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#塩レモン
りちこ
200
4U~
255
のりもちさん
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コメント
1件
──ああ、もう、やられました…。 いるまが「笑ってろ」って言ったとき、心臓がぎゅっとなりました。あの、噛みつきが「おあいこ」の証で、ちゃんと“赦し”の形になってるのが、すごく彼らしいなって。でもそれ以上に、なつくんが最後に「出会わなければよかったのに」って言ったことをちゃんと反省して、指輪にキスまでする流れ…もう、もうね。三日月さん、この二人の関係性をこんなに丁寧に描けるのは、ほんとにすごいです。読んでて心がぽかぽかしました。
暇72
震える両手で顔を覆い
ただひたすら
呪文のようにそう唱え続ける
濁流のように次々と押し寄せてくる記憶の波
頭が割れるように痛い
息がうまくできない
苦しい
全て思い出した
この施設で 実験にひたすら耐え続けて過ごしたあの日々も
感情を殺し 命令されるまま人を殺めたときの
なんとも表現し難いあの気持ち悪さも
満月の夜に
最愛の元相棒をこの手で傷つけてしまった あの絶望感も
この世に生を受け
死に
また生まれて
また死に
何度も何度も繰り返したこの
何十年、何百年の歴史
心の奥底に眠っていた数多の記憶が今目覚め
俺の身体中を犯している
ああ
死にたい
暇72
俺の精一杯の怒声に怯む気配もなく
部屋の隅っ子に蹲る俺に近付く紫の髪の男
来るな
来ないでくれ
どんな顔してお前と向き合えばいいのか
分からないんだよ
暇72
暇72
歩みを止めようとしない彼
そんな彼を突き放そうと再度叫んだ俺は
突如全身を襲った新たな刺激に ビクンと肩を震わせた
痛い
恐る恐る瞼を上げる
その視界に入った…いや、覆っていたのは
均整の取れた立派な胸板だった
俺は彼、いるまに
抱きしめられていたのだ
しかも
いつものような優しいハグではない
まるで締め上げられるような力強い抱擁
「 俺はここにいる」
「安心しろ」
そう言っているような気がした
彼の熱が
俺の冷え切った体をじんわりと解していく
気付けば俺は
彼の胸に縋り付いて泣いていた
暇72
暇72
俺の口から吐き出されたのは
この何十年、何百年と溜めてきた弱音
俺がもっと強ければ
助けられたかもしれないのに
俺がもっと強ければ
いるまを見殺しにしないで済んだのに
いるまだけじゃない
罪のない人も…
たくさん殺してしまった
許せない
記憶を封印して
何もかも忘れて
毎日呑気に生きてきた
そんな自分が許せない
………
なぁ、いるま
お前は一体
どんな思いで
俺を拾った?
どんな思いで
毎日飯を作ってくれていた?
どんな思いで
その優しくてあたたかな黄色の瞳に
俺を写していた?
いつ思い出すかもわからない
もしかしたら
一生忘れたままかもしれない俺と
どんな思いで…、この3年間を過ごしてきたんだ
……、…ッ
こんなことになるなら
こんなにもいるまを苦しめてしまうのなら
もう
いっそ………
暇72
ぞわっっっっ
寒気を覚えたときにはもう遅かった
後頭部と両肩に走る鈍い痛み
暇72
思わず顔を歪め
小さな呻き声を漏らす
そんな俺を見下ろしたのは
俺をこんなふうにした張本人
いるま
彼は
まるで獣のように乱暴な手つきで 俺を押し倒し
俺の上にまたがった
逃げ道を塞ぐべく
がっちりと掴まれ床に押し付けられる手首
剣を振るう彼の鍛え上げられた腕から
逃れられるはずもない
いるま
だんだんと迫る荒い息遣い
次の瞬間
ガリッ
暇72
俺の首元に顔を埋めるいるま
彼のふわふわな紫色の髪が鼻先をくすぐった
暇72
とっさに彼の名を呼ぶ
ピクリと反応するいるま
暇72
彼のゆっくりと持ち上がった顔のある一点に
俺の目は釘付けになった
人よりも目立つ八重歯を持つ彼の口
そんな魅力的な口元から
真っ赤な液体が滴り落ちていたのだ
噛まれ…た、?
そう自覚したとき
俺はようやく
自身の首筋から広がる痛みを知覚した
いるま
暇72
理解できない
彼の起こした行動も
発した言葉の意味も
何もかも分からない
いるま
いるま
いるま
いるま
混乱した俺を無視して 立て続けに質問し続けるいるま
暇72
いるま
俺からの返答が期待できないと分かるやいなや
彼は再び俺の首元に顔を寄せた
がぶり
暇72
全身を素早く駆け回る鋭い刺激
…………ヌル
暇72
続いてやってきたザラザラとした感触に
小さな悲鳴があがる
こいつ…、ッ
まさか舐めt………
暇72
まるで猫にでもなったかのように
首元の傷口をざりざりと舐めるいるま
暇72
思わず漏れ出る吐息
も…ッこれ以上は…………ッ、!
暇72
暇72
とうとう我慢の限界がきた俺は
大声でそう叫び
白旗を上げた
ピタッと静止する彼
首元から顔を離し、ゆっくりと起き上がる
暇72
一体なんだったんだ
いきなり噛み付いてきやがって
そんで
「痛い?」ってなに
何の確認?
いや、そりゃ痛かったけどね?!
痛かった、……けど
………ッなんつーか
その、………
変な気分になった……、っつーか?
暇72
感触が蘇る
彼のざらざらときた舌が
俺の首元を這いずり回るあの感触
まじで何がしたかったんだ
あんなの
まるで…………ッ
少し血流の良くなった頬を気取られぬよう 顔を横にそらす
ぐいっ
暇72
俺のその行動が不服だったのか
彼は俺の顔をその右手でがっしりと鷲掴み
無理矢理正面に向けさせた
暇72
口をうまく動かすことができず 言葉が少しもごつく
いるま
俺の顔を覗き込みながら
その返答をもう一度確認する彼
暇72
俺が軽く頷くと
彼は俺の顔を掴んでいた手をパッと離し
満足したような、安心したような笑顔を見せた
いるま
いるま
………え?
暇72
いるま
暇72
暇72
暇72
唐突に告げられた終了のお知らせ
当然
俺は戸惑った
だが彼は焦る様子もなく
冷静に説明し始める
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
暇72
いるま
なおも理解できない、と首を傾げる俺に
彼は軽く笑ってまた口を開いた
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
暇72
いるま
いるま
いるま
いるま
血が滲む首筋の傷を優しくなぞる彼の手
暇72
暇72
いるま
いるま
そういって彼は
無邪気にニッと笑ってみせた
なんだよそれ
そんなんで
俺の罪が許されるはずが………
暇72
俺は拳をぐっと握りしめてそう言った
いるま
暇72
暇72
暇72
暇72
いるま
暇72
暇72
いるま
暇72
暇72
暇72
暇72
悔しげに目を伏せる
ああ、泣きたい
が
生憎
既に散々泣き喚いた直後
涙など、とうに枯れ果ててしまっていた
いるま
暇72
しばしの沈黙
いるま
暇72
徐に自身の髪をくしゃくしゃとかき回し
癇癪をあげるいるま
いるま
いるま
いるま
彼がふう、と軽く息を吐く
たちまち
この部屋に漂う空気が一変した
異変を察知しておそるおそる顔を上げる
そんな俺の視界に映った彼は
鋭い眼差しをこちらに向けていた
彼の口がゆっくりと開く
「舐めんな」
暇72
その言葉に込められたあまりの威圧に
一時的にフリーズする思考
驚いた
初めてだったのだ
彼から
こんなにも静かで重い 本気の敵意を向けられたのは
暇72
言葉が出なかった
ただ唇がはくはくと動くだけで
呻き声の一つも発せない
そんな俺の顔を もう一度がっつり掴み直した彼は
食ってかかる勢いで
畳み掛けるように言葉を叩きつけた
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
いるま
ぜーはー、ぜーはー、と肩で息をする彼
怒りで真っ赤に染まった顔
震える手
彼の体から伝わる、バクバクと速い鼓動
初めて気付いた
「出会わなければよかったのに」
あれは
決して言ってはならない言葉だった
数年前の記憶が蘇る
普段は温厚なあの人…恩師でさえ
俺がこの言葉を口にしたときは
心の底から本気で怒っていたっけ
なにが「また傷つけるかもしれない」だ、俺
あんなこと言っておきながら
今いるまを一番傷つけてんのは
俺じゃねーか
次々と押し寄せてくる後悔の念
ああ
俺はなんて
愚かな人間なのだろうか
いるま
暇72
ようやく息の整ってきたいるまが
俺の名を呼ぶ
全身に緊張が走る
心臓が痛い
何を言われる?
彼に何を言われても
文句は言えない
どうしよう…
怖い
怖い
怖い
まともな覚悟も決まらないまま
彼が次に発する言葉を待つ
いるま
いるま
いるま
いるま
暇72
どうしても慎重になる返事
いるま
ぐいっ
暇72
仰向けの俺にまたがったまま
腕をぐいと引っ張って俺の体を起こすいるま
そして
両手でそっと
俺の頬に触れた
いるま
暇72
泣きすぎて赤く腫れ上がった目元を
彼の親指が優しくさする
いるま
いるま
いるま
そう言って
彼はふわりと微笑んだ
張り詰めていた空気が
一瞬にしてほろりと溶けていく
暇72
な
な
なんだってこいつはッ
頬が熱くなっていくのが自分でもよくわかる
誰が見ても明らかな変化に 彼が気付かぬ筈もなく
いるま
いるま
いるま
暇72
図星だ
俺は照れ隠しで
軽く悪態をつくくらいしかできない
いるま
俺をからかって遊ぶいるま
「楽しそうだ」
そう思った
屈託のない満面の笑み
俺が大好きだった笑い方
そうか
もしあのとき
あの表通りで
いるまが俺を見つけてくれなかったら
俺は一生
この笑顔を見られなかったかもしれない
俺の頬に触れる彼の両手
俺はその両手の上に自分の手を重ね
彼の黄色の瞳を真っ直ぐに見つめた
こちらの視線に気付き
見つめ返すいるま
交差する視線
やめよう
ゆっくりと目を閉じた
もう自分を追い込むのはやめよう
そんなことしたって
何も変わりはしないのだから
ズクン
いるまに噛まれた傷が疼く
「今のでチャラだ」
いるまはそう言ってくれたけれど
俺はやっぱり納得できない
やっぱり
俺は俺を許せない
………
許せなくていいと思う
許すべきじゃない
俺は彼を苦しめた
その責任を取らなきゃならない
でも
だからといって
いるまから離れるのは
違うよな
いるまを苦しませないように
悲しい思いをさせないように
この笑顔が
いつまでも絶えないように
俺は守る
今度こそ
守り通してみせる
ゆっくりと瞼を開ける
「笑ってろ」
お望みのままに
俺は目を細め
優しく微笑んだ
〜後日談〜
暇72
首元を手でさすりながら
俺はそう呟いた
指先から伝わってくるのは
皮膚の凸凹とした感触
歯型である
いるま
隣には
そのくっきりとついた歯型を見つめながら 苦笑いをするいるまがいた
暇72
いるま
少し不機嫌になる彼
両頬をぷくーと膨らませている
……かわい
ッと、危ない危ない
俺は思わずニヤけそうになる顔を 必死に抑えた
いるま
いるま
暇72
彼からの苦情を
俺は素直に受け取る
暇72
暇72
いるま
いるま
暇72
いるま
満足そうに頷く彼
いるま
そう言いながら
彼は徐(おもむろ)に
俺の首元の歯型に触れた
彼の指先が傷を撫でる
少しこそばゆい
いるま
暇72
暇72
暇72
あのモニタールームで 悠介さんに付けられた首輪
ガチャガチャと揺すってみるがびくともしない
こんなことで外れるわけがないけれど…
首輪自体は特に問題ない
が
吸収魔法の方は厄介だな…
今のままでは魔力が練れない
つまり
魔法が使えない
運動能力皆無な俺にとっては大ダメージである
俺は思わず溜息をついた
そんな俺の心情を知ってか知らずか
歯型をひとしきり触り終わったいるまは
いたずらっぽい笑みを浮かべてこう言った
いるま
いるま
暇72
端正な顔立ちに加え、落ち着いた低音ボイス
並の人間なら
女であろうと男であろうと 頬を赤らめてドキドキする場面
この雰囲気に任せて
彼の手のひらで転がってやっても別に構わない
構わないが………
責任、ねえ
こちらを煽るような上目遣い
いいよ
そっちがその気なら
暇72
俺は表情を一切変えず
ただ冷静に問い返した
いるま
いるま
暇72
何か言いかけた彼を強引に遮って
彼の胸元に手を伸ばす
暇72
彼の首からさがる細いチェーン
俺はその先についている指輪を手のひらに乗せ
うやうやしくキスを落とした
いるま
俺の行動が予想外だったのか
明らかな動揺を見せるいるま
顔が赤く染まっていく
してやったり、と
俺は口角を上げた
いるま
大焦りで指輪を取り返し
両手で囲って隠した彼は
悔しそうに俺を見上げる
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俺は自慢げにそう答えた
彼が身につけていた指輪
それは
俺たちがこの施設に侵入してすぐの頃に
いふさんがわざわざ届けに来てくれた指輪
そして
千年前
日々前線で暴れ回って生傷の絶えないいるまに 俺がプレゼントした
回復魔法の付与のかかった指輪
魔法の効力なんて
もう1ミリも残ってないだろうに……
さっき手にしたときに見えた
錆や凹み、僅かな汚れ
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嬉しい
心がぽかぽかする
いるま
何を認めたくないのか
あたふたと それっぽい言い訳を必死に探す彼を横目に
俺はぼそっと呟いた
ありがとう
と