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各自が何度か練習をした後、ビーチバレー大会が始まった。ユウの【クリエイト】で作られたネットは頑丈でナジュミネの力でもそこまで大きく動かない。
ムツキは主審で、ケットとクーが対角線上に線審をしており、ユウは実況を嬉しそうにしている。ゲームをしていないチームがスコアラーをするようだった。
「勝利は誰の手に! ビーチバレー大会開催っ!」
最初は「ナジュミネ & リゥパ」対「サラフェ & キルバギリー」のゲームだった。
「いくぞ!」
ナジュミネが力任せのサーブを繰り出す。黄色とピンクの鮮やかなボールは少し柔らかく、当たっても痛いことはないがスピードも出にくい仕様だ。しかし、ナジュミネが打ち出すことで威力が桁外れになっている。
「私が受けます!」
キルバギリーがそう叫ぶより前に、サラフェは頷いて移動をする。キルバギリーはメインユーザーであるサラフェの同意があれば、サラフェとテレパシーのように意思疎通が可能なのである。
「【ファウンテン】」
キルバギリーが後退しながらボールを受けきり、サラフェが【ファウンテン】と唱えると、砂浜からいくつかの水流が噴水のように出てくる。その内1つがキルバギリーの受けたボールをトスし、別の1つがサラフェを上へと押し上げる。
「おっと、サラべえがいきなり魔法を繰り出した! ボールが高く舞い、そして、サラべえの超高度からの強烈なアタックだ!」
「リゥパ!」
「任せて!」
リゥパもキルバギリーに負けじと綺麗なレシーブをし、ナジュミネがトスを高く上げる。さらに、リゥパがナジュミネの方へと走り、ナジュミネが自身の前でレシーブのような構えをしたかと思うと、リゥパがそのナジュミネの手に乗って高く跳び上がった。
「ナジュみんがリゥぱんを持ち上げ跳ばした!? ボールとリゥぱんが太陽に重なるー!」
「アターック!」
リゥパの強烈なアタックが相手の陣地に突き刺さる。サラフェもキルバギリーも反応しづらい位置への正確無比な攻撃によって、対応が遅れてしまっていた。
「決まったーっ! まずはリゥぱんとナジュみんチームに1点だ!」
メイリがムツキに向かってセクシーなポーズをした後にスコアをペラっとめくる。
「さすがはあの2人。油断し過ぎていました」
「サラフェどうしますか? このままではご褒美が」
サラフェは一瞬、何か反応しかけた後に首を横に振っていた。
「いえ、ご褒美はどうでもいいのですが、負けるのも癪ですから勝ちたいですね。そうです、キルバギリー、サラフェに変身しなさい。連携の神髄を見せてあげましょう」
「了解です」
キルバギリーがサラフェの容姿に変化する。ただし、キルバギリーが水着を変えなかったため、サラフェのハイネックビキニとボーイレッグ姿が現れていた。
「ここでキルちゃんがサラべえになって、Wサラべえになった! どっちの水着でもサラべえはかわいい!」
2人のサラフェは、何か妙案があるようでニヤリと笑う。
「サラフェが2人か……面白い!」
「ナジュみんの強烈なサーブ再びか! やっぱり、激しい音だっ!」
ユウの実況とともに、ナジュミネの力任せのサーブが再び繰り出される。ボールはその圧倒的な力を受けて、歪んだ形のままに鋭くサラフェたちのコート内に侵入しようとする。
「【ウォーターウォール】」
「【フラッシュフラッド】」
そのボールの侵入を防ぐようにネット間際に水の壁が生まれ、その壁がボールを受けた直後に壁から鉄砲水が噴き出してボールをリゥパの手前に勢いよく落とす。
「ちょっと! そんな! ええっ!」
「おおっと、すごいぞ! まさかの水魔法のコンビネーション! 【ウォーターウォール】だけじゃブロックできても勢いが足らないけれど、それを【フラッシュフラッド】で補っている! すごい連携! 綺麗なブロック&アタック! そのボールがそのままリゥぱんの前に落とされる! これは決まるか!? これは決まるのか!?」
「いや、ユウ、いつもと口調が違っておかしいのもあるけど、よくある感じの時間を無視した超早口実況になってるぞ……」
リゥパは咄嗟に前に出て受けようとするが、僅かに間に合わず、ボールが砂浜に半分以上埋まる。
「決ぃーーーーーまったーーーーっ! サラべえ&キルちゃんが返して、同点だーっ!」
「おーい、ユウ、張り切るのはいいけど、その調子で喉は大丈夫なのか……」
ユウが激しめの動きをしていて、ムツキが彼女の方を向きながら心配して見つめている。結局、彼女が一番楽しんでいるようだ。
その後もパワースタイルのナジュミネ、それをフォローしつつ正確無比な攻撃を繰り出すリゥパ、水魔法を巧みに利用するサラフェとサラフェに扮したキルバギリーの接戦が繰り広げられ、サラフェたちが先にマッチポイントでリードする。
「ナジュミネ、がんばるわよ!」
「ああ!」
ナジュミネの掛け声とともに、リゥパの正確無比なサーブが放たれる。
「【ウォーターウォール】」
「【フラッシュフラッド】」
サラフェとキルバギリーが再び、サーブの直接ブロック&アタックを試みる。
「そう何度も、それを決めさせてたまるか!」
「早い! ナジュみんが分かっていたかのように落ちる場所へと滑り込んだっ! ボールを上げた! レシーブが成功だっ!」
リゥパの正確無比なサーブによって、サラフェたちが落とす場所もおおよそ当たりがついていたナジュミネが上手くレシーブをする。
「いくわよ、ナジュミネ!」
リゥパが高くトスを上げ、ナジュミネがそれに合わせるようにスパイクの体勢に入る。しかし、【ウォーターウォール】がまだ彼女の前に立ちはだかっていた。
「こんな壁などぉぉぉぉぉっ! 突き破ってくれるわっ!」
ナジュミネが渾身の力でボールに力をぶつける。
パァーンッ!
「えっ」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
ナジュミネ、リゥパ、サラフェ、キルバギリー、そして、ムツキが思わず素っ頓狂な声を上げる。
「ボールが……ボールがナジュみんの超怪力に耐えきれず割れたーーーーっ! ボールはサラべえたちのコートに届くことなく、ナジュみんのコートの中で虚しく割れてしまったーーーーっ! アウトッ! ゲームセット! この試合、辛くも勝利したのはサラべえ&キルちゃんだーーーーっ!」
「ユウ、落ち着けー。ちょっと落ち着いてくれー。女の子に怪力とか言うなー。あー、えーっと、この試合、サラフェとキルバギリーの勝ち!」
ムツキの宣言とともに、ナジュミネが膝をついて崩れる。リゥパは責めることもなく、優しく彼女の肩にそっと手を置く。
「次をがんばりましょ!」
リゥパの言葉にナジュミネは強く肯いた。