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フリガナありがとうございます! 続き待ってます!
難しい漢字にフリガナをふっておきます。 ・天蓋(てんがい) ・敷布(しきふ) ・皺(しわ) ・男.娼(だん.しょう) ・寧ろ(むしろ) ・如き(ごとき) ・漸く(ようやく) ・刺繍(ししゅう) ・躰(からだ) ・蝕む(むしばむ) 閲覧ありがとうございました。
・ ワ ン ク ッ シ ョ ン ・
・w.r.w.r.先.後.組 、 オメガバ ・
・ご本人達に関係❌・
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【 前 書 き 】
初めまして、読者の皆様。中の人の姉です。
創作意欲が掻き立てられたので、文にしてみました。気に入って頂けると幸いです。
ご本人様達が今、大変な状況だということは皆様も知っていらっしゃいますでしょうが、私達にできるのは無事を願って戻って来て下さることを祈るのみです。
それなら私は私に出来ることをしよう、と思い立ったらこの作品の筆を進めていました。
今後とも何卒よろしくお願いします。
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『 俺が あんたを 愛することは 無い。 』
これはコネシマが結婚初夜、寝室へやって来た夫に言われた言葉だ。
天蓋付きの豪華な寝台に、絹地を贅沢に使った敷布。部屋の隅に置いてある調度には、繊細な細工が施されていたし、屋敷はどこまでも広く大きかった。
その少々居心地の悪い寝室で、コネシマは呆然と目の前の男を見上げる。
焦色の茶髪に深い紫を落とし込んだ瞳。神経質そうな男は、眉間に深い皺を刻んだままでコネシマを睨んでいる。その冷たい色の瞳に映るのは、間違いなく嫌悪だとコネシマは理解していた。
しかし、この男がそんな視線を向けるのは初めてではない。寧ろ、今までこの男と過ごしてきた僅かな時間は、終始ものすごい顔で睨まれていた。
つまり、コネシマは男のそれ以外の表情を知らないのだ。だから、まかり違っても男から好意を寄せられているとは思ってない。
それでもこの男は、「責任」を取ってコネシマと「結婚」してくれた。結婚してしまった以上、少なからず優しく、それなりに歩み寄ってくれると思っていた。けれども。
── めちゃくちゃ嫌われてるやん。
当の本人には自覚がないらしい。
剥き出しの敵意に、コネシマは一瞬固まってしまったが、すぐに気持ちを切り替えた。
結婚してしまった経緯が経緯なだけに、男がコネシマを嫌う理由も理解できたし、コネシマとて自分を嫌う人間に無理してまで好かれたいとは思わない。
オメガであるコネシマは番となり結婚した以上、この目の前の男と末永く一生を過ごさねばいけない。だからこそ、仲良くとまではいかないが、それなりの関係を築けたら と思っていた。
しかし、本人にその気がないのなら仕方がない。
そのことを瞬時に理解し、僅かな期待はすぐ捨てた。
つい最近まで男娼をしていたコネシマは、そういう引き際をよく弁えていた。
これまでの人生の中で、コネシマが学んだのは「諦めが肝心」ということだ。夢を見るのも相手に期待をするのも、恵まれた人間にのみ許された特権だということを、コネシマはとうの昔に理解していた。
とはいえ、少しの寂しさはある。
これからの生活を思うと溜息をつきたくなったが、それは流石にだめだろうと我慢した。
目を細め、口角を上げる。これまでの経験上、自分が一番可愛らしく見える笑顔を作って、コネシマは男に言った。
「 … 分かり ました 。 なら 、 今晩は どうしましょうか。 」
『 … 別々に 寝る 。 それしか ないやろ。 』
「 かしこまりました 。 」
予想通りの男の言葉に、しかし、とコネシマは笑う。
「 俺は どこに行けば ええでしょうか。 」
これまでの数度の面会はコネシマのいた娼館で行われ、今日の結婚式を待って漸く引っ越してきたのだ。故に、屋敷の勝手が分からない。
そのことに男も思い至ったのだろう。苦虫を噛み潰したような顔は、整っている分、すごく妙に見えた。
夜の帷は降りきって、不寝番以外の使用人たちはもうみんな業務を終え、就寝している。
コネシマ如きの為に、わざわざ呼び付けて新しい部屋を用意させる訳にはいかないはずだ。
男は目下の者に対し、理不尽な要求をするような体には見えない。少なくとも、名前ぐらいしか知らないコネシマの為に、大事な部下を使うような人間には見えなかった。
『 … 俺が 書斎で 寝るから ええわ 、 もう 。 』
コネシマの問いに、男は予想通りの言葉を返した。唸るように吐き出されたそれを、コネシマは満面の笑みで受け入れる。
無論、廊下で寝ろと言われれば、即座に部屋を退室できるように準備はしていたが。
「 分かり ました 。 では 、 俺は ここで
寝ます。 おやすみ なさい。 」
そう言って早々に、寝台へ潜り込んだ。滑らかな絹の敷布が肌に当たって気持ちが良かった。
豪華な刺繍が施されている掛布を、肩まで被り目を瞑れば、睡魔があっという間にコネシマの躰を蝕んでいった。
↝ to be continued .