✗月✗日 水曜日
水曜日は早く帰らなくちゃ。
そう思い、足早に家へと急ぐ私は成海聖奈。
23:00、遅れないようにしなくちゃね。
鼻歌交じりに玄関の扉を開け一息。
ちゃんと手を洗って、うがいもして
喉のケアは大切だし、手も荒れたら困っちゃう。
ちゃんと水気を切ってと…
あ、そうだ、洗濯物出しっぱなしじゃない?
危ない危ない、忘れちゃうところだったよ
……って、もう23:00ッ!?
スマホスマホ…
ふぅぅぅ……
よし、かけよっ
何度目かのコール音で、君は声を聞かせてくれた。
私が一番、聞きたかった声なんだ。
「もしもし、聖奈?」
「もしもし!」
「っはは、えらい息上がっとんなぁ」
「帰ってきたばっかで、ドタバタしちゃって…」
「そうか、御苦労さん」
「…ふふっ、ありがとう翠くん」
水曜日は特別な日。
キミと話せる特別な日。
リアルで会うのは難しい
でも声だけは聞いても良いんだよね
会えなきゃ死んじゃう、でもちょっとの我慢は必要。
「普通」じゃない「私達の普通」
「聖奈は今日はドラマの撮影か?」
「…なんや、恋愛ドラマやったっけか」
「あれ、もしかして彼氏役に嫉妬した…?」
「声も聞いたことのない同じ学校の人」だったキミ。
ある日の偶然、傘を渡した。
「濱中くん」だったキミ。
今よりかは少し遠かったけど、一緒に居られて嬉しかった。
「翠くん」の今のキミ。
お仕事は応援してくれるけど、ちょっぴり拗ね気味が可愛いね。
「私の彼氏は翠くんだって、言ってるでしょう?」
「私がドキドキするのは翠くんだけよ」
「ッうぇ!?!?」
「あ、照れた」
「て、照れてへんわ!!!」
そういうところが可愛い。
な〜んて、言ったら怒るよね
毎週水曜日
声を聞く23時
今日も大好きだよ、ありがとう
「翠くん」
「ん?なんや?」
「あいしてる」
「…は」
「おやすみ♪」
「え、ちょッ」
強引に切っちゃってキミとの電話
でも、もっとお話しててよかったんだよ…?
ピロン♪
そう思う私に届いた通知
「俺も」
…もう、そういうとこだよ
苦笑して私は、通知をタップした。
コメント
5件
久しぶりのるとねちゃんの小説っ!! 最高です、、、✨