大人の俺でさえ、校長先生の話は飽き飽きする。 まだ中学生のみんなにとっては硬い床に座らされて眠くなるような話を聞かされるなど、拷問以外の何でもないだろう。
襟内煙
しかし、今日の始業式はあっという間に感じられた。 校長先生の話など、ほとんど耳に入ってこない。
俺の視線はずっと彼に向いていた。 少し猫背で、表情にはどこか冷めたものがある。それでも、眠ることなく話に耳を傾ける様子が妙に目を引いた。
始業式が終わり、学活の時間だ。 この時間はみんなにも自己紹介をしてもらうことにする。
生徒
生徒
各々自己紹介を進めていき、とうとう例の生徒の番になった。
襟内煙
短く言い切ると、彼は一礼してすぐに席へ戻った。 他の生徒が好きな食べ物や趣味について楽しそうに話していたのとは対照的に、彼の自己紹介はあまりにも素っ気ないものだった。
「……それだけ?」 思わず口に出そうになるのをぐっと堪える。だが、胸の中でふと湧いた疑問が消えない。 彼の声、仕草――すべてが謎めいている。もっと知りたいと思う自分がいることに、少し驚いた。
コメント
1件
襟内煙ってすごい名前だなぁ