それに、ヴァルドが囚人みたいな顔してるから自然だし。」
「どの口が言ってんだ!? お前の ‘吸血鬼っぽさ’ の方がよっぽどバレそうだろ!!」
リリスはケロッとした顔で肩をすくめた。
「まぁまぁ、貴族専用メイドの設定を信じてくれたし、大丈夫よ。」
「 ‘メイド畑’ って適当なウソ、まさか通るとは思わなかったわ……。」
「世の中自信満々で言えばなんとかなるものよ。」
「お前の生き方どんだけ適当なんだ……。」
ヴァルドはため息をつきながら、ゴシゴシと牢の床を磨いた。
すると、牢の中からゴツい男がこちらを見てニヤリと笑った。
「おい、新入りのメイドちゃん、そっち来いよォ……ちょっと話しようぜ?」
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