「祐希さーん、あがりましたー!」「んー」
浴室から出ると彼はベッドの上に座りスマホを見ていた。
「何見てるんすか?動物?」
話しかけながら、不自然にならないように隣に腰かける。シャワーを浴びたばかりだから臭くはないはずだ。まぁ、そうは言っても練習中に数え切れないくらい汗の匂いなんてバレているだろうが。
「そ、癒されるから練習終わりとかよく見てんの。」
「へー、いいっすね。今度俺にもオススメ教えてくださいよ!」
しかし彼はまだシャワーを浴びていないはずなのに、不思議といい匂いがする。もちろん汗の匂いもするが、こう、彼本来の匂いというか。もっと近づいて嗅ぎたい欲求に蓋をし、画面をのぞく。
「はは、藍も癒されたいんだ?」
「当たり前じゃないっすか!でも最近は子どものYouTubeとか見て癒されてますね」
「子どもかあ、俺も見てみよーかな」
そんなたわいも無い話をしながら彼はシャワーへ向かった。彼がいなくなり、大きくバウンドしてベッドに沈み込む。今夜ここに彼が寝る前に俺の匂いをつけて、マーキングまがいのことでもしてみようか。
「ふは、猫じゃあるまいしな。」
最近ふと、彼こと石川祐希を見ると自分の欲が顔を出すことが増えた。先程のように一緒に何かを見たりだとか、ストレッチ中にユニフォームから白い肌が覗いていたりだとか、そんな今までと大して変わりない日常に、欲が湧くのだ。もっと触りたい、もっと近づきたい、自分を見てほしい、自分に触れて欲しい、あわよくば二人で溶けてしまいたい、なんて挙げだしたらキリがない。そんな状況で同部屋になってしまった訳だから、少なからず動揺している自分がいた。さっきも、うっかりとその欲を晒してしまいそうになり焦った。
「こんなんで大丈夫かよ、俺…」
こうなったきっかけには心当たりがある。あくまで心当たりでしかないから断定はできないのだが。
本当に些細なことだった。練習中、ボールだけを見ていたために同じく練習中だった小川とぶつかってしまい、所謂床ドン状態になった時があった。
「っ、いってー!」
「それはこっちのセリフだわバカヤロー。早く退け!」
「えー、そんなつれないこと言わないでくださいよー!こんなイケメンに押し倒されて嬉しくないんですかぁ?」
「きゃードキドキしちゃーう、じゃねーんだわ。は!や!く!どけろ!」
「うぃーす、すんません〜」
彼とはいつも戯れあったりしていたのでその時もそういうノリになり、大いに笑い話となったかと思ったのだが、ふと、彼がじっとこちらを見ていたのだ。表情こそ何も掴めないものだったが、その目が、本能的に自分と同じ感情をうつしているのではないかと感じた。もしかして、と希望を抱いてしまうのは仕方ないだろう。俺だって人間だ、都合のいい解釈くらいしたくなる。
とまぁ、これかな?くらいの心当たりなのだが、逆に言うとこれ以外本当に何がトリガーとなったのかはさっぱりわからないまま、日に日に抑えがきかなくなっていた。ひとり悶々としているとシャワーの音が聞こえなくなっていた。そろそろ彼があがってくる頃だろうか。
ガチャ、とドアが開いた。
「あがったよー、ってあれ。藍まだ俺のベッドいたの?しかも寝てるし」
そう言われてハッとした。先輩のベッドに寝ていたなんてどんな失態だ。
「あっ、忘れてた…」
「気にしないからいいよ。それともベッドかわりたい?」
「いえ!そういう訳じゃないので大丈夫です!すいません」
「いいって、気にすんな。なんなら一緒に寝る?」
「は、え?!」
「ふ、冗談。驚きすぎでしょ」
なんだ、冗談かと笑おうとしたのだが、そうする前に彼が小さな声で、冗談じゃなくてもいいんだけどね、なんて言うから上手く笑えなかった。よいしょ、と彼が隣に座る。同じシャンプーと石鹸を使っているはずなのにやはり彼からはいい匂いがした。
「…祐希さん、気づいてる?」
「…何に?」
「俺、が思ってる、こと?」
「んーさぁ。」
ちらりとこちらを一瞥しながら冷蔵庫に向かいペットボトルを2つ持って戻ってくる。はい、と渡されるから素直に礼を言い受け取る。
聞いても、いいのだろうか。祐希さん、俺のことどう思ってるんですか、と。パキ、とペットボトルの蓋があいたタイミングで問う。
「…祐希さん、その、さっきの。」
「添い寝?してあげようか。」
「え」
「後輩じゃん。やましくなんかないっしょ?」
「あ…そう、ですね!でも俺緊張しちゃうから遠慮しときます」
笑え、上手に。そうだ、俺はただの”後輩”だ。なにを勘違いしていたんだろう。ひとり落ち込んでいく俺をそのままに、水を飲んだあと彼は言葉を続けた。
「緊張するんだ?…欲情じゃなくて?」
「へ、何、言って…」
「…藍が俺を見てる目って、たまにエロいんだよね。ストレッチしてるときとか、さっき風呂上がった時とかさ。バレてないと思った?」
つー、と触れ合った手をなぞられる。擽ったいけれど手をどける気にはならなかった。いや、触れられた部分が痺れて動かせなかった。
「やっぱり気づいてたんじゃないですか…」
「まぁ、ね。藍って俺が好きなの?」
ずいっと彼がこちらを覗いてくる。これは、正直に言っていいものなのか。少なくとも今までの会話の中に男同士だとか気味悪がる素振りはなかったが、面と向かって拒否されるのは辛すぎるから避けたい。
「…そうだって、言ったらどうするんですか。俺男だし。」
「そんなの知ってるけど。んー、付き合う?」
「え、な、待って。ほんとに言っとる?」
「うん。だって俺も藍のこと好きだし。あ、もちろん恋愛感情で。」
「…いやいやいや、うっそだぁ!」
「なんでだよ。信じられないならキスでもしてみる?」
え、と言う間もなく二人の唇が触れ合い、ちゅ、とかわいらしいリップ音とともに離れた。頭はショート寸前だ。
「…いやだった?」
「いや、なわけないけど…信じられない。」
「俺も大概分かりやすかったと思うけど気づいてなかったんだ。んー、ほら。この間練習中事故ってたじゃん。」
「小川さんと?」
「うんそう。押し倒してたやつ。あの時目合ったよね?」
「あ…はい。でも、えっと、自分の勘違いかと思って」
「違うよ、勘違いなんかじゃない。あの時俺嫉妬したもん。小川は気づいてたみたいだけどな。」
またもや驚きで目が見開かれる。なるほど、それであのとき早くどけろと何度も言われたということか。
「…いつから?俺のこと、す、好きだったって、」
「んー藍が自覚したのよりずっと前かな。」
本当に、信じられない。現実味がないってこういう事なんだと思う。でも相変わらず触れた手からは彼の熱が伝わってきて、そこだけが熱を持ち現実なんだと教えてくれる。
「…祐希さん」
「うん」
「俺、祐希さんのことが好きだよ。大好きだ。今も手だけじゃなくてもっと触れたいし近づきたい。俺だけを見てて欲しいって思うくらい。」
「うん…俺もだよ。」
「ね、抱きしめてもいい?」
「そんなこと聞くなよ」
照れているのか、少し赤い顔で笑った彼はどーぞ、と腕を広げた。ぎゅっと強く抱きしめる。やっぱり彼からはいい匂いがして、でも今までよりずっと濃くて、甘くて優しい匂いだった。首筋に顔を埋め、ちゅ、とキスをする。するとピクリと反応しきゅっと服を掴まれるから気を良くして尋ねた。
「ゆーき、さん。もっと、触っていい?」
「…」
無言に少し不安を覚えて顔を見ようと力を緩めた瞬間、天井が見えた。と思ったら目の前には彼の顔があって。
「え…」
「押し倒しちゃった。こんなイケメンに押し倒されたらドキドキするよな?」
小川の件の意趣返しだろうか。いたずらっ子のような笑顔を浮かべた彼は、部屋の証明も相まってかなんとも熱を孕んだ目だった。
「当たり前でしょ、心臓バックバク。」
でも。
グイッと彼のうなじに手を絡め引き寄せ、キスをする。最初は優しく啄み、口が開いたところで舌を絡める。
「…んっ、ふ、、ぁっ…ぷはっ」
「…ん、…っ、…はは、ゆーきさん顔真っ赤。かーわい」
「っるさ、てか位置変わってるし。」
「え、祐希さん俺のこと抱きたいの?」
「そりゃそーでしょ。俺も男だし。」
「…俺の体で勃つの?」
「え、わかんないけど」
勃つ、なんてはっきり言われて少なからず慌てているような彼に畳み掛ける。
「俺は祐希さんにめっちゃ興奮する。エロい目で見ちゃうし、抜いたことあるし。」
「ぬ、?!おま、はぁ?!」
「いざ本番、ってなって無理とか俺やだよ。ね、だから俺に任せて。ぜってー気持ちよくするし優しくするから」
ね?と、とびっきり甘い声で耳元に囁けば彼は頷いてくれた。
「…手加減しろよ。」
「うん、もちろん!」
暗転。
「ふっ、んぁ、、ぅっ」
「…ゆーきさ、きもちい?」
「っう、ん、、ぅあっ!、」
ビクッと弓なりに体がはね、今までと違う反応だ。もしかして、と思い柔らかなしこりのようなところをグリ、ともう一度押す。
「ん…ここ、いいとこ?」
「わかんな、けど、、あっ、ビリビリしゅ、ふぁ、る、っん!」
「やっと見つけた…ここがゆーきさんの良いとこやね」
「っも、そこ、ら、めっ、、、ぅんぁ、ふぅっ、やっ、」
涙目でいやいやと訴える彼はなんとも可愛らしくも官能的だ。そんな顔をされてはやめようにもやめられまい。
「あは、ゆーきさん、可愛い顔してる」
するりと顔を愛おしげに撫で、顔中にバードキスを降らす。
「んっ、…う、るさっ、、ふっぁ、」
「…もうちょい解さなきゃ、かな」
「っぇ、まだ、?」
「うん、もうちょっと、がんばろ?」
「…女じゃないから、乱暴してもいいのに」
「んー?だぁめ。女じゃないとか関係ない。祐希さんだから大事にしたいの。言ったやん、優しくするって」
「…ん、わかった、」
えらいえらいと頭を撫でつつ目尻に優しくキスをし、今度は乳首も弄りながら愛撫を再開する。
「んっ、ふぅ…、ぁっ、、んぁ!」
「ん、乳首、感じるの?えろ…」
「っる、さ、、ぃ、あ、」
次は後ろを解しつつ、祐希のものを優しく扱く。
「あっ、や、まえと、いっ、しょむり、、!らん、、んっあ!イきそ、、ぅ!」
「いーよ、ゆうき、イッて?」
「〜〜~っ!イッッ!」
ぴゅる、と白濁がはねる。もういいかなと指を抜き、己のものにゴムを被せる。
「ゆーきさん、俺の受け入れてくれる?」
「、ん、いーよ、、来て?、」
はやく、ほしい。
なんて耳元で囁かれるから我慢なんか期待しないで欲しい。
「っ、いれるよ、」
「っんぅ、あっ、、らん、!ふ、」
「はぁっ、、きつ、ゆーきさ、いたくない?」
「う、ん、、はぁ、ぅぁっ、、ぜんぶ、はいった、、?」
「ごめん、まだ半分くらい、、もうすこし、がんばって、!」
「ひっ、、〜〜~っあぁ!」
一気に打ち込むと祐希のナカが痙攣しているようだった。
「ふぅ、、入ったよ、ゆーき。だいじょぶ?」
「〜〜~っ、ふ、」
「ゆうき、息して。こっち見て、ほら」
「っはぁ、う、、はいった、?」
「うん、ありがとゆうき。受け入れてくれて」
「ん、うん、、なんか、お腹あったかいや、」
見て、と自分の腹のあたりを指さし、微笑む顔のなんと扇情的なことか。
「ここ、藍がいるって、わかる、、」
「っ!ね、もうあんまり煽んないで、優しくしたいから」
「いーよ、優しくしなくて。もっとほしい、から」
「…!ほんと、勘弁してよ」
動くよ、と言い、ゆさりと腰を動かし己のものを祐希へ打ちつける。
「あっ、!ふ、、んぁっ、やっ、!」
「っ、は、、」
いやらしい水音が部屋に響く。この辺りかな、と先程見つけた祐希の良いとこを狙う。
「〜〜っあ!!そこ、ら、めっ!なんか、きそ、ぅ、!んんぁ!」
良い反応を示すから、ピストンのスピードをあげてみる。
「ふ、あたり。きもちい?」
「うっ、ん、、!イきそ、!ぅあ、、」
「ふっ、俺ももうイくから、いっしょイこ?」
「ぅん、!ふっ、、〜〜~ぁあっ!!」
「〜〜くっ、ふぅ、」
ビュル、と祐希の白濁が腹に吐き出されるとともに藍も祐希のナカで果て、ずるりと引き抜く。二人の荒い息が部屋を満たしていた。
「はっ、はぁ、ゆうき、大丈夫?」
「ん…ぅ、だいじょぶ、」
ぎゅっと抱きしめ合い、そのままベッドに向かいあって沈む。
「はー、幸せだ、ほんと。」
「…うん、俺も。藍、愛してる」
「!おれも、愛してるよ、祐希さん!」
「はは、お前さっき呼び捨てしてたくせに。」
「えーだって、なんか、すっげぇ興奮したんだもん」
「…じゃあ、えっちの時は呼び捨てで呼んでよ。正直俺も、ゆーきって呼ばれて興奮した、し。」
「いいの!やった!」
「そんな嬉しい?かわいいやつだな」
「えへ、祐希さんのがかわいかったよ?」
「…うるさ、」
これからもこんな幸せな日々が待っていると思うと胸がポカポカと暖かくなってくる。目の前には最愛の人がいて、熱を分け合い、その余韻に浸れることのなんと幸せなことか。もう知らなかった頃には戻れない。
ーーーねぇ、祐希さん。これからもずっと、俺を、俺だけを見ててよ。
コメント
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初コメ失礼します 文才過ぎます、最高でした! フォロー失礼します
最高でございます (๑´ロ`๑)~♪❤️