※シェアハウス設定
深夜何時か。何をするでもなくずっとスマホを触っているだけで時間が過ぎてった。いつもだったら寝ている時間。明日だって朝から用事がある。
なんで寝ないのかと聞かれても答えられない。ただの気分。なんにもないけど寝たくなかった。
外に出て散歩でもしようか。でもこの体格の男が歩いてるだけで不審がられるんじゃないか。色々なことを考えながらも、喉が渇いたためなにか飲もうとリビングまで来た。
「さみぃ〜…」
真冬の深夜だからか廊下は寒く冷たい風も吹いてくる。毛布でも肩にかければ良かったかな、なんて後悔した。
「…あれ、焼きパン?」
「あれぇ、ぐっちじゃん」
リビングに着くとそこには丁度焼きパンがいた。キッチンだけにしか電気はつけておらず、その光も小さい。その小さい光を頼りにマグカップに牛乳を入れようとしていたようで牛乳パックを両手で持っていた。
「なにしてんの?」
「んーとね、こんそめさんにホットミルクの作り方おしえてもらったんだ」
だから作ろうとしてたの、と眠そうな声で伝えられる。
ホットミルクか、美味そうだな。なんて思いながら俺の分も頼んでみたら渋々了承された。ラッキー。
「どうやって作んの?」
「なんかね、レンジであっためるらしいからぼくでもできるって」
俺の分のマグカップを用意してそこに牛乳を注いでいく。その様子を見ながら椅子に座った。
「これを2分くらいレンジであっためるの、あっためた後はスプーンでかきまぜてもっかい2分チンだってさ」
俺と焼きパンの牛乳の入ったマグカップをレンジに入れ、2分に設定してスタートのボタンを押した。
ピ、と機械音が鳴り中に入ったマグカップが淡く照らされ、回される。その間に焼きパンはスプーンを用意していた。
「手伝う?」
「大丈夫、ぼくだってこのくらいできるし」
むっとしたような声が聞こえ、少し笑う。お砂糖とかはちみついれようか?という質問にはその言葉に甘えていれてもらうことにした。
「はい、これぐっちの分ね」
「おぉ、美味そう。ほんとに焼きパンでも作れんだ」
「それどういう意味?」
その質問は笑いが返答。テーブルを挟んで向かいに焼きパンが座ってホットミルクを飲み始めた為俺も1口啜ってみる。
体を包み込む暖かさに優しい甘さ。ふぅ、と一息ついて、焼きパンに視線を移した。
「美味しい?」
「ん、美味い。すげぇわ」
「でしょ」
へにゃりと笑いながらまた飲み始める。また肌寒くなってきたため俺もちびちびと飲み進めていった。
気づいた時にはマグカップの中身は空になっていて、身体は暖かかった。焼きパンも飲み終わったようでマグカップを机に置いた。
「美味しかったでしょ」
「いや、マジでな。今回限りなの勿体ねぇくらいだわ。」
「ホットミルクだったらぼくでも作れるし、また作ったげるよ」
ふふん、と鼻を鳴らしながらそう言われ、言葉に甘えさせてもらおうと思う。にしても本当に美味しかったし焼きパンもそう言っていたし、毎日作ってもらおうかとも思えるほどだった。すごい焼きパン。らっだぁだったら立派すぎて泣いてた。
「マジ?じゃあ毎日作ってもらおうかな」
「え、ぼくの気分だから目の前でぼくだけ飲むってこともあるよ」
「はぁ??なんでだよ」
他愛のない話をしていたら睡魔が襲ってきた。ホットミルクのお陰だろうか。
「くぁ…。ねみぃわ、寝てくる」
「うん、おやすみ。」
手を振る焼きパンを背に自分の寝室まで歩いていく。
真冬の廊下はさっきより寒かった。
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