朝からずっと胸の奥がざわついている。
この前のことが、何度も頭をよぎる。
元貴が優しくなったこと。
優しくされる度、どうしていいか分からなくなってしまう。
そして、若井の言葉が心のどこかで響いている事。
涼架
モヤモヤしたままパソコンを眺める。
だけど、数字が並ぶ資料も上司から来たメールも何も頭に入ってこない。
涼架
そうは思っても手が止まってしまう。
涼架
ため息をつきながらこめかみを抑える。
その時、
滉斗
隣から若井の心配した声が聞こえてくる。
顔を上げると若井が横に座っていた。
声は心配そうだけどいつも通りの表情に少し安心する。
涼架
滉斗
そう言いながら僕のデスクに若井が紙コップを置いた。
ふわっと温かいカフェラテの香りだ。
滉斗
凄く短い言葉。
でもその言葉がじんわりと心に染みた。
涼架
そっとカフェラテを手に取ると、両手に優しい温かみが伝わってくる。
滉斗
涼架
否定しようと思ったけど言葉が出てこない。
平気なフリを演じてたつもりだったけど、
若井には全てお見通しな気がする。
涼架
若井が小さく頷いた。
滉斗
それ以上は何も聞かれなかった。
ただそっとカフェラテを指さして
滉斗
とだけ言った。
涼架
そう思いながらカフェラテを口に運ぶ。
カフェラテの美味しさにホッとしていると、デスクに置いていたスマホが震えた。
元貴からのLINEだった。
何も考えずに開きそうになった指を止める。
涼架
会ってしまったら、また流されてしまうかもしれない。
最近の元貴の優しさを思い出すと胸の奥がぎゅっとなる。
今元貴に、
元貴
元貴
元貴
そんな言葉を並べられたら、許してしまうかもしれない。
その時ふと隣を見る。
若井はもう自分の仕事に戻っていた。
黙々と仕事を進める横顔は、なぜか見ていると安心する。
涼架
元貴と若井、2人の優しさは僕にはまるで違く感じる。
元貴は、元貴無しでは生きられない様になってしまうような優しさ。
若井は、ふんわり暖かくて心に染み込んでいくような優しさ。
ゆっくりと息を吐いた。
涼架
そう元貴に返信してスマホをデスクに伏せた。
心臓がバクバクなってる。
涼架
罪悪感もあるけど、ほっとして肩の力が抜けた気がした。
涼架
そんなことを思いながら、カフェラテに口をつける。
さっきよりも、少しだけ甘く感じた。
コメント
3件
久しぶりすぎる!私生活が忙しすぎました😭 リクエストいただいた作品も頑張ってるのでもう少々だけお待ちください🙇♀️