TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

relies

一覧ページ

「relies」のメインビジュアル

relies

8 - 第8話

♥

311

2025年03月26日

シェアするシェアする
報告する

朝からずっと胸の奥がざわついている。

この前のことが、何度も頭をよぎる。

元貴が優しくなったこと。

優しくされる度、どうしていいか分からなくなってしまう。

そして、若井の言葉が心のどこかで響いている事。

涼架

(もう、どうしたらいい…?)

モヤモヤしたままパソコンを眺める。

だけど、数字が並ぶ資料も上司から来たメールも何も頭に入ってこない。

涼架

(このままじゃダメだ!仕事に集中しないと…!)

そうは思っても手が止まってしまう。

涼架

はぁ…ただでさえミス多めなのに…

ため息をつきながらこめかみを抑える。

その時、

滉斗

あれ?なんか元気なくない?

隣から若井の心配した声が聞こえてくる。

顔を上げると若井が横に座っていた。

声は心配そうだけどいつも通りの表情に少し安心する。

涼架

…そんなに元気なさそう?

滉斗

うーん、なんかさっきからぼーっとして見えるから何となく

そう言いながら僕のデスクに若井が紙コップを置いた。

ふわっと温かいカフェラテの香りだ。

滉斗

限界になる前にちゃんと教えてよ

凄く短い言葉。

でもその言葉がじんわりと心に染みた。

涼架

…ありがとう、若井

そっとカフェラテを手に取ると、両手に優しい温かみが伝わってくる。

滉斗

最近、涼ちゃんおつかれだよね

涼架

そんなこと…

否定しようと思ったけど言葉が出てこない。

平気なフリを演じてたつもりだったけど、

若井には全てお見通しな気がする。

涼架

…なんか、最近考える事が多くてね

若井が小さく頷いた。

滉斗

そっか…

それ以上は何も聞かれなかった。

ただそっとカフェラテを指さして

滉斗

それ飲んで一息ついて!

とだけ言った。

涼架

(優しいな、若井は…)

そう思いながらカフェラテを口に運ぶ。

カフェラテの美味しさにホッとしていると、デスクに置いていたスマホが震えた。

元貴からのLINEだった。

何も考えずに開きそうになった指を止める。

涼架

(どうしよう、)

会ってしまったら、また流されてしまうかもしれない。

最近の元貴の優しさを思い出すと胸の奥がぎゅっとなる。

今元貴に、

元貴

ごめんね、俺が悪かった。

元貴

もうしないから

元貴

本当にごめん…

そんな言葉を並べられたら、許してしまうかもしれない。

その時ふと隣を見る。

若井はもう自分の仕事に戻っていた。

黙々と仕事を進める横顔は、なぜか見ていると安心する。

涼架

(…若井だったら、こんな時ぼくになんて言ってくれるんだろう)

元貴と若井、2人の優しさは僕にはまるで違く感じる。

元貴は、元貴無しでは生きられない様になってしまうような優しさ。

若井は、ふんわり暖かくて心に染み込んでいくような優しさ。

ゆっくりと息を吐いた。

涼架

ごめん、今日は会えないかな

そう元貴に返信してスマホをデスクに伏せた。

心臓がバクバクなってる。

涼架

(たった一つ断るだけでこんなに緊張するなんて…)

罪悪感もあるけど、ほっとして肩の力が抜けた気がした。

涼架

(このまま変われるかな…)

そんなことを思いながら、カフェラテに口をつける。

さっきよりも、少しだけ甘く感じた。

この作品はいかがでしたか?

311

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚