よくわかんない関係性です。
ナムギュside.
あの男の背中は、どこかしら美しかった。
まるで最初から、壊れるために存在しているように。
俺はアニキが嫌いだった。
230「おまえ彼女いんのか?笑」
簡単に人を裏切るし、嘘をつくし、嘲笑う。
死体の山に座って、あたかも“それが当然”のような顔をして。
でも俺は知ってる。アニキが夜中、ひとりで泣いていることも。
誰にも見せないように歯を食いしばって、拳を壁に叩きつけてることも。
124「アニキ〜、違いますよ笑」
アニキは俺をどう思ってるんだ。俺はアニキを憎んでる。
でも、お前が誰かに触れるたび、俺の中で何かが崩れていく。
殺したいほど、愛してる。壊したいのに、壊されたくてたまらない。
230「ナムス絶対いるだろ!!」
124「アニキは絶対女困らないでしょ!?」
「ナムス」
その声ひとつで、俺の中にあるすべてが崩れる。
ああ、やめろ。呼ぶな。俺の名前なんか、呼ぶなよ。
嬉しそーな顔しちゃうだろ。
アニキにだけは、そんな顔、見せたくないのに。
124「…なんで来たんですか?」
部屋は狭い。逃げ場なんて、最初からない。
サノスは黙って、俺の向かいに立った。
まるで俺の呼吸に合わせるように、息をしてる。
それが気に食わない。けど、それすらも愛おしいなんて、俺はもう終わってる。
230「別に。お前の顔が浮かんだから。」
その言葉が、喉の奥に鈍い痛みを残す。
サノスはそういう嘘を簡単につく。
だけど、たまにほんの一瞬だけ、それが本当みたいな目をする。
124「…ほんとのこと言ってください。」
230「ナムス、お前…最近、俺のこと避けてるだろ」
怒ってるわけじゃない。責めてもいない。
けど、俺の心をぐちゃぐちゃにかき回すには、それで十分だった。
124「…アニキが気持ち悪いからです。」
うそだ。
ほんとは、好きで好きでどうしようもない。
でも俺の好きは、アニキを綺麗にするんじゃない。
アニキを縛って、腐らせて、俺だけのものにする。
そんな好きだ。サノスが近づいてきた。
もう腕が触れる距離。心臓が爆発しそうなのに、俺は動けない。
230「俺、お前にだけはウソつきたくないんだよ。」
その瞬間、心の奥で何かが軋んだ。
痛いほど愛しかった。
124「だったら…」
言いかけて、俺は口を噤んだ。
言ってしまえば、もう戻れない気がした。
でも、もう戻れる場所なんて、どこにもないのに。
124「だったら、いっそ…俺を殺してください。」
静寂が、落ちた。
アニキの手が、そっと俺の頬に触れた。
優しくて、熱くて、ずるい。
230「それは無理だ。お前にだけは触れたいんだ。」
そんなふうに、綺麗な声で、俺を汚すな。
アニキなしじゃ、息もできない。やめてくれ。
その夜、アニキは帰らなかった。
いや、帰る気なんて最初からなかったんだろう。
玄関の扉を閉めた音が、まるで逃げ道を断ったみたいに響いた。
俺たちは会話なんてしなかった。
ソファの端と端、わずか数十センチの距離に座って、
テレビもつけず、酒も飲まず、ただ黙って時間が過ぎていくのを見ていた。
けどその沈黙が、いちばんうるさい。
アニキの目が、ずっと俺を見ていた。
正面からじゃない。盗み見るみたいに。
そのたび、俺の中の“アニキがほしい”が疼いた。
124「…なんか言ってくださいよ。」
俺が呟くと、アニキは少しだけ笑った。
230「ナムス、喋ると怒るだろ?だから黙ってただけだ。」
124「じゃあ帰ってください。」
230「でも帰れって言ってないだろ。」
…そうだった。
言ってなかった。言えなかった。
アニキが帰ってしまうことが怖かったから。
沈黙の中、アニキがそっと身を乗り出してくる。
息がかかる距離。俺の指先が震えるのをアニキは気づいてるのか?
230「お前、俺が誰かと喋ってるとき睨んでるだろ?」
124「…見てたんですか?」
230「見てなくても分かる。おまえのそーいうとこ全部頭に入ってるから。笑」
言葉が身体の奥に落ちていく。
この男はいつも俺の壊れかけた部分だけを、的確に拾い上げてくる。
124「…俺は、アニキに近づくの、全部殺したくなります。」
それが嘘じゃないことを、俺は知ってる。
だからこそ、ぞっとした。
230「それが愛だと思ってるのか?」
230「…ま、愛じゃなかったらこんなに苦しくないか。」
気づいたら、俺はサノスの襟を掴んで、引き寄せていた。
124「だったら、俺を壊して。ちゃんと全部俺のもんにしてくださいよ!!」
唇が触れる寸前。息が重なり合うその距離で
アニキは微笑んだ。
230「…ナムス、もうとっくに壊してるっつーの。」
その言葉が、俺を一番深く壊した。
熱が、皮膚から染みてきた。
息が乱れて、互いの体温が混ざっていく。
アニキは優しかった。だからこそ、腹が立つほど愛しくて、憎かった。
124「…なんでそんな顔するんですか。」
230「どんな顔だよ?」
124「俺のこと可哀想だと思ってるでしょ。」
アニキは答えなかった。
答えないその沈黙が、一番俺を傷つけた。
何もかもが気に入らなかった。
その手の動きも、視線も、俺の名前を呼ぶ声さえも。
でも、それがないと生きていけないくらい、アニキでいっぱいだった。
ふたりはベッドの上で繋がって、境界線なんてとっくに崩れていたはずなのに、
俺の心の中には穴が開いたままだった。
どうして、こんなにも満たされない?
どうして、こんなにもアニキがほしい?
124「…アニキ」
230「んだよ。」
124「俺のこと見てますか?」
230「見てる。お前しか見てない。」
嘘でもいい。
そう言ってくれるだけで、また生きていける。
でも…、
翌日。廊下で見た。
アニキが、あの女と話してるところを。
エンジニアの女。冷静で、無駄なことを言わない女。
サノスとは正反対のようで、妙に馬が合っていた。
笑ってた。アニキが、俺には見せない顔で笑っていた。
その笑顔が俺の中の理性が消えた。
俺の視界から血の色が消えていくような感覚。
全身の温度が、一気に落ちていく。
その夜、俺は部屋でアニキを待った。
一切の明かりをつけず、ソファの端でじっと座っていた。
音もなく帰ってきたアニキは、俺を見てすぐに顔を曇らせた
230「お前なんかあったのか?」
俺は答えず、ただ見ていた。
その顔、その目、その口元。
全部、あの女にも見せたのか。
124「…誰と話してたんですか、」
230「あ゙?」
124「昼間、廊下で誰かと話してたでしょ。」
少しだけ驚いた顔をした。
でも、過去に自分も経験をしたことがあるようで
どことなく懐かしそうな感じをしてた。
230「ただの世間話だ。それだけで怒るのか?」
怒ってない。
怒ってなんかない。
ただ、ただ狂いそうなだけ。
230「…嫌か?」
俺は黙った。
本当は、命令じゃなくて、懇願だった。
祈るように、願ってるだけだった。
けどアニキは、俺の手を握った。
230「わーった。お前だけだぜ、ナムス。」
それでも俺は信じられなかった。
その手が、あの女にも伸びるかもしれないと思うだけで、胸が引き裂かれそうだった。
だったらいっそ、アニキのその手、折ってしまいたい。
朝が来た。
光が差し込む部屋で、俺たちは背中合わせで座っていた。
昨夜、アニキは何も言わずに俺を抱いた。
優しすぎて、残酷な手だった。
欲しがれば欲しがるほど、何も手に入らない。
愛してるって言ってくれたら、殺せたのに。
230「ナムス。」
その声に、俺はもう何度壊されたか、わからない。
124「…名前呼ばないでって言ったじゃないですか。」
230「や、それ以外呼び方知らねーし。」
ふざけんなよ。
アニキの背中はあたたかくて、でも遠かった。
あんなに近くにいたのに、ずっと手は届いてなかったんだ。
124「あの女と何があったんですか?」
ああ、そうか。
そういうことか。
俺は立ち上がった。
ベランダに出て、冷たい空気を吸い込む。
背後で、サノスの気配が近づく。
手を伸ばせば届く距離。
124「…アニキは俺のことあいしてましたか?」
小さな声で聞いてみた。
もう、期待なんてしてない。
それでも、
230「…分かんねぇ。お前が俺を愛した分俺がお前に甘えただけかも。」
ひでーな。
そんな言葉で俺を殺すなよ。
124「…もう出てってください。戻ってこないで。」
230「…ナムス、」
124「名前、呼ぶなっつってんだろ!!!!!」
どれだけ怒鳴っても涙は止まらなかった。
そして、サノスは何も言わずに出ていった。
背中すら見せずに。まるで最初から、そこにはいなかったみたいに。
夜になっても、アニキは戻ってこなかった。
スマホも鳴らない。誰も来ない。
それでも俺は、いつもの場所に座ってる。
ソファの端。アニキが座っていた場所の隣。
触れられる距離で、触れられなかった空間。
誰もいない部屋で、俺はただ、呟いた。
124「…サノス。」
誰も答えない。
もう、あの声は戻ってこない。
でも、俺はまだ。
まだ、アニキの名を呼んでしまう。
それだけが、俺に残された呪いだった。
おわりっす。
ナムギュは最後まで報われなかったしサノスは逃げたんじゃなくて壊れてたんでしょーね。
しらんけど。
コメント
9件
// 報われない。またこれもいい!
どっちも結局報われない感じ大好きだぁぁぁぁぁ
ぁ あ ゛... 、何 でだ ろう 。 目 殻 滝が溢れて来 タ ぞ ぉ __ ? (最高で ス 斗いう事 です !)