コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
山ちゃんの誕生日が過ぎ、1学期の修了式がやってきた。ムシムシとした体育館では、足を崩して汗を拭うものや、体操座りをしたまま寝落ちするものなど、誰1人として教師の話を聞いてはいなかった。それは瑠美ら3人も例外ではなく、少しだけお互いに近寄り、夏休みの計画を練っていた。
「で、この映画って平日に初上映なわけ。だから人少ないの。そんときに観に行きたいんだけど、2人って行ける?」
「行けるぞ。」
「行けますよ。近くにいい感じのカフェもあるので、そこも寄りましょう!」
2人は口を揃えて首を縦に振る。その瞬間、瑠美は気付いた。いや気付いてしまった。カタハッシーがこちらをじっと見つめている事を。瑠美は2人に一瞬だけ目配せをし、すぐ前を向いてしまった。2人もカタハッシーに気付いたのか、元の位置に戻ってピンと背筋を伸ばした。冷や汗を掻きながら、全く頭に入ってこない教師の話に耳を傾ける。頭にあるのは大さじ10杯分の楽しみと、小さじ1杯分の不安だけだった。
かろうじて3人は呼び出されることはなく、放課後の教室で作戦会議の続きを始めた。
「やっぱ海行きたいなぁ〜。あ、それと夏祭り!」
「いいですねー夏祭り!なんだか浴衣が恋しいです。」
2人が夏祭りに思いを馳せるなか、瑠美はコソッと言う。
「祭りが舞台の夏物語か…。なかなか良いな。」
「え、なになに?」
2人は思わず前のめりになって瑠美から詳細を聞こうとする。
「実はある出版社が漫画や小説を募集し、選出された作品3点を実際に出版するという企画をするらしくてな。その作品を考えておったのよ。」
それを聞くと2人は目を大きく見開いて立ち上がり、本当か⁉︎と叫んだ。無論、瑠美は首を縦に振り、協力して欲しいと手を合わせる。これまた無論、2人は首を縦に振った。
「お祭り舞台にして書くんでしょ?だったらやっぱ実際に行くのがベストだよね!」
「募集が終了するのっていつですか?」
「9月5日だ。」
「なら余裕!隣町のおっきな祭り行こ!」
「いやいや、ここは地元のこじんまりとしたのをじっくり回るのが…」
「はぁ!?そんなんじゃ飽きるって。ねールルミン?」
「いや、私はよく分からないのだが…」
「ほらね!言ったとおりです。隣町の祭りなんて、いちいち誰も行きませんよ!」
「そういう意味じゃ…」
話は盛りに盛り上がり、結局のところ両方の祭りを回るという結果に落ち着いた。というのも、瑠美が半ば強制的にそれでいい、と話を中断させたのだ。そして、瑠美は中間管理職の苦労(?)を知った。