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第3話 人喰い花
「夏葵、ちょっと、夏葵ってば!何見てるの?」
鈴花に呼ばれて、夏葵はハッとした。
「あっ、いや、ちょっと….ワークが難しくて」
誤魔化しながら、とっさにノートを隠した。
夏葵は今久坂中の2年生だが、こんな噂、今まで聞いたこと無かった。
(いやいや、こんな馬鹿な話信じるわけ無いでしょ)
そう思って、でも少し、期待する。
(優夏……。本当に、会えるとしたら……?いやいや、そもそも七不思議自体ほんとにあるか分かんないし……)
そんなことを考えている間に鐘が鳴り、授業が終わった。
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「ふぅーっ…..重すぎでしょ」
帰りのホームルームが終わって、夏葵は大きなゴミ袋を抱えて裏庭を歩いていた。ジャンケンに負けてごみ捨てを任されてしまったのだ。
「早く帰りたいし、急ごっと」
ゴミ捨て場は裏庭の1番奥まで行ったところにある。なんでこんな遠くにつくるんだと思いながら、進んでいく。すると。
(ん?何、この花。見たことない…..。こんなの咲いてたっけ?)
そこには、血のように真っ赤な花弁の花が咲いていた。
夏葵は何故か、その鼻から目が離せない。そして、そっと手を伸ばした、その時。
グパァ
「ひゃっ?!」
夏葵は手を引っ込めた。
花は、真ん中から割れ目が出来て、真っ二つに割れていた。その割れ目には、人間の口のように、歯があり、舌があった。
夏葵が呆気にとられて花を見つめていると、
シュルルルッ
「きゃぁぁぁっ?!」
花の茎が伸びて、夏葵の腕に絡みついた。
腕をキツく締め上げ、花が噛み付こうとする。
「あっ、やめて!痛っ?!」
チクッと、腕に痛みが走る。夏葵はゴミ袋を花に投げつけた。一瞬、茎が緩んだのを見逃さず、茎を振り払って全速力で走っていった。